悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?

ぽんぽこ狸

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お祭りなのに悪い予感……。4

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 ひたすらに考え続けて、結局、落ち着くまでぼんやりと何もせずに椅子の上で今日あった事を反芻していれば、そんな事だけでどうやら深夜の時間帯はすぎてしまったらしく、窓の外が薄っすらと黒から青へと変化していった。
 
 きっと今、窓を開けたら、心地がいいだろうけれど、寒そうだな。

 当たり前の事を考えて、そろそろカフェインが切れてきた。まさか来ると言っておいて、こんな時間までこないだなんて思わずに眠らないでローレンスを待つと決めた自分を恨んでやりたい。

 それにしても眠たい。今日はハードスケジュールすぎたのだ。

 まだ、来ないかもしれないし、なんなら、一眠りしてしまおうかななんて考えるが、もう数時間で朝食の時間だし、眠っている時にローレンスが来てしまったらせっかくここまで起きていた苦労が台無しになってしまう。

 それでは困るし……でも、眠……眠い。

 椅子の上に両足を乗せて膝を抱くようにして頭を預け、ゆっくりと目を瞑る。

 ……少しだけ……仮眠……だし。

 ……。

 …………。


 ふと、人の気配を感じて、バッと顔を上げた。そこには無表情でこちらを見下ろすローレンスが、まだ薄暗い部屋でぽつんと立っていた。

 自身はうたた寝をしていたつもりだったし、体感では三分だったのだが、少し時間が経ってしまったらしい。

 きっとローレンスの足音で目が覚めるはずだと目を瞑ったのに、私にはそんな器用な事は出来なかったみたいだ。 

「……いらっしゃい、ローレンス」

 来ても喜ばないだろ、と言われていたので、そんな事は無いと言うことを示すつもりで、せっかく起きていたというのに情けない。

 足を下ろして、立ち上がって伸びをした。

「今日はまだ眠れてない?」
「……少し、仕事が立て込んでいてね」
「ん、わかった」

 その言葉が本当か嘘かは分からない。暇でも眠れない時があると彼は言っていたのだから、多分忙しくて眠れないのとは違うだろう。

 そういう時こそ、私のキャンドルを使って欲しいのだけど、まだ感想を聞けていないな。

「キャンドルは使ってみた?」
「さぁ、覚えがない」
「そう」

 どうやら何も言いたくないらしい。しかし、こうして夜に来るローレンスは昼間に会うより、いくぶん話が通じる感じがするというか、単純に強がってないというか、昼よりも壁?みたいなものが薄い気がする。

 考えながら、彼のために買ってある、レモンジンジャーのティーバックをポットに沈めた。

 その強がれないことがいい事かどうかと言われるとそれもまた、分からない。

 夜の方が落ち着いて素直になれるというのなら、それはいいけれど、夜になると眠れないほど何かが不安だとか心労がかかってストレスで、素が出てしまうのであれば良くないことだと思う。

「ジンジャーティーに蜂蜜入れとくね」
「……」

 たっぷり蜂蜜を入れて、カラカラとかき混ぜる。

 彼の前へと出して、私も自分の分をテーブルに置き、それから、まだまだ余っている蜜蝋を使い切るために自分用にだとかいろいろと理由をつけて作ってある、キャンドルを灯す。

 魔法の炎で火を出して、後は自然現象に任せる。

 そうすると、ゆらっと揺れて、ふわふわと光が強くなり芯を焦がしていった。

 灯りに照らされたローレンスは、いつも通り何ら変わらない表情で、私は変わらないという事に少しだけ安堵した。

「美味しい?」
「飲めない味では無いね」
「ふぅん」

 私は彼に告白をした、そして色々と思っている事を伝えた。結局、首を絞められるし、投げ捨てられるし、そのまま帰ってきてしまって、ローレンスが何を考えているかというのは分からなかった。

 あった事が事なので、こうして次に会う時に、また怒りをぶつけられたり、乱暴をされるのではないかと考えていたのだが杞憂だったように思う。

「……」
「……」

 私も蜂蜜たっぷりのジンジャーティーを飲むとまた段々と眠気がやって来る。体がポカポカと暖かくて、キャンドルの炎を見ながら微睡んだ。

 いい心地だ。私は眠りは深いし寝付きもいいので、こうやって眠りを誘うためにゆっくりと夜を過ごすことはない。でも、こんなに心地の良い時間が流れるのであれば、少し時間を取ってリラックスして見てもいいのかなと思う。

「……ねぇ、ローレンス」
「……」
「お喋りしても……怒らない?」

 前回、彼に怒られた事を言ってみる。怒られたと言っても、私は変える気がなく、その理由まで言って告白までしたのだがローレンスは何か癇癪を起こして色々あったので喧嘩?してしまった原因というように捉えている。

 こうして聞けば、彼も前回会った時の事を思い出して言ってくれるかな、と思ったのだが、無言でジンジャーティーを嚥下して、それからティーカップを置く。

 彼は私の方を見ないで、ただ少しぼんやりして「君次第だよ」と独り言みたいに言う。

「そっか……」

 今までとあまり変わらない答え、それから何も言わない彼に、無かった事になったのだと納得する。いろいろと混乱している様子だったし、忘れる事にしたのかもしれない。

 それならわざわざ掘り返しても意味は無い。またローレンスが怒ったら、好きだからと理由を伝えればいいのだ。

「今日はなんでまた、予告してくれたの?」
「……模擬戦の日だっただろう、だからだよ」
「だからって?」

 なにか関係があったのだろうかと疑問に思いそのまま口に出す。ローレンスは、私を見ないまま、言う。

「普段の授業より疲れるだろう?……だから、君が眠らないように」
「ああ、ぐっすり寝てたら起こすのが大変って事?」
「違うね。疲れても眠れない状況にストレスをためていればいいと思って」

 言われて瞳を瞬く、私はそれほど繊細には出来ていないし、そこまで深読みすることだって出来ない。ただただ事実は、今日予告してローレンスが来たということだけだ。

 そんな事まで考えていたのかと、なんとなくおかしくなってふふっと声に出して笑った。

「なんでよ、いつでも来ていいって言ったのは私だよ。だから、ローレンスは本当にいつ来ても、それを予めの予告しても、ストレスなんか溜まらないよ」

 妙な嫌がらせだなぁ、と思って、入寮式の日にも間違った日付を教えられた事を思い出す。あれは当時すごくびっくりしたのだが、今ではいい思い出だ。

 ベラに怒鳴られたっけ、まだヴィンスとも今みたいに仲良しではなかったしいろいろと不安もあった。

 くすくすと笑っていると、彼は流し目でこちらを見て、テーブルに頬杖を着いた。

「そういう問題じゃない……案の定椅子の上で眠っている君を見て、私は何かいつも君に思っている不満がいくらか霧散した」
「不満があるなら言ってくれれば直すのに」
「……言って改善された結果では意味が無いんだよ、察しが悪いね」

 そうかな、人なんて所詮は他人なのだ、言って分かり合えるのならそれでいいと思う。それにローレンスはやっぱり少し難しい人だなと思うし、ストレス発散の方法が陰湿すぎだなとも思う。




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