悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?

ぽんぽこ狸

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前途多難……。6

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 三十分としないうちに、三つ編みとくるりんぱを駆使した、スッキリハーフアップが完成し、途中からチェルシーは私の説明を必死にメモを取っていた。
 お化粧も出来るだけ、この世界の常識から外れない範疇でシャドウやチークを入れる位置を説明すると、あっという間に垢抜け女子の完成である。

「……こんなに、こんなに簡単にこの頑固な髪が変わるなんて……それにすごく……可愛い」

 変わった自分にうっとりしながら、彼女は微笑んだ。

 ……うん、そうだね。私もそう思うし、自分もなかなかの腕前だと思う。

 チェルシーは少し暗めの髪色だったので、前髪横髪があってなおかつ後ろにボリューミーな一つ縛りだと重たい印象になりがちだ。

 けど今回のように何度もクシを通して丁寧に結ってやればこんなに綺麗にまとまる。

 目元もクラリスが使っていたギラギラしたアイシャドウを瞼に少しだけ乗せて他は肌の色に馴染むようなオレンジで影をつける。

 それだけで夢見る乙女の様な愛らしい印象だ。
 
 ……あとは。

 ひとつの引き出しから、細めの彼女の瞳の色にぴったりなチェックの柄が着いた細いリボンをハーフアップの縛り目の部分へと蝶々結びに結ぶ。

「これは、プレゼント。あげるよ。チェルシーの目の色にそっくりだから」
「…………ありがたく、貰っておきます!……クレア」

 彼女は鏡でそのリボンを確認して、嬉しくてたまらない様に眉を下げるような笑い方をする。
 そして私の方へと振り返った。

 「…………クレア。私、決心をつけようと思います。私は誰に笑われようとも、このチームを勝利へと導きたい。貴方もヴィンスもシンシア、サディアスも全員。……きっと団体戦でいい成績を残して全員で進級しまましょうっ」
「うん。私も頑張る、皆で魔法使いになるために。……でもきっともう、誰もチェルシーのこと笑ったりしないよ、すごくかわいいから、それでもチェルシーを馬鹿にする子がいたら私が、やっつけるよ!」
「ふふっ、ええ!ありがとうございますっ」

 チェルシーは私の手を取って、強く握る。私もその手を握り返して、約束のような握手をした。彼女の瞳にはもう陰りはない、きっと役職を決める決意も出来たのだろう。

 私たちは笑いあって今日だけは、とお互いに、ヘアアレンジをしたりメイクや装飾品の話に花を咲かせた。


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