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前途多難……。5
しおりを挟む私の部屋には、割と多くの装飾品や化粧品がある。すべて、クラリスの収集した物だが、今では私のものだ。
そして、こう見えても私は都内で働いてOLをやっていたし、なんせ甥っ子だけではなく姪っ子がいた。髪を結ってやったり、遊びでお化粧をしてあげたことだってある。
垢抜けるという事に関しては、前世の自分の顔を使って何度も練習したのだ。正直自信がある。
「入って!チェルシー、私のドレッサーを使おう」
「午後の授業はどうしましょうっ?!私サボりなんて初めてでっ」
「いーのいーの、確か、座学とポジション別クラスでしょ?問題ないって」
「シンシア達はっ、放っておいていいんでしょうか?!」
「サディアスがなんとかしてるでしょ」
勢いで適当に返事をしつつ、チェルシーを私の普段使っているドレッサーまで引っ張ってきて座らせる。でも、確かにサディアスがイライラしながらもシンシアとヴィンスに指示を出していそうだなと思う。
「あっ、クレア、本当に……こんな事で自信が持てるんでしょうかっ?」
鏡の前に座ると、チェルシーは小さく肩を竦めて視線を落とした。
私はこういう時は、事実よりも、信じる気持ちが何より大事だと思う。
「うん、付くよ。自分が変われば、考えも変わっていくものだと私は思うもの、よし!じゃあやりますわよっ」
私も気合いを入れるためにお嬢様言葉になり、それを聞いたチェルシーは目をぱちぱちと瞬かせ笑顔を作る。
「っうふふ……クレアのたまに出るお嬢様言葉って、昔の影響ですか?なんだか……可愛らしくて」
「そうだね、気合いを入れる時なんかついね。とりあえずこれ解いてもいい?」
「ええ、構いません!よろしくお願いしますっ」
彼女のひとつに縛っている髪を解くと、ふわっと腰下まである長い髪が広がる。
「ずっと伸ばしっぱなしなんです。切った事がなくて、でも、切ったらアフロになってしまうかもしれないと思っているんですっ!」
「なるほど……ちょっと触るね~」
手櫛でさわり心地を確認すると、縮れていると言うより、パーマのコシが強すぎるといった感じだ。
それに、たしかにこれは切ってしまえば、まとまりが無くなって大変だろうなと思う。
これは、お団子にしちゃうと大変だね。ハーフアップの方がいいかな。
ドレッサーの引き出しから、髪用の霧吹きとクシ、それからピンをいくつか出した。
「ヘアアレンジ、自分でした事は?」
「ありませんっそんなオシャレなもの、田舎では流行っていなかったのですもの!」
「そっかー、じゃあ気に入ったらチェルシーが自分で出来るように簡単なのにするね」
インターネットなんかが無いと確かにこういった情報は簡単に手に入りづらいだろう。この世界だと本がメインの情報源だが都市に行かないと本屋なんかも無いし。
頭の中でどんなのがいいかなと考える。出来るだけスッキリと纏まって彼女自身が野暮ったいと思わないようなものがいいだろう。
「三つ編みは出来る?」
「あっ、それなら、近所の子と遊びでやった事がありますっ」
「あとはくるりんぱが出来ればそれなりになるはず」
「くるりんぱ?なんだか陽気な名前ですっ!」
「ね、私もそう思う」
丁寧にチェルシーの髪をといていく、髪用の霧吹きで少し濡らしながらまずは綺麗に整える。
「横髪、無い方が戦闘の時も楽じゃない?前髪はそのままでもいいけど」
「……そうなんですけどっ、あった方が、少しは……女性らしくなるだろうと……思いましてっ」
「うーん、そうだね。私はチェルシーは顔の形が整っているから無くてもいいと思う。今回は後ろに回しちゃうね」
「わかりましたっ、それで大丈夫です!」
チェルシーの髪をピンで分けて三つ編みを始める。少し緊張しているチェルシーは私の手元をじっと見つめていた。
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