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なんでこう毎日、忙しいかな……。7
しおりを挟む昼食にはすこし早かったが、あの教室には戻る気がしなかったので三人を連れて食堂へと向かった。一応、教員たちなんかも使う場所なので昼休み以外の時間でも開店しており、いつも昼食時には空席を探すのが大変だが、今は閑散としている。
適当に飲み物を注文して、ここは私がと奢る言うと、二人は快く受け入れてくれる。借りたら返したい性分なので、ありがたい。
窓辺の席に座ってドリンクで喉を潤す。校舎から庭園の噴水までは割と距離がある、歩いただけでも喉が渇くのだ。
「……そういえば、ディックの私のポーチを見つけてくれた魔法ってあれはどういう物なの?」
私はポーチを取り出して二人に見せる。コーヒーを飲みながらオスカーが片眉をあげてディックへと目線を移す。
ディックの方はミルクをコクリと飲んで、それからまた体を左右に揺らす。
「固有魔法だよ、名前をつけるならサーチとかでいいんじゃないかなぁー」
「どんな魔法?」
「んー、目を瞑ると意識したものを見つけたり、人なら相手の能力がちょっとわかったりだよ」
そういうと彼は目を瞑って、魔法玉を取り出す。どうやら実演してくれるらしい。
「ヴィンスは、オールラウンダーなんでも出来る、回復が得意、バランスがいい。オスカーは典型的なアタッカー型だけど、持続力と身体強化が売りだね」
簡単にそう診断して、目を開く。どういうメカニズムでそれが分かるのか、というか、私が理解してる以上に固有魔法の幅が広い気がする。
「凄いね……固有魔法って自由度が高いんだね」
「そうだな、まぁ、ディックみたいなのは稀だけどな。ディック、お前のそれは、身体強化のうちの感覚を強化した上での、直感的なもんなんだっけ?」
「そうそう、オスカーは魔法は頑固だけど、飲み込みが早くて助かるな」
……魔法が頑固って面白い表現だな。
しかし、一応、身体の強化延長線上にヴィンスみたいな回復力のアップ、ディックのサーチ能力があるのか、そうなると超聴覚だとか、動体視力をあげるなんて事も出来そうだと思う。
……実際に出来たら楽しいんだろうなぁ。私にはまだまだ夢のような話だけど。
「魔法は、もう少し柔軟に、自分がどんな人間なのか、何が自分に必要なのかを考えるんだよ。それでやってみる、できるようになりたいと思ってみる。それがオリジナルの固有魔法の第一歩だね」
ディックは、相変わらずゆらゆらしながらなんて事ないようにそう言ったが、意外とこれが確信なのかもしれない。
「……しかしな、そもそも、俺らまだ固有魔法自体、授業でも習ってねぇのに使いこなせてる奴が多すぎじゃね?」
「そりゃ、ローレンス王太子殿下がいる学年だもん、今年は何かとイレギュラーが多いんだよ」
……イレギュラーとは、誰のことを指しているんだろうか。ララか……もしくは……私じゃないよね?
そう思ってディックを見ると、彼は少し意味ありげに私方を見てそれからピッと指さす。
「イレギュラーと言えば、君の魔法玉だね。エリアルが呼んでいたのも多分それの件だよ。ねぇ、それを僕に見せてくれる気は無い?少しは有力な情報を見つけてみせるよ?」
彼は今まで、一度も笑わなかったのに、急に口角をきゅっとあげて笑う。私は今までの事もあり、割と他人にこれを渡すことに抵抗があったが、見てくれるならお願いしたいと思って、「いいよ」と返して、首から外した。しかしオスカーが私の手をパッと止める。
「お前アレやる気だろ、さすがにやめろ。嫌われるぞ」
「えー、だって一番相手の事分かるじゃん?多少、気持ち悪くても構わないでしょう?クレア」
その言葉にサッと自分の魔法玉を引っ込めた。
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