捨てられた令嬢、幼なじみに引き取られる。

ぽんぽこ狸

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 柔らかいベットに沈み込み、そこから窓が見えて、差し込む午後の日差しが目に染みて涙が出てきた。なんて日だろうと思う。よく知りもしない男に無理矢理犯されてしまうなんて最悪だ。

 これでは愛されるのなんて夢のまた夢。もうシェリルの安寧はありえない。

 すでに裸体を見られ、見知らぬ男に汚されたこの体を守る気にもならなくてぼんやりと柔らかなベッドに体を任せて、溢れる涙をそのままにした。

 しばらくするとジェラルドが上裸の状態で視界の端に現れて、シェリルを仰向けにした。

 無気力に横になるシェリルを見て、気遣うように枕を彼女の頭の下に引いてやって掛け布団をベットの端にのけた。丁寧に周りを整えられて、それから、ゆっくりと頬を撫でられた。

 頬に触れる手の平は、剣を握る職業の人間らしく豆があって硬い。

 レアンドルとはまったく違うその手がシェリルに触れるのはありえてはいけない事で拒絶しなければと思うのに、その手付きが優しすぎて堪らなくなってくる。

「息、吐いとけ。すぐ終わるからなシェリル」

 言葉の端々からシェリルに対する思いやりと愛情が感じられる。シェリルを見つめる瞳は熱く熱を持っていて、その彼の感情をシェリルはどうしても受け止められずに目を逸らす。

 しかし、足を持ち上げられて体を二つ折りにされ、熱いものをあてがわれると血の気が引く。

 初めての行為に対する恐怖心とそれから、これをしてしまったら本当にシェリルは死ぬしかなくなってしまうと急に不安が襲ってきた。

「っ、やめて!!」
「……」
「いやよぅ、死にたくないのっ、死にたくないのっ、怖いのよ!!!ぁあああっ!!いや、いや!!いれないでっ」

 体を逸らせて両腕を振り上げて目の前にいるジェラルドの胸板を叩いた。ドンッ、と音がするのにまったく揺るがない。どいてくれる気配もない。

「お願いよ!!嫌なのぉ!!い゛やぁ!!!あああっ、ヒグッ、うう゛う!!」

 大きな声をあげる。しかしもう、これ以上抵抗する体力が残っていない。必死に訴えても泣き声が混じって、酷い罵り文句も出てこない。ただ怖くて死にたくなくて目の前の男が恨めしかった。

 ただ何も言わずにあの場所に返してくれるだけでいいのに、シェリルはそれで満足するのに、彼は自分のものにしたのだという。

 ぐじゅ、となかに熱い性器が埋められる。体が硬直して「いやぁ……やめてぇ」とか細い声が漏れた。初めては痛くてしょうがないと聞いていたのに時間をかけて解されたそこは、難なくジェラルドのものを受け入れていく。

「ひっ、いい、ああああっ、いやぁあ」

 ゆっくりと挿入されて奥まできちんと収まる。これでは、レアンドルに愛されることができない、こんな汚された体ではどこへも行けない。

 もうシェリルはどうすることもできないのだと分かって、悲鳴をあげながらボロボロと涙をこぼす。

 自分を貫くそれが嫌でたまらなくて喉を引きつらせた。ただでさえ、もう感情のキャパシティはいっぱいだったのになかを探るようにそれがゆっくりと動く。

「っ、っ~、はぁっ、あああっ、うううっ」
「ごめんな」

 ぱちゅぱちゅと音を立てて抽挿が繰り返される。痛みは無くなかを指で弄られていた時のようにやわっこい快感がうまれて脊髄がしびれた。

 頭を振ってそんな考えを振り払おうとするのに、ジェラルドは抜き差ししながらシェリルの頬に手を添えて口をふさぐようにキスをする。

 唇を割って舌が口の中に入って来てシェリルは咄嗟に彼の舌を噛んだ。

 ぐっと力強く、不満をぶつけるようにぐっと噛んで、ゆっくりとひろがる血の味とそれでも驚いたりせずに、一頻り唇を重ねてそれから離れていった彼を見て罪悪感が降ってわいた。

 しかしそれでも腰を打ち付けられて体が跳ねると、すぐにそんな事を忘れて頭の中に浮かぶ言葉を適当に口にする。

「ああっ、レアンドル、でんかぁ、っ、もうしわけ、ありあせんっ、ひぅ。うううっ、ごめんなさいっ、死にたくないっ、ああう」

 その言葉を聞いて、少しだけ、動きが止まりジェラルドはシェリルを見下ろした。ひどい快楽の中で赤い瞳と目が合って、シェリルは少し苦しげなその表情を見て言い表しようの無い感覚に襲われる。

 なんだか自分がすごく悪い事をしてしまったような気になって、そんなはずはないと思う。

 だってこの男は見知らぬシェリルを捕まえて犯している男なのだ。シェリルは殺されないためにレアンドルの機嫌をとりに帰らなければならないのに、それをさせてくれない、ジェラルドという名の幼なじみ。

 幼馴染だった記憶なんてほとんどない。もううまく思いだせない。

 なんだかとても大切なことのはずなのに、上手く記憶がつながらない。

 快感が襲ってきて、なかを熱いそれで擦られる感覚に馬鹿になりそうだった。奥を突かれるとじんじんとした快楽が体の奥底からあふれてくるようで、お腹側を突かれると足が震えるような刺激につま先までびりびりとする。

 くちゅくちゅと卑猥な水音と吐息だけがしていて、ふと、ジェラルドがシェリルに覆いかぶさるように迫ってきて、またキスをされると思ったシェリルはふと顔を逸らした。

 しかしそうではなかった様子でなかに挿れられたままぎゅっと抱きしめられた。

 少しの汗の匂いと、彼の使っている香水の甘い香りが混じって、くらっとするぐらい官能的な香りだった。

「シェリィ、あとすこし、我慢な」
「っ、はっ、ああっ」

 とぎれとぎれの声がして、ピストンが早くなる。そのせいで喘ぐしかシェリルはできなかったが、短く呼ばれた自分の名前で思いだした。シェリルは幼いころよくそう呼ばれていた。おもにジェラルドから。

 彼は……。

 ……ジェラルドは……。

 見知らぬ男なんかじゃない、ジェラルドはシェリルの大切な幼なじみだった。

 それを思い出して、こうして男女の行為をしていることに違和感があったけれども、気持ちがいい。

 丁寧にやさしくされたせいで気持ちが良くて堪らない。

 自分の中で熱いものが抽挿されて、擦れる感覚に体が熱くなる。足を持ち上げられて体勢がきついのに、そんなことも気にせずに快楽を享受した。ジェラルドはシェリルをきつく抱きしめたまま頭を撫でて顔を離して甘ったるい笑みを浮かべた。

 ……。

 少し上気した頬に荒い吐息、優しげではない顔つきだけど、思いだしてみれば彼のことを怖いなんて思わなかった。だってこの男はあのジェラルドなのだ。

 昔、婚約者がいるのに仲が良すぎるからという理由で引き離された大切な幼なじみ、こんなに大きくなって……と今性行為をしている相手に思うべきでない不思議な感想が思い浮かんだ。

「……っ、はうっ、ああっ、ん」
「シェリィ、もうっ終わるからな」

 そう言葉を残してジェラルドはまたシェリルを覆い隠すみたいにして抱きしめてなかを強く突き上げる。

「ああっ、あうっ、ふ」

 強い刺激に声を漏らして身をよじるシェリルを逃がさないように、ジェラルドはぐっと抱きしめて一番奥にぐっと押し付ける。

 なかで精を放たれれば彼の子供を宿すことになる。シェリルは反射的に、またレアンドルの事が頭に浮かんだ。しかし、どくどくと熱いものが注がれるのを感じながら、それならその方がいいのかもしれないと、ぽつりと思った。

 あんな場所に戻りたいわけではない。ただ死にたくないというだけで、王宮はいて楽しい場所ではなかった。

「っ、……シェリィ、もう少し、このまま」

 繋がったままジェラルドは脱力したようにシェリルにもたれかかった。態勢がつらくてお腹のなかもなんだか痙攣してしまって、じわじわと快感を生み出し続けている。

 正直なところすぐにでも抜いてもらって落ち着きたかったが、熱い体がシェリルの肌に重なって人肌の感覚に安心する。

 ジェラルドは、シェリルの肩筋に顔を埋めて息を整えていて、項にかかると息がこそばゆいけれど、嬉しい。頬に触れる柔らかい茶髪は幼い頃と変わっていない気がして、シェリルは少しだけその彼に頬ずりして意識を手放した。



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