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しおりを挟むファニーは、暇していた。
そりゃあもう、暇を持て余してた。なんせつまらない、陽気に異世界転生したらしい彼女だったが、ここにきて人生に行き詰まりを感じていた。
転生して早十五年。それなりに楽しく毎日を暮らしてきていたけれど、どうにも最近楽しくない。特に婚約が決まってからのここ半年ほどはつまらない日々なのだ。
何度も何度も開かれる婚約パーティー、お祝いの言葉も一辺倒で、お祝いの品もいつも代わり映えがしないものばかり……あ、いや、けっしてプレゼントに文句をつけているわけではない、ただ何というか楽しくない。
そう楽しくないのだ。なんだかわからないけど退屈なのである。婚約が決まるまでの間には、ファニーと婚約したい男が、ことごとくファニーに媚びを売ってきたり強引に迫ってきたりとスリル満点な日々を過ごしていたのだがファニーの行き先が決まったとたんに、みんな手のひらを返して、穏やかな顔で祝福する。
それは危険がないという安心感と引き換えに、若干のつまらなさをファニーにもたらした。
もともとファニーは前世でも、びっくり人間というあだ名がピッタリなほどに、刺激とドッキリが大好きな女だったのだ。あちらに誕生日の子がいれば、クラッカーとプレゼントをもって駆け付け、サプライズパーティーを開き、こちらに退屈している友人がいればドッキリを仕掛けて楽しませた。
そんな女であるのだ。だからこの世界に来てからも、昔馴染みに、透視マジックを見せたりするし、心霊ドッキリで妹たちを驚かせたりもしていたのだ。
もちろんそれは、言い寄ってくる男たちにも同様だった。ある男には、かぐや姫のように、無理難題を押し付けて困らせてみたり、ある者には心が読めるとはったりをかましてみたりしていた。
先日だって昔馴染みのオズワルドと婚約者のカーティスと親友のベアトリクスにカード当ての手品を披露して、ベアトリクスから顰蹙を買ったところだ。
それだけ、ファニーはドッキリとサプライズが大好きな転生令嬢だ。貴重な前世の知識だって全部、手品やドッキリの事ばかりであり、役に立つことなんて滅多にない。
だからここ最近の退屈具合に早々にしびれを切らして、ドレッサーの下から三番目の引き出しの底板に隠してあるどっきりノートを開いたのだった。
今は幸い深夜の時間帯なので、お付きのメイドのシャーリーもいないし、これなら誰にもバレずに計画を立てられるだろう。
「よ~し。どんなドッキリにしようかな? 皆がとびっきり驚いて泣き出すぐらいがいいね!」
そんなことを口に出しながら、ファニーは頭の中にある案を次々とノートに書きだす。茶髪の髪を耳にかけて、そのべっこう色の瞳をキラリと光らせながら、バリバリとノートにペンを走らせる。
やや暴走気味のファニーは、とんでもない計画を思い付き、その発表の場を今度の身内だけで開催されるささやかな婚約パーティーに決めるのだった。
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