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マーケット その2
しおりを挟む出された温かいミルクに口をつける。
そういえばタリスビアに来てから、よくミルクを飲んでいる気がするが、好きなので困ってはいない。将来、身長の高い女性になれそうである。
「二人は何も注文しないの?」
「ええ、勤務中ですから」
歩き疲れて喫茶店に入ったけれど、疲れていたのは私だけのようで、二人は同じテーブルに掛けてはいるものの、休息は取らないようだった。
お腹も空いたし、何か食べたいけれど、一人で食べるのもなぁ。
「あのねマティ、三つ食べたいものがあるんだけど、全部頼んでいい?」
「構いませんが……」
「食べきれなかったら手伝ってくれる?」
「……」
「ダメ?」
「今回だけですよ」
やった!
店員さんにこれとこれとと注文する。何が食べたいのかは、わからなかったので適当に、サンドイッチと、グラタンとパンケーキを注文してみた。
しかし、こんなオシャレなお店には初めて来た。
少し上流階級向けの落ち着いた喫茶だ。中央広場から、お城に向かう道沿いにある。
お城ほどでは無いけれど、高級感のある店内に、愛想のいい店員さん、それからマーケットの喧騒が少し遠くに聞こえる。
「まさか、木天寥がマタタビなんて知らなかったよ」
「マナンルークでは、そのように呼ばれているのですね」
「うん、そうなのでも、この国が木天寥にあれだけ敏感な理由もわかるね」
「そうだにゃ、僕には効かにゃいけど、ネコ科は凄いことににゃるから」
先程、入ったお店で、木天寥ならぬマタタビが売っていた。香りが漏れないようにか、木片が二重に小瓶に密閉され、商品棚に並んでいた。
パーティで、問題になった木天寥の香水だが、マナンルークでのマタタビと言われるものと同じ効果があるらしい。元々、マナンルークではマタタビは猫が好きだと知られていて、木天寥は香水の原料の一種と、別々の物だと思って居たのだが、マタタビが木天寥ならば、これだけ厳重に管理されているのにもうなずける。
それから、アルコールも、同じように、生産販売に厳しい規制がつけられているようだった。
「マティは、使った事あるの?」
「……一度だけ」
「その時に噛みつかれて僕が骨折した」
「わぁ~」
なるほど、理性が飛んじゃってことね。
そんなマティも見てみたいような気がするけれど、噛みつかれる覚悟が必要だろうな。
「そ、その話はいいのです!それよりも姫様、この後はどうされますか、まだ病み上がりなのですから、今日はこの辺りで、戻られますか?」
「ん、ううん。もう少し見て歩きたい。すごく楽しいし」
「でも。姫さん」
「大丈夫、今日も薬しっかり飲んだもの……あ、そうだ、あのお薬は、どこに売ってるやつなの?」
毎食後に飲んでいる薬の事だ。
初めは、風邪薬だと思ったが、あれを飲み始めて以来、ここに来てからずっと感じていた暑さはなくなり、調子もいいような気がする。
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