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しおりを挟む「っぁ、っ、いっ」
痛みに血の気が引いて、足を引いて体を縮こまらせようとするけれども、がっしりと掴まれていて体の自由が利かない。
……い、たい。
いつかはこうして誰かに犯される日が来るのだということは知っていた。覚悟だってしていた、しかし、実際にまったく配慮されずにこんなことをされると辛いと思うのは当然だと思う。
「手足も細くて、色も白い。髪も邪魔じゃないんですか? 男のくせにこんなに長くして」
「っあ、ゔ、っ~」
何度も抜き差しされて、体をこわばらせても容赦なく指をいれられ奥をトントンと突かれる。初めての感覚にグレースは金の瞳に涙をにじませて落ちつこうとゆっくりと呼吸をした。
「は、ぁ、はぁ……っ゛、ああっ」
「高い声も無理して出して、そうまでして女になりたいんですか。俺は不思議で仕方ないですよ」
しかし、堪えられる程度の痛みになった時に、指を増やしていれられて、声を漏らして体を震わせる。まるで痛みに苦しむグレースを楽しんでいるかのような行動だった。
それに何か言ってる。その言葉を聞いて答えを返したいのに上手く理解できなくて、シーツをぎゅっと握って痛みをこらえる。腹の中をいじられる感覚は自分が知っているどの感覚とも違って堪えるのも苦労する。
「あぐっ、っ、ううっ」
それでもグレースの声は女性がうめいているのだと聞き違えるほどであり、意識して喉の調子を変えると地声になるのだが、こちらの声音からふいに戻ったりもしない。
しかし、まだ演技している余裕があるのだとシルヴァンは理解して、指を強引に奥まで差し込んだ後に、グレースの白い髪を手で払って避けて、小さな胸をひとなめしてから口に含む。
「なっ、ぅ、あぐっ、っ~! いった、っ」
ぐっと胸にかみつかれ、すぐに引き離そうとシルヴァンの髪に触れた。彼の髪は柔らかくて、この事務的な男の頭らしからぬ触り心地だったがそんなことは今は置いておいて、離してほしくて力を込めた。
しかし、その抵抗も虚しく、噛まれた場所を舌で押しつぶすように舐められて、体が震える。
「っ、ひ、ぅう」
生理的な涙が流れて、ついでに悲しくなってグレースはすすり泣くような些細な声を漏らした。泣き虫ではないが、意地っ張りでもないので感情が降り切れて当たり前のように泣いた。
……痛いし、きついし、これ続くのか。
そう思い頬から流れ落ちる涙をそのままにしてなかで指を動かされるのを感じる。
そのうち気持ちよくなるだろうと思って出来るだけ堪えるけれども、どんどんと動かし方がきつくなっていってすぐに指を増やされた。
「あっ、はぁっ、っ」
瞳をつむってまた噛まれても突然の事に驚いたりしないように、心積もりをしているとふと頬に何かが触れる。
それはグレースの目元に触れて涙を掬い取った。不思議に思って目を開けると、これまた楽しそうではない笑顔を浮かべたままシルヴァンがグレースを見下ろしている。
「……泣くのですら演技ですか。それほど女みたいに振る舞うなんて、よっぽど俺が嫌いなんですね」
「……」
「いいです。それなら、愛のない番でも俺はかまわないですから」
「っ」
そう言い切って一人で勝手に納得して彼はグレースを睨むように見た。それに流石にグレースはすぐに反応した。指を抜かれて体が反射で震えるのを何とか堪えつつ、手を伸ばして彼の胸元に手を置いた。
それから癖になっている上目づかいで彼を見上げる。
「まって……シルヴァン」
そうして初めて彼の名前を読んだ。女の子の時にはいつもはきちんと敬称をつけて呼ぶ癖があるのだが咄嗟の事でグレースは彼をそのまま読んでしまった。
それを、少し気にしながらもこちらに意識を向けたシルヴァンに必死になって聞く。
「お、女の声が嫌なの? ……ん、っ、あ、はぁ」
女らしく振舞うなら自分が嫌いなのだなといった彼にそう問いかける。それからすぐに喉の調子を変えて、地声にしてから、少し息を整えた。
「これで、いい? それと、いきなり会った相手に嫌いとかそういうの無いから。そんな俺、繊細じゃないし」
「…………」
声音とともに一人称も自然と変えて彼に問いかける。するとシルヴァンは目を見開いてから、ずっと浮かべていた笑みを消して眉間にしわを寄せる。
「そうですか? そんな風には思えませんでした、わざわざ女を嫌っているとまで言ったのに、女性を演じるのを君は変えませんでしたし、頑なに思えましたから」
真意を推し量るような瞳に、グレースは少し考えて、そんなこと言っていたっけと考えを巡らせる。
……確かに、言っていたような、いないような。
長い説明の時に薄っすら補足として言われたような気がするが、あまり記憶もない。面倒だと思って聞き流してしまったし、自分には関係がない事だとすぐに判断していたような気がする。
それに、彼の言葉と自分の状況には明確に差異があるような気がする。
「……き、聞いてなかった」
「そんな言い訳、今更頷くと思いますか」
疑り深く言われてグレースはさらにいう。
「それに、俺、女を演じてるとかそういうんじゃない、から、だから単純に変えようって思ってなかった」
「……でも男ですよね。君」
言いながら、シルヴァンはこの行為をやめる気はないとばかりにグレースの縮こまった性器に手を伸ばした。緩くつかまれて、刺激するように優しくこすられる。
はじめて他人に触れられる感覚は自分でいじる感覚とまた違って同じような人間の手のはずなのに何故か、不思議と心細い。
しかし、言葉を止めても機嫌を悪くして、乱暴にグレースを配慮しない行為をされるのだとわかってるので、面倒ながらもグレースはそのまま少し説明をした。
「男なのは男だけど……それと一人称とか声とか、服とか、容姿ってなんか関係ある? 俺は男だけどグレースで、私でもなんでもいいと思うよ」
「……」
「っ、自分は自分だから変わらない。だけど嫌なら声でだけでも変える。……服と容姿は勘弁してほしいけど」
話をしている最中にも緩く動かされてグレースのものは熱を持ち始める。
気持ちいいと簡単に感じられるような感覚じゃなかったが、体が目の前にいるアルファに興奮を覚えているのだろうことはなんとなくわかった。
そのアルファであるシルヴァンはポーカーフェイスであまり何を考えているのか分からないし、行為をすると言っているのに興奮しているのかどうかも分からない。
それでも、後々の面倒を考えるとこの旦那になる男とは、良好な関係を築くべきだと思う。
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