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夢の中で神様が出てきた。
「あなたは一体誰なんです?」
「わし?そんなもの見て分かるだろう。神じゃ」
「何で神?ここはどこですか?」
「知りたがり屋さんじゃのお。まあそんな事はどうでもいい。お主のか通学鞄の外ポケットに入っているお守りは、願った不幸を無いものにできる。お前はもう不幸に十分耐えた。もう楽になって良い」
夢は一瞬。駿介は目覚めると、お守りがあるか確るが、昨日自分が確かに入れた鞄の外ポケットにきちんと入っていた。
「不幸を無いものに……か」
駿介はそう呟くと身支度を始めた。
自転車に漕ぎながら駿介は考えた。忘れたはずの古典のワークが何故か机の中にあったのは、自分が無意識のうちにお守りに願い事をしていたからではないだろうか。
夢のせいもあって早く朝を向かえた駿介はいつもより早く学校に着いていた。
靴箱を見た感じ、朝練の人以外はまだ来てないようだった。
駿介はゆったりとした気持ちで教室のドアを開けた。すると、誰も居ないはずの教室に人がいた。しかも駿介の席で何かをやっていた。
「佐藤さん?」
駿介はその名を呼んで、自分の席に歩み寄る。
「か、柏木くん?!」
彼女は顔を真っ赤にして、びっくりしたように飛び上がった。
「僕の席で一体何を──」
自分の席の惨状を目の当たりにした駿介はすべてを悟った。
「ご、ごめんね。ほっとく訳にもいかなくって、何もしないってのもあれだったし……」
彼女は悪事がバレてしまったかのような弁明をしたが、実際はそうでは無かった。
駿介の机には数々の暴言がチョークでくっきりと書かれていた。それを佐藤さんは消そうとしてくれていたのだ。
こんな事、アニメや漫画の話だけの話だと思っていた。でもそうじゃ無かった……
「佐藤さん。ありがとう」
しばらく沈黙が続いてから駿介は口を開いた。
こんな酷い惨状に気づいた。それよりも自分の日常を守ろうとしてくれた人がいた事の方が駿介を動かした。
「いつから?いつからこんな事やってたの?」
「二ヶ月まえ……」
「ありがとう。もうこんな事しなくていい。気づけなくてごめん」
「でも……」
自分が虐められている事で迷惑しているのは自分だけだと思っていた。でも違った。周りにこんなにも優しい人がいて、その人にも迷惑がかかっていることに怒りを覚えた。
「今度からは自分で早く来てやるよ」
今日もそれとなくいじめを受けいざ帰宅しようとするとことだった。
「柏木くーん、ちょっとだけ付いて来てくれる?」
そう言って駿介の肩にそっと冷たい手を乗せる。彼は僕をいじめ始めた最初の人物で、その周辺のリーダーだ。
「わ、分かった」
連れて来られた場所はやはり体育館裏だった。
「よーっし皆主役のご登場だぞ!」
そう言って駿介を皆に見せびらかすように歓迎する。
いつものメンバー五人と隣のクラスの人が二人いた。
「えーっとね、取引をしたいんだ。君が僕に二千。二千円だけでいいんだよ。それだけくれればもういじめ止めてあげる」
そう言いながら駿介の顔を覗き込む。
気持ち悪いほど歪んでしまっているその顔に駿介は寒気を覚える。
これはいじめにある典型的な例だった。なぜ今までされてなかったのかも分からない。これに断わっても、はたまた受け入れても結果は同じだと分かっていた。でも、僕の手は勝手に動いてしまっていた。
気づけば財布を取り出し、彼に震える手を抑えて二千円を手渡した。
「うわぁ!ありがとうねー!もう決していじめなんかしないから!」
そう言って野球部で鍛えられた握力で駿介の肩を笑顔で掴んで壁に突き飛ばした。
「──っ」
「じゃあ。お前ら行くぞー」
甲高い笑い声を響かせながら彼らはこの場を去って行った。
駿介は自分の無力さを恨んだ。自分が強かったらあいつらに目にものを見せれたのに……と。
しばらく壁に凭れて蹲って絶望に浸っていると、体育館の開いていた出入り口から、バスケットボールが正面の塀にぶつかってこっちに転がって来た。
「あっ、すみませーんって、あ」
バスケットボールのユニフォーム姿の彼女を駿介は知っていた。
「華花……」
震える様な小さな声で呟いた自分の声を聞いて、自分が泣いている事に気づいて、顔を伏せる。
「しゅん……大丈夫?今度は何されたの?」
駆け寄って来て華花は駿介の隣に座った。
部活に励んでいたせいか、彼女からほんのり熱を感じる。
「ごめんね。何もしてあげられなくて、でも悲しくなったら言ってね。私はしゅんの味方だから」
あれから一週間が経った。駿介の心は冷たく凍ってしまっていた。いじめられるために学校に行き、学校から帰る。一日学校に居ても誰とも喋らず帰ることさえあった。
駿介は鞄の外ポケットから古くなっているお守りを取り出した。そして、何日か前に神様にあった夢を思い出した。
「これを使えば今の生活から……」
そう呟くと、駿介は無意識のうちに祈っていた。
これからずっといじめられませんように
「あなたは一体誰なんです?」
「わし?そんなもの見て分かるだろう。神じゃ」
「何で神?ここはどこですか?」
「知りたがり屋さんじゃのお。まあそんな事はどうでもいい。お主のか通学鞄の外ポケットに入っているお守りは、願った不幸を無いものにできる。お前はもう不幸に十分耐えた。もう楽になって良い」
夢は一瞬。駿介は目覚めると、お守りがあるか確るが、昨日自分が確かに入れた鞄の外ポケットにきちんと入っていた。
「不幸を無いものに……か」
駿介はそう呟くと身支度を始めた。
自転車に漕ぎながら駿介は考えた。忘れたはずの古典のワークが何故か机の中にあったのは、自分が無意識のうちにお守りに願い事をしていたからではないだろうか。
夢のせいもあって早く朝を向かえた駿介はいつもより早く学校に着いていた。
靴箱を見た感じ、朝練の人以外はまだ来てないようだった。
駿介はゆったりとした気持ちで教室のドアを開けた。すると、誰も居ないはずの教室に人がいた。しかも駿介の席で何かをやっていた。
「佐藤さん?」
駿介はその名を呼んで、自分の席に歩み寄る。
「か、柏木くん?!」
彼女は顔を真っ赤にして、びっくりしたように飛び上がった。
「僕の席で一体何を──」
自分の席の惨状を目の当たりにした駿介はすべてを悟った。
「ご、ごめんね。ほっとく訳にもいかなくって、何もしないってのもあれだったし……」
彼女は悪事がバレてしまったかのような弁明をしたが、実際はそうでは無かった。
駿介の机には数々の暴言がチョークでくっきりと書かれていた。それを佐藤さんは消そうとしてくれていたのだ。
こんな事、アニメや漫画の話だけの話だと思っていた。でもそうじゃ無かった……
「佐藤さん。ありがとう」
しばらく沈黙が続いてから駿介は口を開いた。
こんな酷い惨状に気づいた。それよりも自分の日常を守ろうとしてくれた人がいた事の方が駿介を動かした。
「いつから?いつからこんな事やってたの?」
「二ヶ月まえ……」
「ありがとう。もうこんな事しなくていい。気づけなくてごめん」
「でも……」
自分が虐められている事で迷惑しているのは自分だけだと思っていた。でも違った。周りにこんなにも優しい人がいて、その人にも迷惑がかかっていることに怒りを覚えた。
「今度からは自分で早く来てやるよ」
今日もそれとなくいじめを受けいざ帰宅しようとするとことだった。
「柏木くーん、ちょっとだけ付いて来てくれる?」
そう言って駿介の肩にそっと冷たい手を乗せる。彼は僕をいじめ始めた最初の人物で、その周辺のリーダーだ。
「わ、分かった」
連れて来られた場所はやはり体育館裏だった。
「よーっし皆主役のご登場だぞ!」
そう言って駿介を皆に見せびらかすように歓迎する。
いつものメンバー五人と隣のクラスの人が二人いた。
「えーっとね、取引をしたいんだ。君が僕に二千。二千円だけでいいんだよ。それだけくれればもういじめ止めてあげる」
そう言いながら駿介の顔を覗き込む。
気持ち悪いほど歪んでしまっているその顔に駿介は寒気を覚える。
これはいじめにある典型的な例だった。なぜ今までされてなかったのかも分からない。これに断わっても、はたまた受け入れても結果は同じだと分かっていた。でも、僕の手は勝手に動いてしまっていた。
気づけば財布を取り出し、彼に震える手を抑えて二千円を手渡した。
「うわぁ!ありがとうねー!もう決していじめなんかしないから!」
そう言って野球部で鍛えられた握力で駿介の肩を笑顔で掴んで壁に突き飛ばした。
「──っ」
「じゃあ。お前ら行くぞー」
甲高い笑い声を響かせながら彼らはこの場を去って行った。
駿介は自分の無力さを恨んだ。自分が強かったらあいつらに目にものを見せれたのに……と。
しばらく壁に凭れて蹲って絶望に浸っていると、体育館の開いていた出入り口から、バスケットボールが正面の塀にぶつかってこっちに転がって来た。
「あっ、すみませーんって、あ」
バスケットボールのユニフォーム姿の彼女を駿介は知っていた。
「華花……」
震える様な小さな声で呟いた自分の声を聞いて、自分が泣いている事に気づいて、顔を伏せる。
「しゅん……大丈夫?今度は何されたの?」
駆け寄って来て華花は駿介の隣に座った。
部活に励んでいたせいか、彼女からほんのり熱を感じる。
「ごめんね。何もしてあげられなくて、でも悲しくなったら言ってね。私はしゅんの味方だから」
あれから一週間が経った。駿介の心は冷たく凍ってしまっていた。いじめられるために学校に行き、学校から帰る。一日学校に居ても誰とも喋らず帰ることさえあった。
駿介は鞄の外ポケットから古くなっているお守りを取り出した。そして、何日か前に神様にあった夢を思い出した。
「これを使えば今の生活から……」
そう呟くと、駿介は無意識のうちに祈っていた。
これからずっといじめられませんように
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