僕の不幸の身代わりに

裕雨(ゆう)

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「何だコレ?!」

 自分の部屋で目覚めた駿介は枕元に御守りが置いてあるのに気づく。
 だいぶ古いせいか黒ずんでしまって、何のお守りなのかも見えない。湿気た所に置いてあったのかカビが生えかかっていて、袋の劣化が随分進んでいる。

「一体いつのお守り何だ?」

 そう言いながらも、何かの縁を感じた駿介は通学鞄の外ポケットにそっとしまった。いつも起きている時間に遅れていることに気づいた駿介は、その他の荷物、教科書類もバッグに詰め込むと、勢いよく部屋を飛び出した。
 自転車を急発進させ急いで学校に向う。

 自転車を漕げば漕ぐほど強くなる向かい風に苛立ちを覚えながらも、今日の時間割について頭の仲で確認する。そこで駿介は古典のワークを入れ忘れていることに気づいた。

「ヤッベー。今日宿題だったのに……先生に当てられたらどうしよう。俺友達いないしな……いや、何かの勘違いで、たまたまでもいいからバッグの中に入っててくれ!」

 駿介はブツブツと神頼みをしながら全速力で自転車を漕いだ。



「っふー。やっと着いた」

 自転車を置いて、靴箱に辿り着いた駿介は一つため息をつく。
 自分の靴箱に進み出て、靴をしまった時あることに気づいた。

「俺の上履きが……ない?」

 駿介は一瞬驚いたが、すぐに状況を理解して深いため息をついた。

「またあいつらの仕業か……」

 仕方なく辺りの靴箱に自分の上履きは無いか探し回る羽目になった。

 やっとのことで探し当てたが、そこは靴箱掃除で使う掃除道具入れで、何とも丁寧に立て掛けてあったのである。

「面倒くさい奴らだな。ほんとに……」

 ぼそっと呟いた瞬間校舎にチャイムが鳴り響いた。
 

 駿介は1年前からいじめを受けていた。理由は自分でも分からない。ぼーっと生きていたらいつの間にかこんな羽目にあっていた。
 複数人でのいじめは大体リーダーの様な存在がある。そいつはどの学校にも一人は居そうな、弱者を否定することでしか自分の取り巻きをまとめることができない人間のクズだ。
 でも、駿介はエスカレートするいじめに抵抗はしなかった。ほって置けばいつか終わってくれる。そう信じていた、いやそう信じるしかなかったのだ。両親を事故で失い、親戚からの支援で一人暮らしをしている。担任はいじめを見て見ぬふりをする。自分のクラスにいじめが起きたとなれば、先生としての評価も下がるからだろう。先生という存在も所詮はその程度なのだ。


 駿介が教室の後ろのドアを開けると、皆の視線が駿介に集中する。
 
「おはようございまーす。遅れましたー」

 適当に挨拶して窓側の一番後ろの自分の席に座る。くすくすと笑う声が変に鮮明に聞こえる。笑って居るのは例のいじめっ子だけではない、その周りの席にいる女子もだった。ヒソヒソと何かを話してはくすくすと笑う。

  こんなことにはもう……
   

  

 





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