気まぐれの遼 二年A組

hakusuya

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輝く星 集られる遼

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 翌日放課後、りょう学園鞄スクールバッグを背負ってグラウンドに立っていた。
 妹の保護者としてフットサルコートがよく見える隅にいたのだが、普段から注目されているだけあって、球技大会の練習をしている者たちから熱い視線を受けた。
 学園屈指の美少年が観ているとあって、女子のハッスルぶりは五割増しだったと後でせいが笑いながら語った。
 そこに星川ほしかわの姿はなかった。生徒会活動があるためその日は参加できなかったようだ。それどころか星川が参加することの方が少ないらしい。女子のやる気を引き出すために自分を呼んだのだとしたら星もなかなかやる奴だと遼は思った。
 そこには星のH組だけでなく、他のクラスからも練習に来ている者がいた。そして、こうして放課後に自主的に練習するチームはなかなか強いようだ。ただ、そうであっても星がいるチームは頭一つどころか二つ三つ抜けていた。
 鮫島がゴレイロをしていた。星川がいる時は星川がゴレイロで、フィールドプレイヤーに的確な指示を出すらしいが、鮫島はただ単にキーパーの仕事をした。
 フィールドには星をはじめとする女子四人。体育の沢辺さわべの指導に従っているのか整然と規則正しい動きをした。
 それがヘドンドやエイトの動きだというのは遼にもわかった。昨日の体育の授業の後半で教わったからだ。
 その動きを星たちはずっと前に教えられたかのようにスムーズにこなした。
 不在の星川の代わりに司令塔をしていたのは星だった。
 ヘドンドの開始時点でフィクソをしていた星は状況に応じてピヴォにもなった。残りの三人がエイトの動きをして、的確にピヴォの位置にいる星にパスを通す。星はすぐにシュートを撃つか、撃てない時は味方の方を向いてボールをキープし、残りの三人のうち相手のマークを振り切ったプレイヤーにパスを出してシュートを撃たせた。それがまた気持ちいいくらい決まった。
 自分の妹が活躍する様を遼は大満足で見守った。
 星は規則正しい動きのみならずイレギュラーな動きにも長けていた。相手に隙があると見るや、不意打ちのようにボールを奪ってシュートを放つ。まさに天衣無縫。
 規則正しい動きだけなら予測しやすいが、星のアドリブは誰にも予想できなかった。
 そこに星がいるH組のチームと互角に渡り合えるチームはなかった。星の個人技の前では、素人の組織的な動きなど全く無力だった。
 感動しながら観ていた遼はつい顔がほころんでいた。
 他人に無関心で、無表情の美少年が隙を見せたものだから、遼に関心を示す者たちが寄ってくることになった。
「こんにちは、香月かづきくん」その先陣はE組のチームだった。「妹さんの練習を観に来たの?」
 名前は覚えていないが、以前星から「S組十傑」の一人だと教わった男だった。
「E組の樋笠ひがさだよ」樋笠はさわやかに笑った。
「ああ、どうも」
 コミュニケーション能力に天と地ほどの差がある。遼はいい加減な返事しかできなかった。
「妹さんがいるH組のチームは無敵だね。敵わないよ、なあ」樋笠の後ろにはE組の男女がいた。
「とっても強くて私たちじゃ歯が立たないわ」樋笠も目立つがその女子も遼の目を開かせる美人だった。
 何度か声をかけられたことはあるが遼は彼女の名を覚えていなかった。ただ、どことなく只者ではない雰囲気がある。
 ただの美人ではない。性格がきつそうにも見える彼女は親しみを込めて微笑んでいた。何かわざとらしくもある。そういうのが記憶に残るのだ。
「私のことも覚えてないか。名手なてです。委員会でも何度も会っているんだけどな」
「ごめん、顔はわかるよ、美人だし」
「美人だなんて、照れるじゃない」そう言って名手は遼の肩をバシバシ叩いた。
「痛いな……」遼は苦笑いを浮かべた。
「アザミ嬢は叩き魔だからな」樋笠が言う。「あんまりスキンシップをとりすぎると妬みの餌食になるよ」
「良いじゃない、こういう時でないと香月くんに触れられない」名手は全く気にしていなかった。
 女子の多くが指をくわえるようにして遠巻きに見ている。
「練習は良いのか?」遼は樋笠と名手に訊いた。
 二人とも体操着だからフットサルの自主練に参加していたはずだ。
「休憩だよ」樋笠はしれっと答える。「休憩という名の女子との対話あるいはコミュニケーション」
「もう一人の学級委員に任せているから平気よ」名手が言った。
 指差す先に、女子を相手にリーダーシップを発揮する男子がいた。
「彼にはハーレムの王になってもらわないと」名手が目を輝かせた。
 何だかよくわからない。クラスが違うとカラーも著しく違ってくる。
 E組はA組ともB組とも違っていて、常に浮わついた雰囲気が漂っているようだった。
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