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三宅

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 新しく友人を作ったりするのは新鮮だ。
 ずっとA組にいた明音は同じ顔ぶれのクラスにい続けた。部活も中等部時代のはじめの頃に吹奏楽部にいたが、辞めていて、今はボランティア部の幽霊部員をしているだけだ。だから同じ学年の生徒のことを明音はよく知らなかった。顔と名前がどうにか一致する程度だ。
 この学園に通いはじめて五年目、新しい学校に入った気分だった。そして守崎が言った通り、徐々にクラスの人間から声がかかるようになった。
「小早川さん、土日に空いてる日ってある?」と、その日いきなり訊いてきたのは守崎ではなく、新しくクラスメイトになった男子だった。三宅という。三宅は理科の実験班が一緒だった。
「私、土日はバイトしているの」
「へえ、バイトしてるんだ。どんな?」
「ファミレスだけど」
「え、どこ? 行ってみようかな」
「知ってる顔が客として来たら恥ずかしいんだよね」
 明音は本音を言った。自宅近くのファミレスだから小学校時代の顔見知りなども利用していて時々顔を合わせる。
 たいして親しくもなかったのに何かサービスしてなどと言う輩がいて明音は迷惑だった。
 三宅の態度から明音は同じ匂いを感じた。だから「言いたくないんだ、ごめん」とはっきりと言った。
「そうか、そうだよね、じゃあさ、平日とか空いてる日ある?」
「うち、母子家庭になったから下の子の面倒みないといけないんだよね。だから毎日早く帰って家にいるんだよ」
「そうなんだ、大変だね」
「うん」
 それで話を打ち切りたかったが、三宅もしつこかった。
「いやぁ、一緒に映画でも観に行かないかと思っているんだけど、どうかなあ」
「ホントにごめん。そんな気ない」
「うーん、それは残念」三宅は頭を掻いた。
 守崎が来てくれたので三宅はその場を離れていった。
「何々、デートの誘い?」
「やっぱりそうなんだ。校内で堂々と誘われたのは初めてだよ」
「高等部入学生の男子は結構多いらしい、デートに誘う奴」
「校則で生徒同士の男女交際が禁止されているのを知らないのかな」
「だから、付き合って、とは言わないみたい」
「よく知ってるね、菜生さん?」明音はわざとらしく「さん」付けで呼んだ。
「わ、私は、言われたことないよ」と守崎は目をそらした。「まあとにかく、A組以外のクラスはA組とは別だと思った方が良いよ。別の学校なんだと」
「そうみたいね」
 三宅はその後も実験などのグループ学習の際に懲りずに絡んできた。はっきりと断っても堪えない性格らしい。しかも他の女子も誘っている。
 そしてそういう男子が他にも何人かいた。地味でおとなしいクラスだと思っていたが、発情期男子は多いようだと明音は思った。
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