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御堂藤学園二年生編

生徒会長は楽しげに笑う

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 その後、舞子まいこ会長は生徒会活動について簡単に説明し、雑談に興ずるようになった。
 そのタイミングを見計らっていたように蜷川にながわ書記が口を開いた。
「今、学園裏サイトをチラッと見ていたのですが」彼の前にはノートパソコンが開かれていた。「これは副会長ではないですよね?」
 泉月いつき怪訝けげんそうに顔を向けた。その様子ではあのサイトを見ていないなと火花ほのかは思った。
「ん、何だ?」舞子会長は立ち上がった。
 眠そうにしていたかと思えば、気になることがあると俄然フットワークが良くなるようだ。
「見つけてしまったのかい、蜷川くん」星川ほしかわは知っているようだった。
 知らなかったのはここでは女子三人だ。どうも情報収集に難があるようだ。
 会長が立ち上がって蜷川書記のノートパソコンを覗き込んだので、泉月も仕方なく立ち上がってやって来た。三井寺みいでら会計もならう。
 火花ほのかはぽつねんと座っていた。
「またこの手の記事か。とんだパパラッチだな。鮎沢あゆさわくんも見ると良い」
 何故か火花も呼ばれた。画面が大きくて見やすい。それが楓胡ふうこに教えられた記事であることは間違いなかった。
「なかなかの美少女じゃないか」舞子会長は楽しげに笑う。「やることやってる、と言われてるぞ、東矢とうや
 舞子会長に振り返られて泉月は表情も崩さず、冷たく言い放った。「私ではありません」
「だろうな。こんな愛嬌があればファンも倍増だ」
 火花は可笑しくて顔に出さないようかなりの努力をした。
「いつどこで撮った写真だろう」
 舞子会長が手がかりがないかと覗き込む。セミロングの髪がわずかに当たり、蜷川書記はドギマギしていた。オレもそういうことされたいなと火花は思った。
「これは××駅のデッキですね」星川が答えた。「昨日の夕方でしょうか」
「何故わかる?」
「こちらの写真には時計が写っています。六時十五分。黄昏時ですがライトアップでこれだけ明るく人の顔もわかります。そしてここに写っている映画館が『本日レディースデイ』となっているので昨日もしくは先週の同じ曜日なのではないかと」
「なるほどな」と言う舞子会長の顔は、それくらい気づいているぞと言っているように見えた。
「私は昨日も生徒会室に来ておりました。中等部の入学式があり、それに参加した後も雑務をしておりまして、帰ったのは六時半を過ぎていたかと」泉月が言った。
「東矢の最寄駅はどこだったか?」
「駅はその写真の駅です」
「え?」と驚いたのは一年生の二人だった。
「春休みに引っ越したのよ」泉月は答えた。「ごめんなさい、言ってなかったわね」
「そうだったんですか……」三井寺会計の顔は、教えて欲しかったと主張していた。どうも彼女は泉月の信望者のようだ。
「学校帰りなら制服姿だな」
「そもそも、私ではないと言っているのです」
「まあ、そう怒るな。私もお前ではないと言っているではないか」
「怒ってなどいません」
 いや、ムッとしているだろ。
「まあまあ、落ち着きたまえ」星川のなだめ方は余計にいらっとさせるだろう。
「何か声明を出しますか? これは新聞部が飛びつきそうな話題です。パパラッチ伊沢いざわさんあたりが飛んできそう」
 楓胡ふうこは「パパラッチ伊沢」と呼ばれているらしい。
 泉月いつきの眉がわずかに上がった。
「必要ありません。何もしなくて結構です。これは私ではありませんから」言いたい奴には勝手に言わせておけ、という態度だ。
「にしてもこっちの男、なかなかのイケメンだな」
 それはオレだが。火花は口許くちもとを押さえた。そうでもしないと笑ってしまう。
「そう思わないか?」舞子会長は火花と泉月を交互に見た。
 間違いなく知っている。知っていて冷やかして遊んでいるのだ。とんでもない女だ。可愛いけど、と火花は眼鏡の奥の目を流し目にして舞子会長を見た。
「ボクとはまたタイプが異なるイケメンですね」星川がさらりと髪をかき上げた。
 さりげなく、いやハッキリと自分がイケメンであると主張する。なんて奴だ。
 何にせよ生徒会がおかしな奴らの巣窟そうくつだと火花は認識した。生真面目な泉月にはちょうど良いだろう。
「しかし、このレスは気に入りません」三井寺は憤慨している。「伊沢さんが来る前に何らかの対処をすべきだと私は思います」
 楓胡ふうこは来ないだろう。楓胡自身がこの記事をなくしたいのだから。
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