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風を斬る魔剣 プレセア暦三〇四六年 コーネル邸

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 扉を蹴り開けるようにして、何人かがなだれ込んできた。父エドワードと姉マチルダの姿もあった。
 土色マントの男たちがさらに五人入ってきた。
「おお! 助太刀だ」オズワルド叔父は喜んだ。
 しかし助太刀というより、相手の勢いに押されて邸内に引き込んだという方が当たっているとロアルドは思った。
 突然マントの男たちが十人倒れた。立っているのは五人だ。
「敵は五人です」ロアルドが叫んだ。
「増えたのね……役に立たないじゃん」ジェシカが呆れたように言った。
「お父さまがへばったのよ」マチルダが言った。
 倒れていた十人が立ち上がった。彼らは傀儡くぐつだ。みな領民なのだ。
「いったいどいつが操っているの?」ジェシカが訊く。「そいつをやっつけた方が早いわ」
「そいつです」ロアルドが答えた。
「どれ?って、何であんたにわかるの?」
「ですから、そいつです」
 ロアルドは指さしたが、その男は瞬時に場所を変え、他の男たちに紛れた。
 同じ格好をしているから区別がつかない。
 身体強化しているのか、マントの男たちの動きは速かった。しかも何やら隊列を組んだかのようにぐるぐると回る動きをして幻惑してくる。その上、傀儡となっている土色マントたちの陰に隠れて移動するから魔法も当てづらくなっていた。
「お父さま、十人は領民です。どうか傷つけないように」グレースがうた。
「魔法をつかわずに武器で襲ってくるやつよ」ジェシカが説明した。
「そんなこといっても、区別つかないわよ」マチルダが嘆いた。
 突然土色マントの十人が倒れた。
「今、立っている五人が敵です」ロアルドが言った。
 倒れていた十人が立ち上がった。
「は? どれって?」
 また十人が倒れ、五人が残る。
「今、立っている五人が……」
 倒れていた十人がまた起き上がった。
「何なんだ、これはいったい」父エドワードが呆れている。
傀儡かいらい魔法がときどき途切れるのでしょう……」ロアルドが頭を掻いた。「……知らんけど」
 十人が倒れたり起き上がったりを繰り返した。
 残りの五人が目まぐるしく動きながら次々と魔法を放つ。
 マチルダとエドワードが干渉系魔法でその威力を削ぎ、ジェシカは舞いながら魔剣をふるっていた。
「それで、どいつが操っているって?」ジェシカがロアルドに訊いた。
「そいつです」
 水魔法が放たれ、土色マントのひとりがずぶ濡れになった。
「ロアルド、あんた今、アクアを?」
「ロージーの魔法です」
「何でも良いわ」
 ジェシカは他のやつらを無視して、ずぶ濡れ男めがけてとびかかり、魔剣をふるった。
「観念しなさい!」
 そいつは防御魔法も発動できずにジェシカの魔剣の餌食となった。
 剣は空を斬った。
 すさまじい風が吹き、しばらくして空気が寸断したかのような高音が鳴った。
 そして男のマントが袈裟懸けに裂け、ついで男の胸にぱっくりと刀剣による創があいた。
 男は仰向けに倒れていった。
 そして間もなく、土色マントの十人が崩れるように倒れた。
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