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闇落ち (カウンタークルー 高見澤神那)
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キッチンカウンターを通して赤塚亮子からオーダー品を受け取った高見澤神那は、いつもそうしているように愛嬌ある笑顔で亮子に挨拶を返し、レジカウンターに戻った。向こうには小さな子供を連れた母親が待っていた。トレイにオーダー品とセットのおもちゃを載せ、子供に得意のスマイルを送ると、その子は嬉しそうに手を振った。
「ごゆっくりどうぞ」と神那はマニュアル通りの声かけを行い、次の客を迎えた。「いらっしゃいませ、こんちには……」
すでにランチタイムに入っていた店はふだん通りに混んでいた。このところ定位置となった二番レジ。神那はマイペースに仕事をすすめる。下手に焦ってもミスをするので自分のペースをしっかり守っている。一番レジの蒲田美香のような臨機応変な気配りも、三番レジの古木理緒のようなてきぱきとした要領の良い動きも自分にはできないことを神那は承知しているから、決して他人のやり方に惑わされることはなかった。それが安定している要因だとトレーナーの柚木璃瀬に褒められたことがあり、神那も自分のやり方が間違っていなかったと自信を持ったのだった。
アルバイトをしたいと言った時、両親は揃って目を丸くした。温室育ちのあなたにそんなことができるわけないじゃないの、と母親は言い、何も今しなくても大学へ入れば家庭教師のアルバイトくらいさせてやるよ、と父親がわかった風なことを言った。お小遣いを上げて欲しいのかと付け加える有様だった。それが、お金のためではなく、さらにはファーストフードのアルバイトだと言うと、父親はさらに心配そうな顔をした。
「若い男の子たちがたくさん来るんだろう?」
父親の発想は所詮そういうものだということを神那は思い知らされた。きっと若い頃に喫茶店のウェイトレスなどに声をかけたことがあるのだろう。自分のことを棚にあげるとはこういう時に使う言葉だろうと神那は思ったが、口には出さなかった。
中学から栴檀女学院に通い、今年は高校二年生になった。周りに男子がいない状況にはすっかり慣れてしまった。異性に見られていないと思うと、娘たちはそれなりの行動をとる。学校の敷地に入ってしまえば、とても外では見せられないような醜態をさらすようになった。
上品なお嬢様学校と内外ともに評価されているものの、その中の世界の主人公たちはいつの間にか、それぞれ老若男女の役割を割り振られて迫真の演技をする。
オヤジ役を振られた子は、教室の席につくとサンダルに履き替え、股を大きく開いてふんぞり返り、裏庭ではタバコを吸った。
エコに目覚めたオバサン娘は何でも綺麗に整頓されていないと気が済まず、周りにだらしのない子がいれば必ず注意をし、ごみをかき集め、「全く近頃の子は……」などという台詞を吐いた。
細身長身の「美少年」は娘たちの羨望の的となり、常に多くのラブレターを集め、記念日には持ち帰れないほどのプレゼントを受け取った。
外部の人間が下す、みんな揃ってお嬢様という世界では決してなかった。一つとして同じキャラクターは存在しない。それが栴檀女学院の伝統だと、神那は後になって知らされた。
そして幸か不幸か、神那はもって生まれた容姿が娘役にぴったりとされ、学園の寵児となった。今神那は生徒会の副会長を務めている。
他の女子校はどうなのだろう? 共学の学校は? 神那の興味は外へ向けられるようになった。そうなったのは神那が心より尊敬していた二つ上の生徒が卒業して行ったことが影響している。
栴檀女学院には上級生に学園を統治するキングまたはクィーンと呼ぶべき存在がいて、教師たちの目の届かないところでその影響力を発揮していた。
頂点を極める存在たちは、生徒の支持を集めて代々生徒会の会長になる。その会長に指名されたものが事実上次の会長になることが暗黙の了解となっていた。会長の選挙は立候補に対する投票ではあるが、学校側の知らぬところで生徒たちがその代の統治者を決めるというルールが出来上がっている。
現在の生徒会長は三年生だ。会長は秋に行われる選挙で二年生の中から選ばれ、翌年の九月まで一年の任期とされていた。したがって現在副会長の神那が時期会長となることは半ば公認されている事実だった。
しかし現会長にしろ、次期会長候補の神那にしろ、絶対的な支持を集めるほど強く人を惹きつける魅力は足りていなかった。
三、四年前の世代に強烈な個性の女王がいたことが、その後のリーダーたちの魅力を半減させてしまう効果をもたらしたと神那は感じている。神那の考えでは今年卒業していった先輩が最後の逸材であり、自分の代も含めて今後は影響力のある人材はしばらく現れないだろうと誰もが見ている。
神那の目は外を向くようになった。
これまで女性の中に異性を見い出してきた神那だが、若い男たちのいる世界で過ごせば何か変わるものがあるかもしれないと考えたのだ。その一環として、ファーストフード店でのアルバイトがあった。そこで何かを見つける。忘れていた感覚を取り戻す。神那は意気込んでクイーンズサンドのアルバイト募集に応募した。結果は見事に採用。神那は勇んで明葉ビル店にやってきた。
しかしそこで目にしたのは男たちの醜さだった。相手のことを少しも思いやらない稚拙な誘い、断られても懲りずに何度もおっかける執着心、言葉すらかけられずただじろじろと舐めるように見る粘着性、たまたま近くにいた人間がそうだったのかもしれないが、神那はすっかり幻滅してしまった。これなら栴檀の中にいる女生徒の方がよほどかっこよく男らしく見える。神那は次第に客に対する愛想と、スタッフに対する態度を使い分けるようになって行った。
そしてそうした中で神那のこころを捉えたのは、やはり女性だった。
赤塚亮子。明鏡大学生活科学部一年生。彼女は明鏡女子高校の出身で、現学部も八割が女子という学部であることもあり、女の世界の住人だった。必然、神那と共通するところがある。そのため亮子には女子校特有の異性の魅力を持ち合わせた女性の匂いが漂っていた。神那はすぐに亮子の虜となった。
亮子が隣りのレジにいるときは、神那の気持ちは数倍高ぶった。ミスをしないよう気をつけていないと、ついつい客の声を聞き逃してしまう。亮子の話す声、亮子の靴音、亮子の放つほのかな匂い、それらすべてが神那の知覚を刺激した。亮子の笑顔を正面から見ることのできる客に激しい嫉妬を感じたこともある。
こうした感情、感覚は去年の春以来だった。二年上の先輩女子が卒業して久しく感じたことのなかった気持ちの高ぶりである。亮子が明鏡大学の学生であることを聞きだした神那は、自分も明鏡大に進学したいと思ったほどだ。そういえば二年上の先輩も明鏡大へ進学したのではなかったか。
いつしか神那は、唐突に亮子に聞いていた。話すきっかけになれば何でも良いのだ。
「あの、栴檀の卒業生で桜井陶子という人が明鏡大の理工学部にいるんですけれど、ご存知ですか?」
「桜井?」
学部も異なるし、明鏡大ほどのマンモス大学なら知っている方が奇蹟に近いと神那は思い直した。
「さあ、ごめんなさい。実は私、同じクラスの人間もまだろくに覚えていないの。明鏡女子高校の時の友人との付き合いがあるくらいで、新しく友人を作ったりしないし、今もこうして大学から離れてアルバイトをしている身だから」
「そうですよね」
神那はさして落胆しなかった。今や桜井陶子よりも赤塚亮子の方が身近で気になる存在なのだ。
「でも、理工学部の女子って、少ないのよね。ひとりすごく綺麗で可愛い子がいたけれど、いつも男子学生と一緒にいるわね。その男子学生、キャンパスではイケメンとして有名なのよ」
「だったら違うようですわ」
神那は否定した。桜井陶子が男に惹かれることなどありえないからだ。彼女は私を一人前にしてくれた。あの愛撫の仕方、口の這わせ方、指先の調べは栴檀の歴代女王から受け継がれてきたものだ。しかし今の自分にこれを伝える適当な後継者が見当たらないのが残念だった。
(亮子さん、あなたに教えて差し上げてもよろしいのです……)
神那は本気でそれを考えていた。
女子校出身の亮子ならきっとわかってくれるはずだ。神那は亮子の腰のくびれあたりから丸く絶妙に描かれた下半身のラインを舐めるように鑑賞した。これを見たとき、神那は亮子が桜井陶子とどことなく似ていることに気づいた。ああやはり自分は亮子の中に桜井陶子の影をみているのかと思ったくらいだ。陶子の呪縛から離れることはできないのか。
そうした神那の意識の流れは、時としてたちまち断ち切られることがあった。それは二人の間の悩ましい空気をぶち壊す無粋な、男の視線だった。
男の視線を浴びることはある程度覚悟をしていた。それはアルバイトをしたいと打ち明けた時に、余計な心配を見せた父親のことばを頭の中にしまいこんでいたからだ。
「パパが神那と同じ年頃の男の子だったら、神那のような可愛い子を絶対に放ってはおけないね。声をかける勇気がなかったとしても、常に影からじっと見つめているかもしれないよ」
しかし西章則と田丸誠の視線はそのような生やさしいものではなかった。彼らの目線は視姦だった。自分と亮子は、この二人の頭の中で裸に剥かれ、良いように犯されている。彼らの卑猥な妄想を考えるだけで、神那は許せない怒りを感じた。
何か行動しないととんでもない事態になってしまう。そう思った神那は店長である江尻マネージャーに相談したのだ。まともに話をしたことのない上司に相談するというのは、神那にとってもすごくストレスではあったが、瀬に腹は代えられなかった。
江尻はやはり困った様子を顔に浮かべ、とりあえず善処するようなことを言ったが、神那は不満だった。西章則は、何だかんだと絶妙な理由をつけてキッチンを抜け出し、神那と亮子に遠慮のない視線を向けた。田丸誠は、口に出せない苛立ちをすべて見つめることで代償しようと神那の立ち居振る舞いを観察した。もはや耐えられない。彼らの冒涜こそ粛清されるべき対象だと神那は思いつめたのだった。
「ごゆっくりどうぞ」と神那はマニュアル通りの声かけを行い、次の客を迎えた。「いらっしゃいませ、こんちには……」
すでにランチタイムに入っていた店はふだん通りに混んでいた。このところ定位置となった二番レジ。神那はマイペースに仕事をすすめる。下手に焦ってもミスをするので自分のペースをしっかり守っている。一番レジの蒲田美香のような臨機応変な気配りも、三番レジの古木理緒のようなてきぱきとした要領の良い動きも自分にはできないことを神那は承知しているから、決して他人のやり方に惑わされることはなかった。それが安定している要因だとトレーナーの柚木璃瀬に褒められたことがあり、神那も自分のやり方が間違っていなかったと自信を持ったのだった。
アルバイトをしたいと言った時、両親は揃って目を丸くした。温室育ちのあなたにそんなことができるわけないじゃないの、と母親は言い、何も今しなくても大学へ入れば家庭教師のアルバイトくらいさせてやるよ、と父親がわかった風なことを言った。お小遣いを上げて欲しいのかと付け加える有様だった。それが、お金のためではなく、さらにはファーストフードのアルバイトだと言うと、父親はさらに心配そうな顔をした。
「若い男の子たちがたくさん来るんだろう?」
父親の発想は所詮そういうものだということを神那は思い知らされた。きっと若い頃に喫茶店のウェイトレスなどに声をかけたことがあるのだろう。自分のことを棚にあげるとはこういう時に使う言葉だろうと神那は思ったが、口には出さなかった。
中学から栴檀女学院に通い、今年は高校二年生になった。周りに男子がいない状況にはすっかり慣れてしまった。異性に見られていないと思うと、娘たちはそれなりの行動をとる。学校の敷地に入ってしまえば、とても外では見せられないような醜態をさらすようになった。
上品なお嬢様学校と内外ともに評価されているものの、その中の世界の主人公たちはいつの間にか、それぞれ老若男女の役割を割り振られて迫真の演技をする。
オヤジ役を振られた子は、教室の席につくとサンダルに履き替え、股を大きく開いてふんぞり返り、裏庭ではタバコを吸った。
エコに目覚めたオバサン娘は何でも綺麗に整頓されていないと気が済まず、周りにだらしのない子がいれば必ず注意をし、ごみをかき集め、「全く近頃の子は……」などという台詞を吐いた。
細身長身の「美少年」は娘たちの羨望の的となり、常に多くのラブレターを集め、記念日には持ち帰れないほどのプレゼントを受け取った。
外部の人間が下す、みんな揃ってお嬢様という世界では決してなかった。一つとして同じキャラクターは存在しない。それが栴檀女学院の伝統だと、神那は後になって知らされた。
そして幸か不幸か、神那はもって生まれた容姿が娘役にぴったりとされ、学園の寵児となった。今神那は生徒会の副会長を務めている。
他の女子校はどうなのだろう? 共学の学校は? 神那の興味は外へ向けられるようになった。そうなったのは神那が心より尊敬していた二つ上の生徒が卒業して行ったことが影響している。
栴檀女学院には上級生に学園を統治するキングまたはクィーンと呼ぶべき存在がいて、教師たちの目の届かないところでその影響力を発揮していた。
頂点を極める存在たちは、生徒の支持を集めて代々生徒会の会長になる。その会長に指名されたものが事実上次の会長になることが暗黙の了解となっていた。会長の選挙は立候補に対する投票ではあるが、学校側の知らぬところで生徒たちがその代の統治者を決めるというルールが出来上がっている。
現在の生徒会長は三年生だ。会長は秋に行われる選挙で二年生の中から選ばれ、翌年の九月まで一年の任期とされていた。したがって現在副会長の神那が時期会長となることは半ば公認されている事実だった。
しかし現会長にしろ、次期会長候補の神那にしろ、絶対的な支持を集めるほど強く人を惹きつける魅力は足りていなかった。
三、四年前の世代に強烈な個性の女王がいたことが、その後のリーダーたちの魅力を半減させてしまう効果をもたらしたと神那は感じている。神那の考えでは今年卒業していった先輩が最後の逸材であり、自分の代も含めて今後は影響力のある人材はしばらく現れないだろうと誰もが見ている。
神那の目は外を向くようになった。
これまで女性の中に異性を見い出してきた神那だが、若い男たちのいる世界で過ごせば何か変わるものがあるかもしれないと考えたのだ。その一環として、ファーストフード店でのアルバイトがあった。そこで何かを見つける。忘れていた感覚を取り戻す。神那は意気込んでクイーンズサンドのアルバイト募集に応募した。結果は見事に採用。神那は勇んで明葉ビル店にやってきた。
しかしそこで目にしたのは男たちの醜さだった。相手のことを少しも思いやらない稚拙な誘い、断られても懲りずに何度もおっかける執着心、言葉すらかけられずただじろじろと舐めるように見る粘着性、たまたま近くにいた人間がそうだったのかもしれないが、神那はすっかり幻滅してしまった。これなら栴檀の中にいる女生徒の方がよほどかっこよく男らしく見える。神那は次第に客に対する愛想と、スタッフに対する態度を使い分けるようになって行った。
そしてそうした中で神那のこころを捉えたのは、やはり女性だった。
赤塚亮子。明鏡大学生活科学部一年生。彼女は明鏡女子高校の出身で、現学部も八割が女子という学部であることもあり、女の世界の住人だった。必然、神那と共通するところがある。そのため亮子には女子校特有の異性の魅力を持ち合わせた女性の匂いが漂っていた。神那はすぐに亮子の虜となった。
亮子が隣りのレジにいるときは、神那の気持ちは数倍高ぶった。ミスをしないよう気をつけていないと、ついつい客の声を聞き逃してしまう。亮子の話す声、亮子の靴音、亮子の放つほのかな匂い、それらすべてが神那の知覚を刺激した。亮子の笑顔を正面から見ることのできる客に激しい嫉妬を感じたこともある。
こうした感情、感覚は去年の春以来だった。二年上の先輩女子が卒業して久しく感じたことのなかった気持ちの高ぶりである。亮子が明鏡大学の学生であることを聞きだした神那は、自分も明鏡大に進学したいと思ったほどだ。そういえば二年上の先輩も明鏡大へ進学したのではなかったか。
いつしか神那は、唐突に亮子に聞いていた。話すきっかけになれば何でも良いのだ。
「あの、栴檀の卒業生で桜井陶子という人が明鏡大の理工学部にいるんですけれど、ご存知ですか?」
「桜井?」
学部も異なるし、明鏡大ほどのマンモス大学なら知っている方が奇蹟に近いと神那は思い直した。
「さあ、ごめんなさい。実は私、同じクラスの人間もまだろくに覚えていないの。明鏡女子高校の時の友人との付き合いがあるくらいで、新しく友人を作ったりしないし、今もこうして大学から離れてアルバイトをしている身だから」
「そうですよね」
神那はさして落胆しなかった。今や桜井陶子よりも赤塚亮子の方が身近で気になる存在なのだ。
「でも、理工学部の女子って、少ないのよね。ひとりすごく綺麗で可愛い子がいたけれど、いつも男子学生と一緒にいるわね。その男子学生、キャンパスではイケメンとして有名なのよ」
「だったら違うようですわ」
神那は否定した。桜井陶子が男に惹かれることなどありえないからだ。彼女は私を一人前にしてくれた。あの愛撫の仕方、口の這わせ方、指先の調べは栴檀の歴代女王から受け継がれてきたものだ。しかし今の自分にこれを伝える適当な後継者が見当たらないのが残念だった。
(亮子さん、あなたに教えて差し上げてもよろしいのです……)
神那は本気でそれを考えていた。
女子校出身の亮子ならきっとわかってくれるはずだ。神那は亮子の腰のくびれあたりから丸く絶妙に描かれた下半身のラインを舐めるように鑑賞した。これを見たとき、神那は亮子が桜井陶子とどことなく似ていることに気づいた。ああやはり自分は亮子の中に桜井陶子の影をみているのかと思ったくらいだ。陶子の呪縛から離れることはできないのか。
そうした神那の意識の流れは、時としてたちまち断ち切られることがあった。それは二人の間の悩ましい空気をぶち壊す無粋な、男の視線だった。
男の視線を浴びることはある程度覚悟をしていた。それはアルバイトをしたいと打ち明けた時に、余計な心配を見せた父親のことばを頭の中にしまいこんでいたからだ。
「パパが神那と同じ年頃の男の子だったら、神那のような可愛い子を絶対に放ってはおけないね。声をかける勇気がなかったとしても、常に影からじっと見つめているかもしれないよ」
しかし西章則と田丸誠の視線はそのような生やさしいものではなかった。彼らの目線は視姦だった。自分と亮子は、この二人の頭の中で裸に剥かれ、良いように犯されている。彼らの卑猥な妄想を考えるだけで、神那は許せない怒りを感じた。
何か行動しないととんでもない事態になってしまう。そう思った神那は店長である江尻マネージャーに相談したのだ。まともに話をしたことのない上司に相談するというのは、神那にとってもすごくストレスではあったが、瀬に腹は代えられなかった。
江尻はやはり困った様子を顔に浮かべ、とりあえず善処するようなことを言ったが、神那は不満だった。西章則は、何だかんだと絶妙な理由をつけてキッチンを抜け出し、神那と亮子に遠慮のない視線を向けた。田丸誠は、口に出せない苛立ちをすべて見つめることで代償しようと神那の立ち居振る舞いを観察した。もはや耐えられない。彼らの冒涜こそ粛清されるべき対象だと神那は思いつめたのだった。
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