67 / 82
望まぬ再会
3
しおりを挟むだぁれだよぉ、お前! とか言いたくなった。
そんなセリフ、俺が言ったのか。
顔から火が出そうだ、朝っぱらから。
「学校行きたくねぇ」
まさかの理由で登校拒否したくなると思わなかった。
学校に行きたくないのは、あいつとした会話のこともそうだけど。
「…………はあぁぁーーーーー」
俺がやった行動が、俺的に大問題。
でも作家的にはナイスだったらしい。
しかも、あやうく車の中で18禁に突入するきっかけを起こされかかってたっていう……。
恋してんだろうなと神田に囁いた時、そのまま耳の後ろにわざとリップ音をたてながらキスをしてた俺。
「うあああああああ」
恥ずかしい!
そんなこと、絶対しない! お・れ・な・ら!
夢を見るように、自分がしたことを、作家曰く脳内再生でエンドリピってやつで知らされた。
その内容の中で、作家が俺がやめてくれ! って思うような展開を途中まで書いたりもして、何度か車内で時間の巻き戻しみたいな感覚があった。
自分が女を口説くところを、後々自分で鑑賞するハメになるって、どういう事態だよ。
俺の行動と発言のどこからどこまで、俺は干渉できるのか…いまだつかめていない。
どうにかして、最悪の事態は免れたい。
「この場合の最悪って、どこまでのことだろうな」
最近ため息ばっかりだ。
昨日のやり直しめいたことがなきゃ、彼女の耳裏にキスをした後、そのまま助手席を倒して。
「最後までとはいかずとも、服の上からあいつの……」
自分が意識していないところで触れて、書き直して、違う展開にして。
ってやったはずなのに、この手のひらに残っている気がして朝から頭の中がふしだらだ。
胸だけだったとはいえ、あいつの体に触れた。
展開が変わったはずなのに、あいつの口からもれた…女のアノ声。
どこか照れが混じった、決して普段聞くことがないはずの声。声っていうか、吐息?
それが耳について、離れない。
「……………………デカかったな」
手のひらに収まらなかった。
手のひらにも、その感触が残ってる。
「あぁ、もう」
もてあます歯がゆさに、頭を抱える。
たとえきっかけがどこぞの作者がよこした恋なんだとしても、俺があいつに対して好意を持っていることを消したいと思えない。
俺自身、もう…。
「好きになってんだろ」
最近増えたため息の理由は、あいつ一択。
それを不快に感じていない。
学校で自分がやらなきゃいけないことを順番に片していったとしても、サブリミナルみたいにあいつの顔や声や言葉が俺の中に必ず存在しつつある。
忘れないでと言われているような、自分に気づいてほしがっているような。
ノイズっぽい感覚もある。
今自分が置かれている状態が小説の中ってわかっていなきゃ、自分の中で何が起きているのかわからなくて、混乱してどう動いていいのかわからなくなっていただろう。
誰かに相談したかもしれない。
同期の保険医に聞いたかもしれないな。
俺の体がなんか変とか口走った可能性がある。
それをきっと笑われて終わっていたかも。
「そういや」
俺以外にも、この世界が二次小説って言われている場所だって知ってるのかな。
知ってて、自分が望む方にどうにかしようとするんだろうか。
とはいえ、異常なことではあるから、聞きまわるわけにもいかない。
「……それは、さておき」
やっぱり学校に行きたくない。
「会ったら、どんな顔してりゃいいんだ」
なんてボヤきつつ、タバコに手を伸ばした時だ。
「う…あっ」
目の前の景色が歪んだ。
見覚えのある景色。
(またかよ)
抗えなかった、今回も。
「先生ぇー、おはよ」
俺は学校の門のそばに立っていて。
「センセ、寝不足? 俺らより歳なんだから、無理すんなよ?」
「それな!」
「あっはははは」
見慣れたバスケ部のやつらに、からかわれていた。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
ホリカヨは俺様上司を癒したい!
森永 陽月
恋愛
堀井嘉与子(ホリイカヨコ)は、普段は『大奥』でオハシタとして働く冴えないOLだが、副業では自分のコンプレックスを生かして働こうとしていた。
そこにやってきたのは、憧れの郡司透吏部長。
『郡司部長、私はあなたを癒したいです』
※他の投稿サイトにも載せています。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
トップシークレット☆桐島編 ~お嬢さま会長に恋した新米秘書~
日暮ミミ♪
恋愛
大財閥〈篠沢(しのざわ)グループ〉本社・篠沢商事に勤める25歳の桐島貢(きりしまみつぐ)。
彼は秋のある夜、上司の代理で出席した会社のパーティーで、会長令嬢で高校2年生の篠沢絢乃(しのざわあやの)に一目惚れ。
その三ヶ月後、会長・篠沢源一が末期ガンでこの世を去る。
葬儀の日、父の遺言により会長の後継者となった絢乃を支えるべく、秘書室へ転属する旨を彼女に伝える。
絢乃は無事、会長に就任。会長付秘書として働くことになった貢はある日、会社帰りの愛車の中で絢乃に衝動的にキスをしてしまい――!?
草食系男子の年上秘書×キュートな10代の大企業総帥による、年の差オフィスラブストーリーのヒーローサイド。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。

貴族の爵位って面倒ね。
しゃーりん
恋愛
ホリーは公爵令嬢だった母と男爵令息だった父との間に生まれた男爵令嬢。
両親はとても仲が良くて弟も可愛くて、とても幸せだった。
だけど、母の運命を変えた学園に入学する歳になって……
覚悟してたけど、男爵令嬢って私だけじゃないのにどうして?
理不尽な嫌がらせに助けてくれる人もいないの?
ホリーが嫌がらせされる原因は母の元婚約者の息子の指示で…
嫌がらせがきっかけで自国の貴族との縁が難しくなったホリーが隣国の貴族と幸せになるお話です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる