21 / 82
必ず捕まえる
3
しおりを挟む イベント終了十五分前にアナウンスが流れ始め、出展者たちはそれぞれ撤収にかかりだした。慧一は後片付けをする二人にくれぐれも逃亡しないよう念を押してから、一旦会場の外に出た。
男性用トイレで用を足しながら何となくほっとしている。女ばかりの環境にいると、男要素が恋しくなるものだ。
慧一は手を洗いつつ、鏡に映る自分をしげしげと眺めた。
「王子様……か」
慧一は赤ん坊の頃から色白だった。それも、産湯につかったその時から既に白く、赤ん坊という感じではなかったらしい。
女性の看護師に取り囲まれ、かわいがられていたと両親から聞いた。その頃からすでにモテモテだったわけだ。
慧一には弟が一人いる。野武士のような風貌で、いかにも男くさいスポーツマンタイプである。同じ兄弟でありながら、こうまで違うのも珍しいと、周囲に言われ続けている。
中身に関しても、兄は軟派で弟は硬派。
弟は一途な恋をして、既にその女性と家庭を持っている。
結婚式での仲睦まじい姿を見て、慧一はらしくもなく羨ましい気持ちになった。そんな恋人が欲しいと、ぼんやりと憧れた。
誰にも言わない、彼の心情だ。
幼稚園に小中高、そして大学と、彼は周りの女から崇拝とも取れる眼差しを注がれてきた。皆、勘違いしていると分かったのは、女を知った頃。
滝口慧一は清廉な紳士で、それこそ王子様のように女性を扱うのだろう。そんなふうに彼女らは思い込んでいる――
女のように美しい肌と、優しく見える目元が、そう思わせるらしいのだ。
だが、慧一と付き合い、彼という人間を初めて目の当たりにした女達は揃ってがっかりし、終いには離れていった。
(俺は泥臭い人間で、どちらかというと下品かもしれない。思ったことはストレートに表現するし、相手に自惚れる暇を与えない。俺が王子様? 悪寒がするよ)
慧一は、峰子は少しばかり違うと思った。
『モース』に登場するケイは、もちろんそのまんまではないが、ある程度自分の本質を突いていると思う。
その辺りを聞きたい。今夜、必ず聞きたいのだ。
慧一は鏡の前で頬を一発張ると、会場へと戻った。
峰子を捕まえるために。
男性用トイレで用を足しながら何となくほっとしている。女ばかりの環境にいると、男要素が恋しくなるものだ。
慧一は手を洗いつつ、鏡に映る自分をしげしげと眺めた。
「王子様……か」
慧一は赤ん坊の頃から色白だった。それも、産湯につかったその時から既に白く、赤ん坊という感じではなかったらしい。
女性の看護師に取り囲まれ、かわいがられていたと両親から聞いた。その頃からすでにモテモテだったわけだ。
慧一には弟が一人いる。野武士のような風貌で、いかにも男くさいスポーツマンタイプである。同じ兄弟でありながら、こうまで違うのも珍しいと、周囲に言われ続けている。
中身に関しても、兄は軟派で弟は硬派。
弟は一途な恋をして、既にその女性と家庭を持っている。
結婚式での仲睦まじい姿を見て、慧一はらしくもなく羨ましい気持ちになった。そんな恋人が欲しいと、ぼんやりと憧れた。
誰にも言わない、彼の心情だ。
幼稚園に小中高、そして大学と、彼は周りの女から崇拝とも取れる眼差しを注がれてきた。皆、勘違いしていると分かったのは、女を知った頃。
滝口慧一は清廉な紳士で、それこそ王子様のように女性を扱うのだろう。そんなふうに彼女らは思い込んでいる――
女のように美しい肌と、優しく見える目元が、そう思わせるらしいのだ。
だが、慧一と付き合い、彼という人間を初めて目の当たりにした女達は揃ってがっかりし、終いには離れていった。
(俺は泥臭い人間で、どちらかというと下品かもしれない。思ったことはストレートに表現するし、相手に自惚れる暇を与えない。俺が王子様? 悪寒がするよ)
慧一は、峰子は少しばかり違うと思った。
『モース』に登場するケイは、もちろんそのまんまではないが、ある程度自分の本質を突いていると思う。
その辺りを聞きたい。今夜、必ず聞きたいのだ。
慧一は鏡の前で頬を一発張ると、会場へと戻った。
峰子を捕まえるために。
10
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ホリカヨは俺様上司を癒したい!
森永 陽月
恋愛
堀井嘉与子(ホリイカヨコ)は、普段は『大奥』でオハシタとして働く冴えないOLだが、副業では自分のコンプレックスを生かして働こうとしていた。
そこにやってきたのは、憧れの郡司透吏部長。
『郡司部長、私はあなたを癒したいです』
※他の投稿サイトにも載せています。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
カモフラ婚~CEOは溺愛したくてたまらない!~
伊吹美香
恋愛
ウエディングプランナーとして働く菱崎由華
結婚式当日に花嫁に逃げられた建築会社CEOの月城蒼空
幼馴染の二人が偶然再会し、花嫁に逃げられた蒼空のメンツのために、カモフラージュ婚をしてしまう二人。
割り切った結婚かと思いきや、小さいころからずっと由華のことを想っていた蒼空が、このチャンスを逃すはずがない。
思いっきり溺愛する蒼空に、由華は翻弄されまくりでパニック。
二人の結婚生活は一体どうなる?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる