3 / 82
ヘンタイ同人誌
2
しおりを挟む
「え~と、何々……シンは情熱的なケイの攻め立てにあえぎ、ベッドの上で激しく体を反らせた。ケイは、どうだ、気持ちいいだろう。俺の○○○は……」
「こらーッ! 音読するなバカモン」
慧一よりよほど大きな声で真介が怒鳴ったので、周囲の客が一斉に注目してきた。悪目立ちした真介は赤面し、恨めしげに慧一を睨む。
「官能小説か。ははあ、お前、こんなものに驚いてるの?」
真介は、必死にかぶりを振っている。
「おかしなもの読まないでちょうだいよ慧一クン、店の品位が下がるじゃない」
カフェオレを運んできたバイトのおばちゃんが愉快そうに笑った。
「ハハハ、今度は古典文学でも朗読しようかな」
慧一も笑って冗談口を合わせる。
「それにしても、さっきのチラッと聞いたけど可笑しいの。シンとケイって、あなた達と一緒じゃない」
おばちゃんの言葉に、慧一は目を見開く。
「そういえばそうだな。シンとケイ? 気色悪いなあ、オイ」
苦笑する慧一に、真介は真面目な眼差しを向けている。
「これ、どこで拾ったんだ」
おばちゃんが立ち去ってから、慧一は真顔になって訊いた。
「休憩室。テーブルの下の棚に、茶封筒に入った状態であった」
「休憩室? 自販機の部屋か」
「ああ。誰かの忘れ物かと思って中を確かめたんだ。そしたら、その文章に挿絵が……挿絵も見てみろよ」
慧一は改めてページをめくった。
挿絵が見開きを使って描かれている場所を見つけ、じっと見つめる。
「あっ」
と、思わず声が出た。
それは男と男がベッドの上で、どう見ても性交している場面だった。
下に組み敷かれた男の顔は、目の前にいる真介そのもの。そして、上に乗ってイってしまっている男の顔は、慧一そっくりだ。
「すっげえ、間抜け面……」
漫画タッチだが、実にありありと、ここで向き合って座る男二人そのままが、繊細なタッチで描かれている。
「俺達をネタに変な小説を書いてるやつが、あの工場にいるんだよ」
声をひそめて言う真介に慧一は応えず、さらに挿絵に見入った。
「変だな……」
やがて慧一は、ぼそっと呟く。
「ああ、変な小説だよ。ヘンタイだよ」
真介は額に手をやり、悩ましげに頭を左右に振った。
「いや、お前これさ、変だろ。男同士なのに何で正常位なんだ。こういうのもアリなのか?」
真介ははっと顔を上げ、やがて真っ赤になって、慧一の手から同人誌を引っ手繰った。慧一はそんな彼に構わず頭の後ろで手を組むと、椅子にもたれて悠々と天井を仰ぐ。
今朝の眼鏡の女の子――
彼女の深刻そうな顔を目に浮かべ、思わず知らずほくそ笑んでいた。
「こらーッ! 音読するなバカモン」
慧一よりよほど大きな声で真介が怒鳴ったので、周囲の客が一斉に注目してきた。悪目立ちした真介は赤面し、恨めしげに慧一を睨む。
「官能小説か。ははあ、お前、こんなものに驚いてるの?」
真介は、必死にかぶりを振っている。
「おかしなもの読まないでちょうだいよ慧一クン、店の品位が下がるじゃない」
カフェオレを運んできたバイトのおばちゃんが愉快そうに笑った。
「ハハハ、今度は古典文学でも朗読しようかな」
慧一も笑って冗談口を合わせる。
「それにしても、さっきのチラッと聞いたけど可笑しいの。シンとケイって、あなた達と一緒じゃない」
おばちゃんの言葉に、慧一は目を見開く。
「そういえばそうだな。シンとケイ? 気色悪いなあ、オイ」
苦笑する慧一に、真介は真面目な眼差しを向けている。
「これ、どこで拾ったんだ」
おばちゃんが立ち去ってから、慧一は真顔になって訊いた。
「休憩室。テーブルの下の棚に、茶封筒に入った状態であった」
「休憩室? 自販機の部屋か」
「ああ。誰かの忘れ物かと思って中を確かめたんだ。そしたら、その文章に挿絵が……挿絵も見てみろよ」
慧一は改めてページをめくった。
挿絵が見開きを使って描かれている場所を見つけ、じっと見つめる。
「あっ」
と、思わず声が出た。
それは男と男がベッドの上で、どう見ても性交している場面だった。
下に組み敷かれた男の顔は、目の前にいる真介そのもの。そして、上に乗ってイってしまっている男の顔は、慧一そっくりだ。
「すっげえ、間抜け面……」
漫画タッチだが、実にありありと、ここで向き合って座る男二人そのままが、繊細なタッチで描かれている。
「俺達をネタに変な小説を書いてるやつが、あの工場にいるんだよ」
声をひそめて言う真介に慧一は応えず、さらに挿絵に見入った。
「変だな……」
やがて慧一は、ぼそっと呟く。
「ああ、変な小説だよ。ヘンタイだよ」
真介は額に手をやり、悩ましげに頭を左右に振った。
「いや、お前これさ、変だろ。男同士なのに何で正常位なんだ。こういうのもアリなのか?」
真介ははっと顔を上げ、やがて真っ赤になって、慧一の手から同人誌を引っ手繰った。慧一はそんな彼に構わず頭の後ろで手を組むと、椅子にもたれて悠々と天井を仰ぐ。
今朝の眼鏡の女の子――
彼女の深刻そうな顔を目に浮かべ、思わず知らずほくそ笑んでいた。
10
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~
エール
ファンタジー
古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。
彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。
経営者は若い美人姉妹。
妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。
そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。
最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。
夕陽を映すあなたの瞳
葉月 まい
恋愛
恋愛に興味のないサバサバ女の 心
バリバリの商社マンで優等生タイプの 昴
そんな二人が、
高校の同窓会の幹事をすることに…
意思疎通は上手くいくのか?
ちゃんと幹事は出来るのか?
まさか、恋に発展なんて…
しないですよね?…あれ?
思わぬ二人の恋の行方は??
*✻:::✻*✻:::✻* *✻:::✻*✻:::✻* *✻:::✻*✻:::✻
高校の同窓会の幹事をすることになった
心と昴。
8年ぶりに再会し、準備を進めるうちに
いつしか二人は距離を縮めていく…。
高校時代は
決して交わることのなかった二人。
ぎこちなく、でも少しずつ
お互いを想い始め…
☆*:.。. 登場人物 .。.:*☆
久住 心 (26歳)… 水族館の飼育員
Kuzumi Kokoro
伊吹 昴 (26歳)… 海外を飛び回る商社マン
Ibuki Subaru
10 sweet wedding
国樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる