2 / 82
ヘンタイ同人誌
1
しおりを挟む矢を手に取って走る。矢を刺す場所は背中だ。もちろん普通にしてたら刺さらない。普通ならな。
「ありがとう笠松……お前のおかげで弱点はわかった」
化け物が俺に気づいた。残っている右腕で俺を追撃しようとハサミを振り上げた。
俺はスライディングをしてハーデストの股の間をすり抜けた。それと同時にハーデストのハサミが地面を叩き砕いた。体を捻ってハーデストの方に向く。
握りしめていた矢を下から差し込むようにして刺した。思った通りに矢は突き刺さり、ハーデストの肉の奥にくい込んだ。
「え!?刺さった!?」
マヤが驚いている。なんで刺さったのかわかっていないのだろう。まだ確定してはなかったから言わなかったが今ので確信に変わった。教えてあげないとな。
「こいつはカニのように見えるが本質はアルマジロみたいなものだ。アルマジロの装甲が全身にあるって思った方がいい」
「……それは分かったけどなんで刺せたの?尚更無理じゃない?」
「ミツオビアルマジロって丸くなるために隙間があるんだ。でもただ普通に隙間があるだけだと外敵から狙われた時にそこをやられてしまうだろ?」
「うん。それで?」
「写真で見た方が分かりやすいがあの甲羅って、上にちょっとずつずらして置いている紙のようにできてるんだよ。それで丸くなれば隙間は無くなる」
「逆に言えば丸まらなければ隙間がある?」
「そういうことだ。ましてやアルマジロより何倍も大きいこいつなら隙間が大きいはずだ。そして刺さった」
膝の裏に関しては恐らく足が曲げられるギリギリの所まで甲羅がついていたのだろう。腕は笠松が力を抜いた時にたまたま滑って切り落とせたんだ。たまたまとはいえ笠松の死は無駄じゃなかった。
「弱点が分かれば戦えるぞ……逆襲の時だ……」
矢を1本握りしめる。右目は見えないため弓は撃てない。近接戦しか俺はできない。死なない覚悟はできてる。桃を助けるまではまだ死ねないぞ。
「俺が多少時間を稼ぐ。ワイトとマギーの応急処置を頼んだよ」
「……わかった」
マヤが2人の元に走っていった。これでいい。できれば死人は少ない方がいいからな。1対1か。いつも通りだな。
ハーデストに向かって走った。ハーデストはまた追撃しようとハサミを左側に伸ばして力を溜めている。
ハーデストが横凪にハサミを振った瞬間に体を縮こめて地面に落ちる。髪の毛のてっぺんが切れた。
そのまま体を持ち上げると同時に矢をハーデストの膝に下から矢を突き刺した。やはり近接戦だと俺の方が強いんだ。
もう一本矢を取り出す。さっきのお返しだ。矢をハーデストの目に突き刺した。緑色の血がドバっと出てきた。まるでB級映画みたいだ。
突然腹に衝撃が走った。後ろに体が飛ばされる。柱に背中がぶつかった。口から唾液が反射的に出てくる。内蔵の位置がズレた気分だ。ハーデストの方を向くと、膝を前に上げていた。俺の腹に膝蹴りをしたのか。膝の全面は硬い甲羅だから威力は当たり前のように高いということか。
「ガルルルルァァ!!」
横からヒルが出てきた。鉄の破片を咥えてハーデストに走っていった。
「お前、なんかいないと思ったらそれ取ってきてたのか!」
ヒルがハーデストの切れた腕の断面に鉄の破片を突き刺した。破片はかなり尖っていて硬そうだ。
ハーデストがヒルを睨みつけた。ヒルも負けじと威嚇する。
「グルルルルルル……」
どっちも俺の事を無視してんな。チャンスではあるがなんか悔しい。
矢を新たに握りしめて、ハーデストの後ろに回りこむ。狙うは首元。こいつに頸動脈があるかはわからんがダメージはでかいだろう。今はヒルに注意が行ってる。やるなら今だ。
矢を首に差し込んだ。中の肉は柔らかいのかかなり奥まで刺さった。
「ガシュ……」
ハーデストがようやく声を出した。やっと生物らしさを出したな。つまりそこまで追い詰めているということだ。
ハーデストから距離をとった。ヒットアンドアウェイ戦法を使えばこいつは倒せそうだ。最初はこいつやべぇって思ってたが結構楽そうだな。
「行くぞヒル!」
「ワン!!」
笠松の恨みだ。さっさと地獄に行ってもらうぞ。
ハーデストがなぜかハサミを後ろに下げた。……どうゆう事だ。走ろうとした足を止める。なんで後ろに下げた。ハーデストの腕がミシミシという音をたてている。嫌な予感がする。俺の野生の勘が言っている。
「ヒル!逃げろ!こいつ何かしてくるぞ!」
走り出そうとしたヒルを怒鳴りつけて足を止めさせる。ヒルも何かに気がついたのかハーデストと距離をとった。俺も距離を取らないと。
バックステップをしたその瞬間だった。ハーデストがまるでボクシングでのストレートをするかのように腕を伸ばした。溜めていた力を解放したようだ。距離は約10mは離れている。ハーデストの腕はせいぜい2mぐらいだ。まず当たるはずがない。そうだ、普通は当たるはずがないんだ。
しかし俺の目に映ってきたのは目の前にまで来たハサミであった。ハーデストの足は遅い。近接戦闘は速いが足は遅いはずなのだ。だから俺が瞬きをした一瞬で移動するなんてできるはずはない。
なのになぜかハーデストのハサミが俺の胴体を切ろうと至近距離にまで迫っていたのだ。
あぁやばい。これ死んだわ。俺はゆっくりと流れゆく時間の中でそう思った。
「楓夜!!」
体に衝撃が走った。重力が横に向いたかのように吹き飛ばされる。意識の時間が戻り地面に転けた。
横を見ると手を前に出したマヤがいた。俺が居た場所だ。ハサミは俺でなくマヤを切ろうとしている。助けようと体を起こすがもう遅かった。
「マヤ!!」
俺がそう叫んだ瞬間、顔に血飛沫がかかった。赤い血だ。俺の血と同じ色だ。人間の血だから当たり前か。
目の前にはマヤの首が胴体と離れている姿が見えた。切れた首からはシャワーのように血が溢れている。頭が無くなったマヤの胴体は地面に崩れ落ちた。
ハーデストの腕はゴムのように伸びており、さっきの位置から10mは離れていたマヤの首を切り落としたのだ。
「……ハーデスト!!!!!!」
俺はハーデストに向かって怒りをあらわにした叫びを放った。
続く
「ありがとう笠松……お前のおかげで弱点はわかった」
化け物が俺に気づいた。残っている右腕で俺を追撃しようとハサミを振り上げた。
俺はスライディングをしてハーデストの股の間をすり抜けた。それと同時にハーデストのハサミが地面を叩き砕いた。体を捻ってハーデストの方に向く。
握りしめていた矢を下から差し込むようにして刺した。思った通りに矢は突き刺さり、ハーデストの肉の奥にくい込んだ。
「え!?刺さった!?」
マヤが驚いている。なんで刺さったのかわかっていないのだろう。まだ確定してはなかったから言わなかったが今ので確信に変わった。教えてあげないとな。
「こいつはカニのように見えるが本質はアルマジロみたいなものだ。アルマジロの装甲が全身にあるって思った方がいい」
「……それは分かったけどなんで刺せたの?尚更無理じゃない?」
「ミツオビアルマジロって丸くなるために隙間があるんだ。でもただ普通に隙間があるだけだと外敵から狙われた時にそこをやられてしまうだろ?」
「うん。それで?」
「写真で見た方が分かりやすいがあの甲羅って、上にちょっとずつずらして置いている紙のようにできてるんだよ。それで丸くなれば隙間は無くなる」
「逆に言えば丸まらなければ隙間がある?」
「そういうことだ。ましてやアルマジロより何倍も大きいこいつなら隙間が大きいはずだ。そして刺さった」
膝の裏に関しては恐らく足が曲げられるギリギリの所まで甲羅がついていたのだろう。腕は笠松が力を抜いた時にたまたま滑って切り落とせたんだ。たまたまとはいえ笠松の死は無駄じゃなかった。
「弱点が分かれば戦えるぞ……逆襲の時だ……」
矢を1本握りしめる。右目は見えないため弓は撃てない。近接戦しか俺はできない。死なない覚悟はできてる。桃を助けるまではまだ死ねないぞ。
「俺が多少時間を稼ぐ。ワイトとマギーの応急処置を頼んだよ」
「……わかった」
マヤが2人の元に走っていった。これでいい。できれば死人は少ない方がいいからな。1対1か。いつも通りだな。
ハーデストに向かって走った。ハーデストはまた追撃しようとハサミを左側に伸ばして力を溜めている。
ハーデストが横凪にハサミを振った瞬間に体を縮こめて地面に落ちる。髪の毛のてっぺんが切れた。
そのまま体を持ち上げると同時に矢をハーデストの膝に下から矢を突き刺した。やはり近接戦だと俺の方が強いんだ。
もう一本矢を取り出す。さっきのお返しだ。矢をハーデストの目に突き刺した。緑色の血がドバっと出てきた。まるでB級映画みたいだ。
突然腹に衝撃が走った。後ろに体が飛ばされる。柱に背中がぶつかった。口から唾液が反射的に出てくる。内蔵の位置がズレた気分だ。ハーデストの方を向くと、膝を前に上げていた。俺の腹に膝蹴りをしたのか。膝の全面は硬い甲羅だから威力は当たり前のように高いということか。
「ガルルルルァァ!!」
横からヒルが出てきた。鉄の破片を咥えてハーデストに走っていった。
「お前、なんかいないと思ったらそれ取ってきてたのか!」
ヒルがハーデストの切れた腕の断面に鉄の破片を突き刺した。破片はかなり尖っていて硬そうだ。
ハーデストがヒルを睨みつけた。ヒルも負けじと威嚇する。
「グルルルルルル……」
どっちも俺の事を無視してんな。チャンスではあるがなんか悔しい。
矢を新たに握りしめて、ハーデストの後ろに回りこむ。狙うは首元。こいつに頸動脈があるかはわからんがダメージはでかいだろう。今はヒルに注意が行ってる。やるなら今だ。
矢を首に差し込んだ。中の肉は柔らかいのかかなり奥まで刺さった。
「ガシュ……」
ハーデストがようやく声を出した。やっと生物らしさを出したな。つまりそこまで追い詰めているということだ。
ハーデストから距離をとった。ヒットアンドアウェイ戦法を使えばこいつは倒せそうだ。最初はこいつやべぇって思ってたが結構楽そうだな。
「行くぞヒル!」
「ワン!!」
笠松の恨みだ。さっさと地獄に行ってもらうぞ。
ハーデストがなぜかハサミを後ろに下げた。……どうゆう事だ。走ろうとした足を止める。なんで後ろに下げた。ハーデストの腕がミシミシという音をたてている。嫌な予感がする。俺の野生の勘が言っている。
「ヒル!逃げろ!こいつ何かしてくるぞ!」
走り出そうとしたヒルを怒鳴りつけて足を止めさせる。ヒルも何かに気がついたのかハーデストと距離をとった。俺も距離を取らないと。
バックステップをしたその瞬間だった。ハーデストがまるでボクシングでのストレートをするかのように腕を伸ばした。溜めていた力を解放したようだ。距離は約10mは離れている。ハーデストの腕はせいぜい2mぐらいだ。まず当たるはずがない。そうだ、普通は当たるはずがないんだ。
しかし俺の目に映ってきたのは目の前にまで来たハサミであった。ハーデストの足は遅い。近接戦闘は速いが足は遅いはずなのだ。だから俺が瞬きをした一瞬で移動するなんてできるはずはない。
なのになぜかハーデストのハサミが俺の胴体を切ろうと至近距離にまで迫っていたのだ。
あぁやばい。これ死んだわ。俺はゆっくりと流れゆく時間の中でそう思った。
「楓夜!!」
体に衝撃が走った。重力が横に向いたかのように吹き飛ばされる。意識の時間が戻り地面に転けた。
横を見ると手を前に出したマヤがいた。俺が居た場所だ。ハサミは俺でなくマヤを切ろうとしている。助けようと体を起こすがもう遅かった。
「マヤ!!」
俺がそう叫んだ瞬間、顔に血飛沫がかかった。赤い血だ。俺の血と同じ色だ。人間の血だから当たり前か。
目の前にはマヤの首が胴体と離れている姿が見えた。切れた首からはシャワーのように血が溢れている。頭が無くなったマヤの胴体は地面に崩れ落ちた。
ハーデストの腕はゴムのように伸びており、さっきの位置から10mは離れていたマヤの首を切り落としたのだ。
「……ハーデスト!!!!!!」
俺はハーデストに向かって怒りをあらわにした叫びを放った。
続く
10
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~
エール
ファンタジー
古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。
彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。
経営者は若い美人姉妹。
妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。
そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。
最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。
夕陽を映すあなたの瞳
葉月 まい
恋愛
恋愛に興味のないサバサバ女の 心
バリバリの商社マンで優等生タイプの 昴
そんな二人が、
高校の同窓会の幹事をすることに…
意思疎通は上手くいくのか?
ちゃんと幹事は出来るのか?
まさか、恋に発展なんて…
しないですよね?…あれ?
思わぬ二人の恋の行方は??
*✻:::✻*✻:::✻* *✻:::✻*✻:::✻* *✻:::✻*✻:::✻
高校の同窓会の幹事をすることになった
心と昴。
8年ぶりに再会し、準備を進めるうちに
いつしか二人は距離を縮めていく…。
高校時代は
決して交わることのなかった二人。
ぎこちなく、でも少しずつ
お互いを想い始め…
☆*:.。. 登場人物 .。.:*☆
久住 心 (26歳)… 水族館の飼育員
Kuzumi Kokoro
伊吹 昴 (26歳)… 海外を飛び回る商社マン
Ibuki Subaru
10 sweet wedding
国樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。

秘密の恋
美希みなみ
恋愛
番外編更新はじめました(*ノωノ)
笠井瑞穂 25歳 東洋不動産 社長秘書
高倉由幸 31歳 東洋不動産 代表取締役社長
一途に由幸に思いをよせる、どこにでもいそうなOL瑞穂。
瑞穂は諦めるための最後の賭けに出た。
思いが届かなくても一度だけ…。
これで、あなたを諦めるから……。
短編ショートストーリーです。
番外編で由幸のお話を追加予定です。

Catch hold of your Love
天野斜己
恋愛
入社してからずっと片思いしていた男性(ひと)には、彼にお似合いの婚約者がいらっしゃる。あたしもそろそろ不毛な片思いから卒業して、親戚のオバサマの勧めるお見合いなんぞしてみようかな、うん、そうしよう。
決心して、お見合いに臨もうとしていた矢先。
当の上司から、よりにもよって職場で押し倒された。
なぜだ!?
あの美しいオジョーサマは、どーするの!?
※2016年01月08日 完結済。

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる