一億円の花嫁

藤谷 郁

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14歳の頃

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 智大は俺がほぼ脱がせた下着や寝間着を着直していて、ベッドの上に座ってる。

「智大」
「ちーちゃん」

 頬は上気したままなのに、口はへの字だし腕を胸の前で組んでるし。

「けい君。お粥、ありがとう。あと、これ、お薬?」
「え?あ、ああ、そう。解熱薬だから、お粥食べたら飲んでほしいと思って」
「わかった。じゃあ、食べたら飲むね?」
「うん、そうして」
「でも、けい君。まさとのことは無理やりじゃないんだから、責めたりしないで」
「ちーちゃん、そう言うけど」
「そりゃ……、恥ずかしいって言ってるのにやめてくれなかったのはまさだけど……、………でも、えと……、まさに触ってもらえるの、嬉しいし……」

 熱のせいじゃなく顔を真っ赤にさせてしどろもどろに話す智大が可愛すぎる。
 啓さんはわざとらしく溜息をつくと、智大の頭を撫でた。

「わかったから…ちーちゃん。これ以上は征人のこと怒らないから」
「うん。ありがとうけい君」
「……じゃあ、俺戻るから。卵粥、征人に食べさせてもらいな」
「うん………うん?」
「征人の分もあるから。征人、今度熱出てるちーちゃんに手を出したら家から叩き出すからな」
「はい!!」

 啓さん怖いわ。
 そんだけ智大のこと大事にしてるんだな、ってわかるけど。

「智大……ごめん」

 智大の隣に座って、華奢な肩を抱き寄せたら、智大は抵抗もせず俺に身体を預けてくれた。

「……まさ」
「うん」
「……好き」
「俺も好きだよ」

 ちょっと智大を覗き込んだら、顔真っ赤にさせてて、でも、幸せそうに口元が笑うのをこらえているような変な顔になってて。
 もうほんと、めっちゃかわいい。
 じっと見てたら、おずおずと俺を見上げてきて、その表情に心臓射抜かれた。

「まさ」

 俺を呼ぶ赤い唇が色っぽい。

「熱下がったら……続き、して……?」
「はぅ」

 ……また、心臓射抜かれた。
 やばい。こいつ、ほんとやばい…!

「絶対、する」

 と言うより、俺の下半身、すっかり元気なんですけど。
 あんなに勃起しないと悩んでいたのに、この違い……。俺、駄目すぎんだろ。

「お粥、食べようか」
「うん」

 なんとか平常心を保とう。
 食べてる間に収まるはずだ。

 ベッドに座ったままだと高さが合わないから、ベッドを背もたれに床に座り直した。

「智大も来いよ」

 って言ったら、なんか困ったような顔をして、少し間を開けて頷いた。
 隣りに座ったらちょっとずつ食べさせてーとか思ってたのに、智大、隣じゃなくて、俺の足の上にちょこんと座ったもんだから…そりゃ盛大に凍りついた。

「…重くない?」
「……っ、!?、あ、え!?いや、全然!?むしろ、かるすぎるから……っ」

 動揺がもろ言葉に出た。
 なんで智大、そこに座るのー!?
 俺の太ももに智大の尻が当たってる。柔らかい。あったかい。
 じっと俺を見上げてくる智大の目もやばいから…!そんなん見せられたら、落ち着くはずだった息子も落ち着くわけ無いだろう…!!
 唯一よかったのは、智大がちゃんと寝間着を着込んでたことかな。下手にボタンが外れてたりしたら、可愛い乳首が見えて、速攻襲いかかってた思うからさ!!

「まさ…?」
「え、な、に!?」
「……やっぱり、離れたほうがいい…?」

 ちょっと泣きそうに目を伏せられたら、焦るし、全否定しちゃうよね!!

「そんなことない、ないからそこに座ってて!!!」

 そしたら、ぱぁぁぁって音が付きそうなくらい笑顔を向けてくれた。
 あー………花まで飛んでるように見える。俺、末期かもしれない。

「ほ、ら。食べよう。口開けて」
「ん」

 気を取り直して、もうとにかく他のこと考えないように、何なら、数式やら古典やら覚えてること片っ端から頭の中で繰り返して唱えて、智大に向かう全神経を他のとこにそらした。
 ふぅふぅと冷ましたお粥を少しずつ食べさせれば、智大は美味しそうに表情をほころばせる。

「あ」

 智大は何か思い出したのか、横にずらしたテーブルにおいたお粥を一匙すくい取って、俺の前に出した。

「まさ、あーん、して?」
「………!!!」

 こてん、って。
 こてんって首かしげながらさぁ!!
 『あーん』って……!!!!
 転げ回りたくなりながら、口の中に入れた。
 ……熱い。けど、もう、何がなんだかわからなくて。
 数式も古典も化学式も、なんの意味もなく、どっかいった。
 俺の息子はもうはち切れそうになってるし。

「あ」

 何度かそんな食べさせ合いをしてから、智大は俺の息子に気づいたらしく。
 服の上からそっと撫でて顔を真っ赤にさせた。
 ……頼むから触らないで。暴発するから…!!

「まさ」
「気にしなくていいから」
「でも」
「ほら、もう少しで食べ終わるだろ」
「ん……」

 もぐもぐと口を動かして、でもなにか言いたげに俺を見る智大。
 喉がごくんと動いたとき、また、俺の息子に触れてきて。

「やっぱり舐める…よ?」

 ………そんなこと言うから。
 思わず想像してしまって。

「あ」
「~~~~っ」

 息子、耐えられず。
 盛大に、下着の中で暴発させてしまった。

「ちひろ」
「は、はぃっ」
「もー……、とにかくエロいこと言うのやめて……。するのもだめ。熱が下がんないうちに俺、絶対お前のこと襲う。……とりあえず、シャワーかりてくる……。昨日の俺の服、洗濯してくれたんだろ?」
「う、うん…」
「ん。したら、俺戻るまでに食べ終わって薬飲んでて。いい?」
「わ……わかりました……。……えと……、なんか、ごめんね………まさ………?」
「ぐ………っ」

 その顔はだめだ。
 そのかわいそうな子を見る顔はやめてくれ…!!
 羞恥にどうにかなりそうな自分をなんとか鼓舞し、智大を足の上からおろして、下着の気持ち悪さを感じながら風呂場に直行した。

 あ゛~~~~~!!!

 格好悪い!!
 物凄く格好悪い!!!!
 本人目の前にして、想像の中のフェラでイってしまうなんて……っ。

 もう、色々と。
 ほんと。
 駄目だ。





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