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カリスマ社長
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社長室は天井が高く、半吹き抜けの構造になっていた。
白い壁に、エスニック調のインテリア。来客用ソファセットも、革張りではなく、赤やピンクや黄色といった布地に覆われている。
天窓から落ちる自然光に照らされた部屋は、色彩もデザインもイメージが統一されていて、派手でありながら家庭的な落ち着きを感じさせた。
「趣味はいいわね。あの社長、大食漢でエスニック料理が好きで、性格も私にちょっと似てる気がするし……」
でも、恋愛や結婚の対象ではない。希美が求めるのは、ハイスペックでもなく、ガチマッチョでもなく、自分に似た人でもない。
気づかせてくれたのは、この世界でたった一人の男性。
「なんて、余計なことを考えてる場合じゃないわね。それより、社長が来たら言うべきことをおさらいしておこう。まず大切なのは、ノルテフーズの買収に関する約束事。これをしっかり確認してから、結婚の返事を……」
ソファに座らず、部屋の中を何となく歩き回る。
ふと、ローチェストに並べられた写真立てに目が留まった。どれも古く、昭和の日付もある。小さな工場や旧社屋など、グラットンの歴史をそのまま映し込む写真ばかりだった。
(え……?)
端から順に眺めていた希美は、途中で見覚えのある顔を見つけた。
二人の人物が映っている。
一人は南村壮太だ。ヘアスタイルが五分刈りで、今よりも10歳ほど若い。
そしてもう一人は学生服を着た高校生くらいの男子。
南村社長と親子にも見える親しげな様子で、微笑んでいる。
希美は目を見開き、食い入るようにその人物を見つめた。
見覚えがあるどころか、とてもよく知っている。一見地味で、どこにでもいそうな男子だが、意志の強そうな眉と、印象的な黒い瞳が一途な性格を表していた。
「まさか、そんな……どうして……彼がここに?」
背後でドアの開く音が聞こえた。
だけど、希美は写真の人物に釘付けになり、振り向くことができない。
ドアが閉まり、部屋に静寂が下りた。足音がゆっくりと近づいて来る。やがてそれは、希美のすぐ後ろで止まった。
「お待たせいたしました。北城希美さん」
驚きのあまり、息が止まりそうになる。
高校生だった彼が、写真の中からこちらを見つめ、優しく微笑んでいた。
「どうして、なぜ、あなたがここにいるの……」
信じられない思いのまま、後ろを振り返った。写真の彼よりも大人で、学生服ではなくスーツを纏った男性がそこにいる。
「どうして?」
震える唇で問う希美に、彼は低く落ち着いた声で答えた。
「株式会社グラットン社長の、南村壮二です。あなたを私の妻として、お迎えいたします」
白い壁に、エスニック調のインテリア。来客用ソファセットも、革張りではなく、赤やピンクや黄色といった布地に覆われている。
天窓から落ちる自然光に照らされた部屋は、色彩もデザインもイメージが統一されていて、派手でありながら家庭的な落ち着きを感じさせた。
「趣味はいいわね。あの社長、大食漢でエスニック料理が好きで、性格も私にちょっと似てる気がするし……」
でも、恋愛や結婚の対象ではない。希美が求めるのは、ハイスペックでもなく、ガチマッチョでもなく、自分に似た人でもない。
気づかせてくれたのは、この世界でたった一人の男性。
「なんて、余計なことを考えてる場合じゃないわね。それより、社長が来たら言うべきことをおさらいしておこう。まず大切なのは、ノルテフーズの買収に関する約束事。これをしっかり確認してから、結婚の返事を……」
ソファに座らず、部屋の中を何となく歩き回る。
ふと、ローチェストに並べられた写真立てに目が留まった。どれも古く、昭和の日付もある。小さな工場や旧社屋など、グラットンの歴史をそのまま映し込む写真ばかりだった。
(え……?)
端から順に眺めていた希美は、途中で見覚えのある顔を見つけた。
二人の人物が映っている。
一人は南村壮太だ。ヘアスタイルが五分刈りで、今よりも10歳ほど若い。
そしてもう一人は学生服を着た高校生くらいの男子。
南村社長と親子にも見える親しげな様子で、微笑んでいる。
希美は目を見開き、食い入るようにその人物を見つめた。
見覚えがあるどころか、とてもよく知っている。一見地味で、どこにでもいそうな男子だが、意志の強そうな眉と、印象的な黒い瞳が一途な性格を表していた。
「まさか、そんな……どうして……彼がここに?」
背後でドアの開く音が聞こえた。
だけど、希美は写真の人物に釘付けになり、振り向くことができない。
ドアが閉まり、部屋に静寂が下りた。足音がゆっくりと近づいて来る。やがてそれは、希美のすぐ後ろで止まった。
「お待たせいたしました。北城希美さん」
驚きのあまり、息が止まりそうになる。
高校生だった彼が、写真の中からこちらを見つめ、優しく微笑んでいた。
「どうして、なぜ、あなたがここにいるの……」
信じられない思いのまま、後ろを振り返った。写真の彼よりも大人で、学生服ではなくスーツを纏った男性がそこにいる。
「どうして?」
震える唇で問う希美に、彼は低く落ち着いた声で答えた。
「株式会社グラットン社長の、南村壮二です。あなたを私の妻として、お迎えいたします」
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