57 / 179
イケメンハイスペック親子
2
しおりを挟む
(オマケ程度の昼食会って言ったのは誰よ。ったく、いいかげんなんだから)
どうやら利希はプランを変更したらしい。
社長として、父として、このまま負けるわけにはいかない。壮二を食事会に参加させて、一つでも失敗すれば、それを理由に追い返すつもりだ。
しかし希美にも考えがあった。
この状況は一見ピンチだが、実はチャンスでもある。昼食会を無事に乗り切れば父の負け。それを契機に、強引に結婚話を進めてしまえばいい。
「あの、ところで希美さん」
「何?」
壮二がこっそり訊ねてきた。
「結局、社長に腹巻きを渡せなかったですね。お腹を壊してるのに、このまま食事をしても大丈夫でしょうか」
「あ、ああ。それは……」
そんなこと、すっかり忘れていた。希美は笑顔を作りつつ、ひらひらと手を振る。
「社長の顔色もいいし、もう治ったんじゃないかな。うん、大丈夫よ」
「はあ。それならいいんですが」
自分を陥れようとする人間を、本気で心配している。
どこまでお人好しなのと説教したいが、今はそんな場合ではない。
腹巻きから話題を逸らすため、海山商事との資本提携について説明することにした。今はこちらが重要事項である。
「……つまり、ノルテフーズと海山商事は資本交換することで、業務上の不足部分を補い合えるわけ」
「互いの得意分野を提供するんですね?」
「そう。海山商事は冷蔵事業を、ノルテは地方への販売事業を強化できる。交換比率はもちろん1対1よ。海山商事は大きな会社だけど、対等な関係を維持するのが絶対条件なの。そうでなければ、取締役会を通らない」
今回の会合はノルテフーズが提案し、向こうの会社をもてなす形を取った。だが取引きはフィフティフィフティに行う。
そのためには、トップ同士が親しくなるのが一番というのが利希の考え方だ。
「大事な食事会なんですねえ」
壮二が言うと、利希がすかさず口を挿んだ。
「そうだぞ、南村。お前がヘマをして向こうを怒らせたら、この話はいっぺんにパアだからな。肝に銘じておけよ」
「はいっ、社長」
利希のわざとらしい脅しに、希美は肩を竦める。
ゴルフ接待で、既に先方とは打ち解けているのだろう。だからこそ公私混同ができるのだ。
「安心して、壮二。ちょっとくらいヘマしたって、私がカバーしてあげるから」
「ありがとうございます」
壮二が素直にホッとした。こういったところが彼の長所である。
「ほら、お喋りはやめろ。おいでなすったぞ」
廊下から足音が聞こえてきた。希美が腕時計を確かめると、約束の時間を5分過ぎている。
どうやら利希はプランを変更したらしい。
社長として、父として、このまま負けるわけにはいかない。壮二を食事会に参加させて、一つでも失敗すれば、それを理由に追い返すつもりだ。
しかし希美にも考えがあった。
この状況は一見ピンチだが、実はチャンスでもある。昼食会を無事に乗り切れば父の負け。それを契機に、強引に結婚話を進めてしまえばいい。
「あの、ところで希美さん」
「何?」
壮二がこっそり訊ねてきた。
「結局、社長に腹巻きを渡せなかったですね。お腹を壊してるのに、このまま食事をしても大丈夫でしょうか」
「あ、ああ。それは……」
そんなこと、すっかり忘れていた。希美は笑顔を作りつつ、ひらひらと手を振る。
「社長の顔色もいいし、もう治ったんじゃないかな。うん、大丈夫よ」
「はあ。それならいいんですが」
自分を陥れようとする人間を、本気で心配している。
どこまでお人好しなのと説教したいが、今はそんな場合ではない。
腹巻きから話題を逸らすため、海山商事との資本提携について説明することにした。今はこちらが重要事項である。
「……つまり、ノルテフーズと海山商事は資本交換することで、業務上の不足部分を補い合えるわけ」
「互いの得意分野を提供するんですね?」
「そう。海山商事は冷蔵事業を、ノルテは地方への販売事業を強化できる。交換比率はもちろん1対1よ。海山商事は大きな会社だけど、対等な関係を維持するのが絶対条件なの。そうでなければ、取締役会を通らない」
今回の会合はノルテフーズが提案し、向こうの会社をもてなす形を取った。だが取引きはフィフティフィフティに行う。
そのためには、トップ同士が親しくなるのが一番というのが利希の考え方だ。
「大事な食事会なんですねえ」
壮二が言うと、利希がすかさず口を挿んだ。
「そうだぞ、南村。お前がヘマをして向こうを怒らせたら、この話はいっぺんにパアだからな。肝に銘じておけよ」
「はいっ、社長」
利希のわざとらしい脅しに、希美は肩を竦める。
ゴルフ接待で、既に先方とは打ち解けているのだろう。だからこそ公私混同ができるのだ。
「安心して、壮二。ちょっとくらいヘマしたって、私がカバーしてあげるから」
「ありがとうございます」
壮二が素直にホッとした。こういったところが彼の長所である。
「ほら、お喋りはやめろ。おいでなすったぞ」
廊下から足音が聞こえてきた。希美が腕時計を確かめると、約束の時間を5分過ぎている。
0
お気に入りに追加
144
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
可愛い女性の作られ方
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
風邪をひいて倒れた日。
起きたらなぜか、七つ年下の部下が家に。
なんだかわからないまま看病され。
「優里。
おやすみなさい」
額に落ちた唇。
いったいどういうコトデスカー!?
篠崎優里
32歳
独身
3人編成の小さな班の班長さん
周囲から中身がおっさん、といわれる人
自分も女を捨てている
×
加久田貴尋
25歳
篠崎さんの部下
有能
仕事、できる
もしかして、ハンター……?
7つも年下のハンターに狙われ、どうなる!?
******
2014年に書いた作品を都合により、ほとんど手をつけずにアップしたものになります。
いろいろあれな部分も多いですが、目をつぶっていただけると嬉しいです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
恋煩いの幸せレシピ ~社長と秘密の恋始めます~
神原オホカミ【書籍発売中】
恋愛
会社に内緒でダブルワークをしている芽生は、アルバイト先の居酒屋で自身が勤める会社の社長に遭遇。
一般社員の顔なんて覚えていないはずと思っていたのが間違いで、気が付けば、クビの代わりに週末に家政婦の仕事をすることに!?
美味しいご飯と家族と仕事と夢。
能天気色気無し女子が、横暴な俺様社長と繰り広げる、お料理恋愛ラブコメ。
※注意※ 2020年執筆作品
◆表紙画像は簡単表紙メーカー様で作成しています。
◆無断転写や内容の模倣はご遠慮ください。
◆大変申し訳ありませんが不定期更新です。また、予告なく非公開にすることがあります。
◆文章をAI学習に使うことは絶対にしないでください。
◆カクヨムさん/エブリスタさん/なろうさんでも掲載してます。
【完結】maybe 恋の予感~イジワル上司の甘いご褒美~
蓮美ちま
恋愛
会社のなんでも屋さん。それが私の仕事。
なのに突然、企画部エースの補佐につくことになって……?!
アイドル顔負けのルックス
庶務課 蜂谷あすか(24)
×
社内人気NO.1のイケメンエリート
企画部エース 天野翔(31)
「会社のなんでも屋さんから、天野さん専属のなんでも屋さんってこと…?」
女子社員から妬まれるのは面倒。
イケメンには関わりたくないのに。
「お前は俺専属のなんでも屋だろ?」
イジワルで横柄な天野さんだけど、仕事は抜群に出来て人望もあって
人を思いやれる優しい人。
そんな彼に認められたいと思う反面、なかなか素直になれなくて…。
「私、…役に立ちました?」
それなら…もっと……。
「褒めて下さい」
もっともっと、彼に認められたい。
「もっと、褒めて下さ…っん!」
首の後ろを掬いあげられるように掴まれて
重ねた唇は煙草の匂いがした。
「なぁ。褒めて欲しい?」
それは甘いキスの誘惑…。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
うちの冷蔵庫がダンジョンになった
空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞
ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。
そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる