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オレ色に染めてやる
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「男女逆ならともかく、私にはちょっと考えられない。それに、手間がかかることは嫌いなのよ。知ってるでしょ」
『おや、男女逆でよろしいではないですか』
「はい?」
女がじろりと睨んでくる。希美はスマートフォンを握り直すと、ナチュラルメイクから目を逸らし反対側を向いた。
『希美お嬢様は、もともと"奥さん"を欲しているのではないですか。でしたら、男の立場であることに徹すればよいのです』
「……」
確かにそうだ。
デートに強引に誘って、プロポーズを受けてくれるよう彼を口説いた。
うぶなOLを口説くスケベ上司のように、南村をベッドに押し倒すつもりだったではないか。
理屈は通っている。
「なるほどね。でも、やっぱりめんどくさくない?」
なにしろ希美は肉食系で、がつがつしている。ちゃんとできるように童貞を導くなんて、かなりの根気と忍耐がいりそうだ。
『さようでござますか。ならば、いっそのこと私が南村さんに筆おろしをして差し上げ……』
「はっ? ちょ、なに言ってんの武子さん!」
希美は慌てて、スマートフォンを手で覆う。
ポーチに化粧道具を収めた女が怪訝な眼差しを向けてきたが、さっさと出ていってしまった。
希美は息をつくと、とりあえず筆おろしは断った。
どういうわけか、南村の処女……ならぬ童貞を他の女に譲る気にはならない。
「分かった。私がやるしかないのよね」
『うふふ……もちろんでございます。特別なテクニックなど不要。南村さんをモノにするという、意気込みさえあればよいのです』
「よし!」
私は男として、南村を抱く――
決意の拳を固めると、鏡を真っ直ぐに見つめた。自信に満ちた、いつもの希美がそこにいる。
「南村壮二。あなたを、オレ色に染めてあげるわ」
『おや、男女逆でよろしいではないですか』
「はい?」
女がじろりと睨んでくる。希美はスマートフォンを握り直すと、ナチュラルメイクから目を逸らし反対側を向いた。
『希美お嬢様は、もともと"奥さん"を欲しているのではないですか。でしたら、男の立場であることに徹すればよいのです』
「……」
確かにそうだ。
デートに強引に誘って、プロポーズを受けてくれるよう彼を口説いた。
うぶなOLを口説くスケベ上司のように、南村をベッドに押し倒すつもりだったではないか。
理屈は通っている。
「なるほどね。でも、やっぱりめんどくさくない?」
なにしろ希美は肉食系で、がつがつしている。ちゃんとできるように童貞を導くなんて、かなりの根気と忍耐がいりそうだ。
『さようでござますか。ならば、いっそのこと私が南村さんに筆おろしをして差し上げ……』
「はっ? ちょ、なに言ってんの武子さん!」
希美は慌てて、スマートフォンを手で覆う。
ポーチに化粧道具を収めた女が怪訝な眼差しを向けてきたが、さっさと出ていってしまった。
希美は息をつくと、とりあえず筆おろしは断った。
どういうわけか、南村の処女……ならぬ童貞を他の女に譲る気にはならない。
「分かった。私がやるしかないのよね」
『うふふ……もちろんでございます。特別なテクニックなど不要。南村さんをモノにするという、意気込みさえあればよいのです』
「よし!」
私は男として、南村を抱く――
決意の拳を固めると、鏡を真っ直ぐに見つめた。自信に満ちた、いつもの希美がそこにいる。
「南村壮二。あなたを、オレ色に染めてあげるわ」
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