Destiny

藤谷 郁

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Destiny

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「すごい光。きれい……」

「幻想的ですね」


青や赤、緑など、色がゆっくりと変化して、いつまでも見惚れてしまう。なんとなく掛井さんと手を繋ぎたくなるが、ポケットのスマホが震えて、慌てて引っ込めた。

見ると、父親からのメッセージである。

たぶん、昼間に送ったメールの返事だろう。せっかくロマンチックなムードなのにと思いつつ、一応確認してみる。


「えっ……?」


反射的に掛井さんを見上げた。


「どうしたんですか?」

「ち、父が、写真を送ってきたんです。昔、母と犬山をデートした時に撮ったものだって……」

「お父さんが、犬山の写真を?」


掛井さんにスマホを渡して画面を見せた。すると、彼も驚きの表情になる。


「古いアルバムの写真を、写したみたいです」


木曽川と犬山城をバックに、若かりし父と母が仲良く写っている。そして、傍らにあるのは父の車だ。


「掛井さんの車と、似ていませんか?」

「ええ、同じ車種です」


車種が同じなのも驚きだが、問題は車体の色だ。父の車は、掛井さんのセドリックと同じダークグリーン。色褪せた写真だが、それは判別できた。


「僕の車は、元々の所有者がオリジナルカラーを調合して塗り替えたものです。メーカーのオリジナルカラーではない、世界で一つだけの色。ということは……夏目さん」

「は、はい」

「お父さんは、車を修理などが得意ですか?」


掛井さんの言わんとすることをすぐに理解した。


「父は車が好きで、よく自分で修理していました。仕事も機械関係だし、かなり器用なほうだと思います」

「車の色を塗り変えるくらい、朝飯前かもしれませんね」


もう一度、メールを見てみる。


《城の写真をありがとう。お父さんたちも若い頃は愛車に乗って、あちこちの城を見にいったなあ》

《証拠写真を送ります(笑)》


「もしかしたら、掛井さんの車の、元々の所有者って……」

「間違いない。夏目さんのお父さんですよ……!」

「やっぱり……えっ、あの?」


彼が私の手を取り、ぐいと引き寄せる。

掛井さんらしからぬ強引なふるまいに、私は目をぱちくりとさせた。


「やっぱり、あなたは運命の人だ」

「掛井さん……」


頬を紅潮させて、蕩けそうな顔でそんなことを言う彼が、とてつもなく可愛くて、とてつもなく愛しい。

不思議な巡り合わせに、きっと、運命を感じているのだ。

だけど、それにしても――


「か、掛井さんって、ロマンチストなんですね。私に負けないくらい」

「ええ。かなりのものです」


そして、情熱的。

人目も気にせず抱きしめられて、ドキドキしっぱなしの私だった。






二人並んで、雪の街へと歩きだす。

駐車場に着くまで、彼が私の肩を抱き、一つ傘の下、しっかりと寄り添ってくれた。

そして車に乗り込むと、待ちきれないようにキスをした。

情熱的に。



「夏目梨乃……梨乃さんって、下の名前で呼んでもいいですか?」

「じゃあ、私も『春太さん』って、呼びます」

「梨乃さん……」




走りだす車。

フロントガラスに雪が舞い、イルミネーションが輝いている。


「クリスマスもお正月も、二人は一緒ですね」

「ずっとずっと、一緒ですよ」


晴れの日も、雨の日も、雪の日も。いつも、どんな時も。

巡る季節の中、あなたと歩いていく。

私の、運命の人だから――


「大好き」


傍に寄り添い、心からの想いを伝えた。












<終>
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