13 / 14
Destiny
1
しおりを挟む
「夏目さんは、運命を信じますか」
帰りの車中で、掛井さんがふいに問いかけてきた。
窓の外は雪が降り続いている。
「運命、ですか?」
「はい。僕は、夏目さんが今そばにいることが、運命のような気がするんです」
日が暮れたばかりの高速道路は幻想的で、どこか別の世界にいるみたいだった。私は心地よい振動を感じながら、彼の声に耳を傾ける。
「あの日、名古屋城の公園で出会ったのは、ただの偶然にしては出来過ぎで、でも誰かが仕組んだわけでもない。あなたを駅まで送り届けるため車に乗せた時、なんとなく感じたんです。夏目さんは、いつか僕の車の助手席に座るんじゃないか。つまり、僕の隣にいてくれるのではと……」
「掛井さん」
夢見ていた光景が現実になって、その上、こんなに感動的な告白をしてくれる彼は何者なんだろう。それこそ、出会うべくして出会った、運命の人に思える。
「すみません。こんな考え方、変ですよね。舞い上がってるみたいだ」
掛井さんが少し気まずそうにする。感激のあまり口を利けずにいた私は、慌てて自分の想いを口にした。
「そんなことないです。運命とかご縁とか、私も信じてますから。えっと……あ、例えば今日、縁結びの神様にお願いしました。掛井さんとの恋愛成就を」
「今日?……あ、もしかして」
掛井さんは、犬山の三光稲荷神社を知っていた。
「恋愛成就を祈願する絵馬が、たくさん奉納されていました。ご縁や運命を信じるのは掛井さんだけじゃないし、ぜんぜん変じゃないです」
「なるほど……うん、確かに」
納得してくれたようだ。嬉しそうに、私に微笑みかける。
「あなたと僕は、いつかどこかで縁を結んでいる。運命を感じる瞬間が、これからもたくさんあるかもしれないね」
「はい」
でも、神様に頼ってばかりでなく、自分自身も頑張って、気持ちを伝えなければ。掛井さんがそうしてくれたように。
こんなにも好きなんだから。
「夏目さん。今日は家まで送り届けます。その前に、夕飯でも食べませんか?」
「ありがとうございます。ぜひ!」
掛井さんは運命の人。
ゆったりとした心地で、彼の隣にいられる幸せに浸った。
名古屋駅近くの商業ビルに立ち寄り、夕飯を食べた。掛井さんおすすめの鰻屋で味わったひつまぶしは、最高に美味しかった。
「気象情報によると、今年はホワイトクリスマスになるとか。温暖化の近頃にしては、珍しいですね」
食事のあと、エレベーターの中で彼が教えてくれた。
「そうなんだ。寒そうだけど、クリスマスらしい感じがします」
「うん。ところで夏目さん、クリスマスの予定は?」
「えっ? わ、私は、特に何もありませんが」
エレベーターの扉が開く。
通路の窓からテラスを見ると、雪が降り続いていた。
「そうですか。ご存じのとおり、僕も予定がありません。もしよければ、デートしませんか?」
「デート……します、もちろん!」
掛井さんは、ドライブに行こうと誘ってくれた。私は嬉しすぎて、ひたすらうなずくばかり。
「あと、年が明けたら初詣に出かけるつもりですが……」
「一緒に行きます!」
すぐに反応する私を見て、掛井さんが楽しそうに笑う。でも私は本気で前のめりだった。いつ何時でも彼と一緒にいたいくらいの気持ちなのだ。
「じゃあ、犬山に行きますか」
「犬山……あっ」
すぐにぴんときた。
「神様に、お礼を言いに?」
「そういうこと」
掛井さんとの縁を結んでくれた三光稲荷神社である。私の話を、ちゃんと覚えていてくれたのだ。
「それなら、初詣のあとは城下町を散策しませんか。そのあとは……」
次々に提案する私を、掛井さんは呆れもせず、にこにこと受け入れてくれる。クリスマスにお正月――年中行事に、こんなにもわくわくするのは久しぶりで、浮き足立ってしまう。
「あ、ツリーがありますよ」
タワー前の広場にツリーが飾られている。いくつものLEDで彩られた巨大なツリーだ。掛井さんと一緒に、近くまで行ってみる。
帰りの車中で、掛井さんがふいに問いかけてきた。
窓の外は雪が降り続いている。
「運命、ですか?」
「はい。僕は、夏目さんが今そばにいることが、運命のような気がするんです」
日が暮れたばかりの高速道路は幻想的で、どこか別の世界にいるみたいだった。私は心地よい振動を感じながら、彼の声に耳を傾ける。
「あの日、名古屋城の公園で出会ったのは、ただの偶然にしては出来過ぎで、でも誰かが仕組んだわけでもない。あなたを駅まで送り届けるため車に乗せた時、なんとなく感じたんです。夏目さんは、いつか僕の車の助手席に座るんじゃないか。つまり、僕の隣にいてくれるのではと……」
「掛井さん」
夢見ていた光景が現実になって、その上、こんなに感動的な告白をしてくれる彼は何者なんだろう。それこそ、出会うべくして出会った、運命の人に思える。
「すみません。こんな考え方、変ですよね。舞い上がってるみたいだ」
掛井さんが少し気まずそうにする。感激のあまり口を利けずにいた私は、慌てて自分の想いを口にした。
「そんなことないです。運命とかご縁とか、私も信じてますから。えっと……あ、例えば今日、縁結びの神様にお願いしました。掛井さんとの恋愛成就を」
「今日?……あ、もしかして」
掛井さんは、犬山の三光稲荷神社を知っていた。
「恋愛成就を祈願する絵馬が、たくさん奉納されていました。ご縁や運命を信じるのは掛井さんだけじゃないし、ぜんぜん変じゃないです」
「なるほど……うん、確かに」
納得してくれたようだ。嬉しそうに、私に微笑みかける。
「あなたと僕は、いつかどこかで縁を結んでいる。運命を感じる瞬間が、これからもたくさんあるかもしれないね」
「はい」
でも、神様に頼ってばかりでなく、自分自身も頑張って、気持ちを伝えなければ。掛井さんがそうしてくれたように。
こんなにも好きなんだから。
「夏目さん。今日は家まで送り届けます。その前に、夕飯でも食べませんか?」
「ありがとうございます。ぜひ!」
掛井さんは運命の人。
ゆったりとした心地で、彼の隣にいられる幸せに浸った。
名古屋駅近くの商業ビルに立ち寄り、夕飯を食べた。掛井さんおすすめの鰻屋で味わったひつまぶしは、最高に美味しかった。
「気象情報によると、今年はホワイトクリスマスになるとか。温暖化の近頃にしては、珍しいですね」
食事のあと、エレベーターの中で彼が教えてくれた。
「そうなんだ。寒そうだけど、クリスマスらしい感じがします」
「うん。ところで夏目さん、クリスマスの予定は?」
「えっ? わ、私は、特に何もありませんが」
エレベーターの扉が開く。
通路の窓からテラスを見ると、雪が降り続いていた。
「そうですか。ご存じのとおり、僕も予定がありません。もしよければ、デートしませんか?」
「デート……します、もちろん!」
掛井さんは、ドライブに行こうと誘ってくれた。私は嬉しすぎて、ひたすらうなずくばかり。
「あと、年が明けたら初詣に出かけるつもりですが……」
「一緒に行きます!」
すぐに反応する私を見て、掛井さんが楽しそうに笑う。でも私は本気で前のめりだった。いつ何時でも彼と一緒にいたいくらいの気持ちなのだ。
「じゃあ、犬山に行きますか」
「犬山……あっ」
すぐにぴんときた。
「神様に、お礼を言いに?」
「そういうこと」
掛井さんとの縁を結んでくれた三光稲荷神社である。私の話を、ちゃんと覚えていてくれたのだ。
「それなら、初詣のあとは城下町を散策しませんか。そのあとは……」
次々に提案する私を、掛井さんは呆れもせず、にこにこと受け入れてくれる。クリスマスにお正月――年中行事に、こんなにもわくわくするのは久しぶりで、浮き足立ってしまう。
「あ、ツリーがありますよ」
タワー前の広場にツリーが飾られている。いくつものLEDで彩られた巨大なツリーだ。掛井さんと一緒に、近くまで行ってみる。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説


今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。




女子小学五年生に告白された高校一年生の俺
think
恋愛
主人公とヒロイン、二人の視点から書いています。
幼稚園から大学まである私立一貫校に通う高校一年の犬飼優人。
司優里という小学五年生の女の子に出会う。
彼女は体調不良だった。
同じ学園の学生と分かったので背負い学園の保健室まで連れていく。
そうしたことで彼女に好かれてしまい
告白をうけてしまう。
友達からということで二人の両親にも認めてもらう。
最初は妹の様に想っていた。
しかし彼女のまっすぐな好意をうけ段々と気持ちが変わっていく自分に気づいていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる