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冥王の領域
118話 冥王の考え
しおりを挟むセイ、グリモア、冥王の3人が、魔獣から人に戻れて泣いている男を見守っていると、セバスとグロリアが、どうなったかを確認する為にやって来た
「冥王様!セイ様!」
「ん?セバスか」
「この方は…っ、これは…まさか!」
セバスは、冥王の横に着くと、冥王の前で泣いている男を見た、男が心の底から歓喜の涙を流していると分かり、マーサの魔法の成功を確信した
「そうじゃ、マーサの魔法は成功じゃ」
「本当かい!それは何よりだね!」
「うむ、じゃが問題も出てきた」
「それは、この惨状の事ですか?」
セバスが周りを見渡すと、セイと冥王が居た廊下は、凍った跡、燃えた跡、壁を斬った跡などで、ボロボロになっていた
「これは酷いね、坊とセイ様がやったのかい?」
「…仕方なかったのじゃ、まさか、攻撃がすり抜けるとは思わなんだんじゃ」
「攻撃がすり抜けたのですか?」
「そうじゃ、物理攻撃は一切効かず、儂の【黒炎】も、セイの【風斬】と【氷斬】も、奴をすり抜けて、全て後ろに当たったんじゃ」
「そんな怪物を、よく倒せたね」
「聖属性なら、攻撃が効いたからじゃ」
「それなら、問題はないだろ?」
「それがのぅ、儂とセイが、20分以上攻撃を浴びせ続けて、やっと消滅させる事が出来たんじゃ」
「…それは問題ですね」
「じゃろ?儂とセイが2人掛かりで20分じゃぞ、他の者なら倍は掛かるぞ」
「それに、聖属性の魔法を使える者は、かなり少ないですから、人を戻すのに時間が掛かりすぎますね」
「そうだね、マーサ様に、〈浸透薬〉を使ってもらっても、多分1日20人が限界だね」
「う~む、困ったのぅ」
「ねぇ?〈浸透薬〉って何?」
魔獣から人に戻った男を、見守っていたセイは、グロリアの〈浸透薬〉と言う言葉に反応した
「セナ様から〈魔素薬〉について、聞いてないのかい?」
「全く聞いてない」
「仕方ないねぇ、説明してあげるよ」
グロリアは、セナ達に説明した時と同じ様に、〈魔素薬〉と魔草について、セイに説明した
「…マジか、そんな薬が有るのか…(ちっ!神の野郎、黙ってやがったな!魔草が発展の鍵になる可能性があるだろうが!今度会ったら、マジで殴る!)」
セイは、魔草を使えば、色々な物を作れる可能性を感じ、それを教えなかった神に怒りを抱いていた
「…これしか無いのぅ」
「考えが纏まりましたか?」
冥王は、セイが〈魔素薬〉の話を、グロリアから聞いている間中ずっと、魔獣を早く人に戻す方法を考えていた
「うむ、考えは纏まった…じゃが、儂の考えた通りにすると、セイが可哀想でな」
「…俺?」「「セイ様が?」」
「…儂の考えでは、このままじゃと、マーサが寿命で死ぬ前に、人に戻せる魔獣は、良くて全体の8割だけじゃろうな」
「「「…それは」」」
「しかし、〈魔素薬〉の中には、薬を塗られた者に対して、魔法の効果が高くなる薬が有ったはずじゃ」
「私も名前ぐらいしか知らないけど、確か〈魔法薬〉だったはずだよ」
「使い道が無くて、忘れられた薬じゃな」
「グリモア、お主知っておるのか?」
「儂がまだ、見習いの頃に、古い本で読んだ記憶が、薄っすらとあるのぅ」
「その本は今どこじゃ?」
「確か、この城の図書室の中にあるはずじゃ」
「では、グリモアは、その本を探し出してくれ」
「はぁ、分かった、探しておく…セバス手伝ってくれるか?」
「…仕方ありませんね、文官を50人程、派遣します」
「何じゃ、セバスは来んのか?」
「私は、色々と忙しいので」
「嘘じゃな、どうせ図書室の中から、1冊の本を探すのが嫌なんじゃろ?」
「それもありますが、文官達は、ここ何百年の間、暇を持て余していましたから、そろそろ刺激を与えようかと」
「うむ、それもそうじゃな、では行ってるかのぅ、お主も手伝え」
「えっ!ちょ!」
グリモアは、泣き止んでいた男を、無理矢理引き連れて、図書室に向った
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