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番外編

3-1、どうして古代竜がこんなところに?

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【クリタス】

『あら、今日の相手は強敵ね』

「ああ、今回は流石にクリタスも呼ばないとキツくてな」

『ふふ、任せて』

 俺の目の前には白く輝く鱗をもち、まばゆい光線を放つ古代竜がいた。

 通常のドラゴンよりも強力で、普通の魔法がほとんど効かないことからレオが呼び出されたのだ。出現したのはジオルド王国で、緊急連絡用に残していたスピリット精霊から知らされた。

 眼前にいる古代竜の属性は光属性だ。弱点であるクリタスが必須だった。いつもはシェリルを守るためにつけているが、今回ばかりは呼び出さざるを得なかった。

常闇の怨鎖 ダーク・グラッジ

 漆黒の鎖が白い巨体に絡み付いていく。意思を持った鎖は、確実に古代竜の動きを封じる。
 クリタスから放たれる怨魂は古代竜の硬い鱗を喰い破ってるが、大きなダメージにはつながっていない。

 俺はすでに召喚していたハデスで、とどめを刺しに行く。湾曲した大鎌は、獲物の血を欲してギラリと光っていた。


死神の贈物 デス・ギフト


 大鎌を一振りするたびに、対象の命を刈り取っていき安らかな永遠の眠りを贈る。通常のドラゴンでも二、三度の攻撃で絶命するが古代竜は倒れない。

「さすが古代竜だな」

【ルキス!】

『呼ばれるのを待ってたよ、レオ』

「それなら、思いっきり全力でやってくれ」

『いいねぇ、久しぶりだ。光刃の万華鏡 カレイド・ブレイド!』

 七色に輝く幾万の光の刃が、古代竜へと放たれた。
 クリタスの漆黒の鎖を避けつつ、突き刺さっていく。

「ギャォオオオォォォ!!」

絶望の宵闇 デスペリア・トワイライト

 クリタスもさらに強力な攻撃で、古代竜の命を削り取りにいく。
 そして、俺も渾身の一撃を放った。

終焉の宴 ラスト・フィースト

「ガアアアアッッ!!」

 漆黒の大鎌から放たれた本気の一撃で、古代竜はやっと地面に沈んでいった。

『はー、今回は強かったね』

 ルキスが振り返る。そういう割にはやけにスッキリした顔をしていた。

『でも、どうして古代竜がこんなところに?』

 クリタスの疑問は俺も感じていた。なぜ古代竜がこんなところにあらわれたのか。原因によってはさらなる対策が必要だ。

「そうなんだ、シルヴァが調べてくれるとは思うけど……とにかく帰ろう。シェリルの側に戻りたい」

 古代竜の調査と片付けはシルヴァに頼んで、俺はシェリルの元に急いだ。緊急事態でクリタスを呼び出したから、シェリルに精霊王が誰もついていない。

 他の精霊王も各地に魔物の討伐で派遣しているから、代わりもつけられなかったのだ。

 そしてこれらが全て陰謀だと気づくのに、そう時間はかからなかった。



     ***



「シェリルが……いない」


 そうだ、シェリルがいない。忽然と姿を消してしまったんだ。

 俺が出発するときには、女王の執務室で仕事をしていた。外にいた護衛兵に聞いても、俺が戻ってくるまで誰も部屋から出ていないと話していた。

 部屋の中に荒らされた様子はない。書類も書きかけのままで、ペンは机の上に転がっている。

 焦燥感と不安と疑問が入り混じった感情が押しよせた。
 自分から出て行ったのか? それとも誰かに攫われたのか?

 ざわりと感情が波打つ。

 落ち着け、まずは何があったか調べるんだ。そうだ、ハロルドだ。たしか画期的な魔道具を発明したといって、自慢されたヤツがあったな。あれを使えば調べられないか?

【クリタス】

 俺の影からスルリと漆黒の姿あらわす。

『レオ、ごめんなさい。私が離れたから……』

「違うよ、俺が呼んだんだ。クリタスはいつもよくやってるよ」

 いつもシェリルにつけているクリタスまで、ションボリしている。なにも落ち度などないというのに。

「それで、シェリルのことを調べたいから、ハロルドのところまで頼む」

『わかったわ。スピリットたちにもシェリルのこと探してもらうわ』

「うん、そうしてくれる?」

 義母に一時的にエルフの国を頼んでから、魔法研究所へと移動した。
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