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第三章 画策する者たち
61、貴方……バカなの?
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「ククク……ハーッハッハッ! まさかこんなに簡単にできるとはな!! いままでの奴らは間抜けばかりだったのか? クククククッ! ハハハハハ!!」
屋敷に戻ってきた私は、ずっと我慢していたせいか笑いがおさまらなかった。帰ってきても出迎える使用人はいなかったが、そんなことはどうでもいい。
それよりも、注目すべきは今日の戦利品だ。
まずは魔法が使えない檻の中で、これを開けよう。書類も用意しておかなければ。私の今後がかかった大切なものだ。
高位の貴族や裕福な商家の屋敷には、罪人を捕らえておくための魔法封じの檻が置かれている。大抵は地下牢がその作りになっていて、牢屋に入れてしまえば無力化できるものだった。
「よし、この牢屋にしよう」
一番奥の特製の牢屋で、魔道具の妖しく光る魔石を押した。カチリと音がして、パカリと真ん中から開く。捕らえたときと同じように、空間が歪んでシェリル王女があらわれた。
「……ここは……?」
キョロキョロとあたりを回す哀れなエルフに、私は声をかける。
「ここはグライス家の屋敷ですよ。この魔道具の中は窮屈ではありませんでしたか?」
「っ!! 何故……こんなことを?」
あまり動揺していないな、さすがは次期女王だ。肝が座っている。
交渉を有利に進めるために、シェリル王女の様子をじっくり観察していた。もっと怯えているなら、さらに恐怖に落として攻めるところだが、それは効果がなさそうだ。それであれば。
「この書類にサインしてもらいたいのです。レオともう一度会いたければ、ね」
それはエルフの生薬の取引相手を、グライス侯爵にするという契約書であった。王家が横槍を入れる隙を与えず、絶対的な権力と財力を手に入れるための重要な書類だ。
これにサインされもらえれば、グライス家は持ち直す。今後も安泰だ!!
「貴方……バカなの?」
「なっ、なんだと!?」
「バカよね、そうよね。どうしてこの私がこんな紙切れに縛られると思うのかしら? エルフとの契約は魔法契約よ。そもそもこんなことする相手と契約を結ぶと思うの?」
有利なはずの交渉は強気なエルフの王女には効果がない。むしろ生意気な口のききかたで、本当に腹立たしい。
言い方が甘かったか? もっと直接的な表現でなければ理解できんようだ。
「では、その魔法契約をするんだ。そうでなければ、レオを国家反逆罪としてすぐに捕縛して極刑で処分する」
「貴方……自分の息子でしょう? 何故そんなことができるの!?」
「そうだ、私の息子だが何だというのだ? このグライス家の役に立つなら光栄なことではないか。シェリル王女よ、協力してくれるな?」
ここまで言えば、流石にわかるだろう。謁見室でのシェリル王女の立ち振る舞いから、レオがこの王女の寵愛を受けてるのはわかってるんだ。
「……私の専属護衛に手を出したら、許さない!」
「それなら魔法契約をするんだ!!」
エルフの美しい顔がギリギリと歪んでいく。どうやら私に屈服したようだ。本当に愉快でたまらない。
「契約する前に聞きたいことがあるわ……貴方ひとりで、こんなことを計画したの?」
ふんっ、最後の足掻きか。知ったところでどうにもならんのに、惨めったらしいものだな。
「当然だ! まぁ、宰相にはレオを封じろとあの魔道具を渡されたがな。私がもっと有効活用してやったのだ」
「ということは、宰相もグルなのね……国王はこのことを知ってるのかしら?」
「クククククッ……そもそも国王がレオを排除したがっていたんだ。最初からこのようにすれば、話は早かったのになぁ。あいつらは私に圧力をかけるだけの低能なんだよ」
王城にいるうちにサッサと片をつけておけば、処理も楽だったのに。本当に使えない奴らだ。
するとシェリル王女が突然ビクリとして固まってしまった。
「それよりも、自分の身を案じた方がいいわね。見たことないほど怒ってるわ。もう私でも止められないかも」
屋敷に戻ってきた私は、ずっと我慢していたせいか笑いがおさまらなかった。帰ってきても出迎える使用人はいなかったが、そんなことはどうでもいい。
それよりも、注目すべきは今日の戦利品だ。
まずは魔法が使えない檻の中で、これを開けよう。書類も用意しておかなければ。私の今後がかかった大切なものだ。
高位の貴族や裕福な商家の屋敷には、罪人を捕らえておくための魔法封じの檻が置かれている。大抵は地下牢がその作りになっていて、牢屋に入れてしまえば無力化できるものだった。
「よし、この牢屋にしよう」
一番奥の特製の牢屋で、魔道具の妖しく光る魔石を押した。カチリと音がして、パカリと真ん中から開く。捕らえたときと同じように、空間が歪んでシェリル王女があらわれた。
「……ここは……?」
キョロキョロとあたりを回す哀れなエルフに、私は声をかける。
「ここはグライス家の屋敷ですよ。この魔道具の中は窮屈ではありませんでしたか?」
「っ!! 何故……こんなことを?」
あまり動揺していないな、さすがは次期女王だ。肝が座っている。
交渉を有利に進めるために、シェリル王女の様子をじっくり観察していた。もっと怯えているなら、さらに恐怖に落として攻めるところだが、それは効果がなさそうだ。それであれば。
「この書類にサインしてもらいたいのです。レオともう一度会いたければ、ね」
それはエルフの生薬の取引相手を、グライス侯爵にするという契約書であった。王家が横槍を入れる隙を与えず、絶対的な権力と財力を手に入れるための重要な書類だ。
これにサインされもらえれば、グライス家は持ち直す。今後も安泰だ!!
「貴方……バカなの?」
「なっ、なんだと!?」
「バカよね、そうよね。どうしてこの私がこんな紙切れに縛られると思うのかしら? エルフとの契約は魔法契約よ。そもそもこんなことする相手と契約を結ぶと思うの?」
有利なはずの交渉は強気なエルフの王女には効果がない。むしろ生意気な口のききかたで、本当に腹立たしい。
言い方が甘かったか? もっと直接的な表現でなければ理解できんようだ。
「では、その魔法契約をするんだ。そうでなければ、レオを国家反逆罪としてすぐに捕縛して極刑で処分する」
「貴方……自分の息子でしょう? 何故そんなことができるの!?」
「そうだ、私の息子だが何だというのだ? このグライス家の役に立つなら光栄なことではないか。シェリル王女よ、協力してくれるな?」
ここまで言えば、流石にわかるだろう。謁見室でのシェリル王女の立ち振る舞いから、レオがこの王女の寵愛を受けてるのはわかってるんだ。
「……私の専属護衛に手を出したら、許さない!」
「それなら魔法契約をするんだ!!」
エルフの美しい顔がギリギリと歪んでいく。どうやら私に屈服したようだ。本当に愉快でたまらない。
「契約する前に聞きたいことがあるわ……貴方ひとりで、こんなことを計画したの?」
ふんっ、最後の足掻きか。知ったところでどうにもならんのに、惨めったらしいものだな。
「当然だ! まぁ、宰相にはレオを封じろとあの魔道具を渡されたがな。私がもっと有効活用してやったのだ」
「ということは、宰相もグルなのね……国王はこのことを知ってるのかしら?」
「クククククッ……そもそも国王がレオを排除したがっていたんだ。最初からこのようにすれば、話は早かったのになぁ。あいつらは私に圧力をかけるだけの低能なんだよ」
王城にいるうちにサッサと片をつけておけば、処理も楽だったのに。本当に使えない奴らだ。
するとシェリル王女が突然ビクリとして固まってしまった。
「それよりも、自分の身を案じた方がいいわね。見たことないほど怒ってるわ。もう私でも止められないかも」
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