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第三章 画策する者たち
53、でも友人には恵まれた
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「それは……本気なのか?」
「もちろんだ。そのために三年前から準備もしている。残念ながら、父ではこの国を衰退させて終わりだ」
このことが公になれば計画に加担していた者はもれなく、処刑されてさらし首にされるだろう。そんなことをサラリとシルヴァは話した。
シルヴァの話していた目的とは、この事だったんだと理解する。
だけど、俺の答えは決まっていた。
「この国には、友人以外に大切なものなんてない。シルヴァが決めたことなら協力するよ。でも、ひとつだけ譲れないものがある」
「なんだ?」
「俺の中でシェリルは特別なんだ。だからシェリルが傷つかないようにするし、もし何かあってもシェリルだけは守り抜くし、絶対に迷惑はかけないようにする。それでもいいか?」
シルヴァはホッと息を吐いて、肩の力を抜いた。そして、それはそれは黒い笑顔で、さらに驚くべき発言をする。
「もちろんだ、最初からそのつもりだ。それから、さっき話していた暗殺者に心当たりがあるから、会わせて欲しい」
「マジか!? わかった、それなら連れていく。それで何を協力すればいい?」
「それは、暗殺者にあってから話すよ」
シルヴァの中では、これから国王をどう追い込むか決まっているようで、確認したら詳しく話すということだった。
***
まずはシェリルについていたクリタスをウェンティーと交代させて、暗殺者を任せているアクアのもとに向かった。
いつも穏やかなアクアが、見知らぬ人間に敵意をむけてくる。
『レオ……それと人間の王子か?』
「アクア、俺の友人だ。信頼できるから大丈夫だ」
射るような鋭い視線をシルヴァにぶつけている。契約する前は俺にもあの視線をむけていたのを思い出した。
やがてフッと表情が和らいだ。
『いいだろう。レオの友だと認めてやる』
「それはありがたいな。シルヴァンスだ、よろしく頼む」
暗殺者のもとにいくと、シルヴァはジッと氷の檻の中を見つめた。ひとりずつ顔を確認しているようだ。
「やはりな。お前たちに発した命令は、この時をもって完了とする。今後は私の管轄とする。いいな?」
ここで暗殺者たちは初めて自ら動きを見せた。檻の中で膝を折り、無言で臣下の礼をとっている。
「どういうことだ?」
「この者たちは王家の『影』だ。いま彼らに命令できるのは、国王と王太子のみ。つまり、レオに刺客を差し向けたのは私の父だ。……すまない」
ああ、そうか。シェリルに近づきたいのに、俺が邪魔で仕方ないのか。シルヴァが泣きそうな顔で歯を食いしばっていた。
「そうか……いや、シルヴァのせいじゃないし、いいよ」
「本当にすまない」
俯いて固く握った拳は震えている。俺なら平気なんだ。だから気に病まないでほしい。
「いいよ。お互い親には恵まれなかっただけだろ」
「はは……そうだな。でも友人には恵まれた」
やっと、ここでいつものシルヴァが戻ってきた。こうやって幾度、感情を飲み込んできたんだろうか? でもその心の底にあるのは、目的を達成するという強固な意思だ。
「間違いない。で、これからどうする?」
「幸いなことに準備が整ったから、罠を仕掛けようと思う」
「……罠?」
シルヴァが腕組みして、何やら考えている。今度その作戦の練りかたを教えてもらおうかと思った。
「その前に『影』よ、お前たちはこの国のために働くのが役目で間違いないな?」
シルヴァは檻の中の『影』たちにむかって問いかける。
「相違ございません」
「それでは、これより賢王と呼ばれた祖父と祖母並びに王妃を毒殺し、国益を己の私欲で貪りつづける現国王を排除する。この瞬間から私の命令で動いてもらいたい」
「……そう仰ってくださるのを、お待ちしておりました」
前国王と王妃たちを毒殺!? 流行り病じゃなかったのか!? これは俺が聞いてよかったのか? しかも『影』の人たちも待ってたとか当然みたいな顔してるし!!
……何がどうなってるんだ?
「『影』に命ずる。これからは国王がレオの暗殺を企てた証拠をまとめよ。また、追って別件の指示も出すので、それに従え」
「御意」
シルヴァは振り返って、いままでで一番いい黒い笑顔で俺に告げた。
「聞いた通りだ、レオ。協力を頼むよ。まずはこの『影』たちを解放してくれないか?」
「……わかった」
それ以外に俺の口から言葉は出てこなかった。
「もちろんだ。そのために三年前から準備もしている。残念ながら、父ではこの国を衰退させて終わりだ」
このことが公になれば計画に加担していた者はもれなく、処刑されてさらし首にされるだろう。そんなことをサラリとシルヴァは話した。
シルヴァの話していた目的とは、この事だったんだと理解する。
だけど、俺の答えは決まっていた。
「この国には、友人以外に大切なものなんてない。シルヴァが決めたことなら協力するよ。でも、ひとつだけ譲れないものがある」
「なんだ?」
「俺の中でシェリルは特別なんだ。だからシェリルが傷つかないようにするし、もし何かあってもシェリルだけは守り抜くし、絶対に迷惑はかけないようにする。それでもいいか?」
シルヴァはホッと息を吐いて、肩の力を抜いた。そして、それはそれは黒い笑顔で、さらに驚くべき発言をする。
「もちろんだ、最初からそのつもりだ。それから、さっき話していた暗殺者に心当たりがあるから、会わせて欲しい」
「マジか!? わかった、それなら連れていく。それで何を協力すればいい?」
「それは、暗殺者にあってから話すよ」
シルヴァの中では、これから国王をどう追い込むか決まっているようで、確認したら詳しく話すということだった。
***
まずはシェリルについていたクリタスをウェンティーと交代させて、暗殺者を任せているアクアのもとに向かった。
いつも穏やかなアクアが、見知らぬ人間に敵意をむけてくる。
『レオ……それと人間の王子か?』
「アクア、俺の友人だ。信頼できるから大丈夫だ」
射るような鋭い視線をシルヴァにぶつけている。契約する前は俺にもあの視線をむけていたのを思い出した。
やがてフッと表情が和らいだ。
『いいだろう。レオの友だと認めてやる』
「それはありがたいな。シルヴァンスだ、よろしく頼む」
暗殺者のもとにいくと、シルヴァはジッと氷の檻の中を見つめた。ひとりずつ顔を確認しているようだ。
「やはりな。お前たちに発した命令は、この時をもって完了とする。今後は私の管轄とする。いいな?」
ここで暗殺者たちは初めて自ら動きを見せた。檻の中で膝を折り、無言で臣下の礼をとっている。
「どういうことだ?」
「この者たちは王家の『影』だ。いま彼らに命令できるのは、国王と王太子のみ。つまり、レオに刺客を差し向けたのは私の父だ。……すまない」
ああ、そうか。シェリルに近づきたいのに、俺が邪魔で仕方ないのか。シルヴァが泣きそうな顔で歯を食いしばっていた。
「そうか……いや、シルヴァのせいじゃないし、いいよ」
「本当にすまない」
俯いて固く握った拳は震えている。俺なら平気なんだ。だから気に病まないでほしい。
「いいよ。お互い親には恵まれなかっただけだろ」
「はは……そうだな。でも友人には恵まれた」
やっと、ここでいつものシルヴァが戻ってきた。こうやって幾度、感情を飲み込んできたんだろうか? でもその心の底にあるのは、目的を達成するという強固な意思だ。
「間違いない。で、これからどうする?」
「幸いなことに準備が整ったから、罠を仕掛けようと思う」
「……罠?」
シルヴァが腕組みして、何やら考えている。今度その作戦の練りかたを教えてもらおうかと思った。
「その前に『影』よ、お前たちはこの国のために働くのが役目で間違いないな?」
シルヴァは檻の中の『影』たちにむかって問いかける。
「相違ございません」
「それでは、これより賢王と呼ばれた祖父と祖母並びに王妃を毒殺し、国益を己の私欲で貪りつづける現国王を排除する。この瞬間から私の命令で動いてもらいたい」
「……そう仰ってくださるのを、お待ちしておりました」
前国王と王妃たちを毒殺!? 流行り病じゃなかったのか!? これは俺が聞いてよかったのか? しかも『影』の人たちも待ってたとか当然みたいな顔してるし!!
……何がどうなってるんだ?
「『影』に命ずる。これからは国王がレオの暗殺を企てた証拠をまとめよ。また、追って別件の指示も出すので、それに従え」
「御意」
シルヴァは振り返って、いままでで一番いい黒い笑顔で俺に告げた。
「聞いた通りだ、レオ。協力を頼むよ。まずはこの『影』たちを解放してくれないか?」
「……わかった」
それ以外に俺の口から言葉は出てこなかった。
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