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第三章 画策する者たち

45、ようやく友だと……!!

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 魔法学園に来てから、早くも一ヶ月半が過ぎた。制服も夏服から冬服へ変わり、濃紺のローブをまとった生徒たちが学園内を闊歩してる。

 シェリル様の魔法に関する講義は、教師にも生徒にも好評で召喚魔法を使っても誰も怖がることがなくなった。
 精霊魔法も時々披露して、よく生徒に囲まれている。

 召喚魔法に否定的だった教師たちは、今は引き継ぎのために残っているだけで、教壇に立つことはない。
 学園での生活はいたって平和だった。
 ……今日までは。



「だからー、俺のことはさんをとって、ハロルドって呼んでよ」

「それなら私のことはシルヴァと呼んでくれないか!?」

「私はまたアリエルって呼んでほしいのに……」


 ここで少し説明させてほしい。
 いまは古代語の講義の時間だ。シェリル様の鶴の一声で、シルヴァンス王子も一緒に教えることになった。そこまではいいんだ。王子はわりといいヤツだし。

 そこに「補佐官としての勉強のために」とか言って、アリエルも参加することになったんだ。そして問題は、うっかりシルヴァンス王子とハロルドさんの前で、彼女を愛称で呼んでしまったのが発端だ。

 講義を受けようと部屋に入ってきたアリエルが、ちょっとした段差につまづいて、慌てて駆け寄った時にポロッと出てしまったんだ。

 それを聞いたシルヴァンス王子が、衝撃を受けて「愛称で呼び合ったら友人だな……」と言い始め、「それならオレがさん付けなのはおかしい」とハロルドさんが追従し、アリエノール様と言い直したのがショックだったのかアリエルが落ち込んでしまった。


「俺はさ、ちょっと歳は離れてるけど、すっごい頑張り屋のレオのことは弟みたいに思ってるんだよ? それなのにいつまでも他人行儀で、寂しいじゃないか!」

「私だって、そもそも前回は言い方を間違えただけだ! レオの何事も諦めない強さは、前から理解していたのだ! そろそろ友人として仲良くしてもいいと思うが!?」

「この中で一番最初に仲良くしたのは私だよね!? あの時固まったのは、本が燃えないか心配しただけだって誤解も解けたよね? なのに何で前みたいにアリエルって呼んでくれないの? ずっと友達だと思ってたのに!」

 コイツらが何故か俺に愛称を呼ばせたいみたいで、今日はまともな講義ができそうもない。……ていうか、愛称で呼ぶなんて今更恥ずかしくてできるか!!

「呼び方には興味ないので」

「くっそー! 可愛げのない!! よし、わかった!! 離れたところでも映像が見れるこの魔道具をやる。これは役立つだろう?」

 そう言って、四角い石板のようなものを出してきた。最新の魔道具みたいだ。
 で、ハロルドさんは何と言った?
 ……離れたところでも映像が見れる? それは、つまり、シェリル様の姿を、側にいなくても見れるのか!?

「使用法は?」

「水属性の魔力を溜めておけば、最大で三時間見れる」

「そういうことは、早く言え。ハロルド」

「よっしゃぁぁ!!」

 いや、だってシェリル様に関しては、特別なんだから仕方ないだろ? そもそもハロルドは前から、手のかかる兄貴みたいだったからな。

「ハロルド! 貴様ズルいぞ!」

「なんとでも言え! 持ってるもんは使ってナンボだ!」

 大人気ない発言だが、これに触発されたシルヴァンス王子が奥の手を使ってきた。

「そうか、ではレオ。私は学生たちが夕食後は一切シェリル王女とレオの邪魔をしないように、規則を作ろう。私と友になり愛称で呼ぶなら、明日から施行すると約束する」

 なん……だと? いままで削りに削られてきた、シェリル様との時間を確保してくれる……だと?
 しかも、明日から……!!

「わかった、よろしく頼む。シルヴァ」

「っ!! ようやく……ようやく友だと……!!」
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