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第三章 画策する者たち

32、少しは見直してくれたかな?

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 翌日、王城の部屋を後にした俺たちは、シルヴァンス王子と共に魔法学園へ向かった。

 移動にはシルヴァンス王子が用意してくれた、豪華絢爛な馬車を使うことした。これはシェリル様がキラキラした目で『馬車』という言葉に反応していたからだ。

 今まで乗ったことがないと言うのでお願いしたのだ。ソワソワしながら馬車に乗り込むシェリル様が可愛すぎて、どうしようかと思った。


 馬車の中でシルヴァンス王子が、これからの俺たちの役割を話し始める。

「まずは、私がなぜ魔法学園に来てほしかったのか説明しようか」

 シルヴァンス王子は、そもそも呪いや前世が常識として当たり前になっているのが心底アホらしいと思っていたそうだ。

 そこで本格的に様々なアホくさい常識の定義を変えようと、三年前から水面下で準備をすすめていたらしい。その一環で『貴族だけが通う魔法学園』という概念も変えたいということだった。

 階級など関係なく、実力のある者や、芯の強い者と出会う場所を作りたいと語った。自分の代には間に合わないが、これから先の国を担う者のために力を尽くしたいと。

 今回のシェリル様の来訪と俺の召喚魔法の件はまたとない好機だったというわけだ。この勢いで荒療治だが一気に事をすすめたいらしい。


 たしかに荒療治がうまくいけば、ハロルドさんのように正しく理解してもらえるかもしれない。だけど……アイツらが変わるのなんて想像できない。

「王城や魔法研究所はすでにレオとシェリル王女でやってくれてたから、残すは魔法学園だと思ったんだ。特殊な環境だから、情報が伝わりにくくて召喚魔法の理解が進んでいない」

 魔法学園は一部の高官の子息令嬢をのぞいて寮生活になるため、防犯の観点から結界が張られ、出入りは厳しく制限される。学園長や教師もその敷地からはなかなか出られないので、最新情報がすぐに入ってこないのだ。

「わかりました……では私もエルフの王女として協力いたします」

「では、俺は場が用意されたら派手に暴れます」

「話が早くて助かるよ。それでは具体的な作戦会議をしよう」

 その前にひとつ確認したいことがある。俺は昨日からその話題が出ないことが、ずっと気になっていた。

「シルヴァンス王子は、シェリル様の取引相手に興味がないのですか?」

「ああ、興味がないわけではないけど、それがなくても目的の達成に支障はないからね。国の運営も私が手がけている部門は問題ないし」

「え、でもまだ魔法学園の学生では……?」

「卒業はまだだけど、すでにいくつかの施策を実施して、陰で色々動いているんだ」

 この王子、なかなかデキる人物らしい。たしかに仕事は速いし、話してても返答が的確だ。

「少しは見直してくれたかな? ではレオ、私の右腕になってくれるか?」

「なりません」

「ははは、相変わらず即答だね」

 シェリル様には昨夜のうちに、何があってもどんな条件を付けられても、お傍を離れないと伝えてある。その甲斐あって今日は頬笑みながら話を聞いている。

 その後の作戦を練りつつ俺たちを乗せた馬車は、滞りなく魔法学園へと向かっていた。
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