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第二章 無知な者たち

21、今はシェリル様がいるから平気です

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 どうしましょう。

 さっきレオが『シェリル様以外はどうでもいい。一ミリも興味ない』って言ってたけど、聞き間違いではないわよね?

 つまり、それだけ私を大切に思ってくれている……ということなのかしら? それは、もしかして、もしかすると、もしかしなくても、す、す、す、好きということ……!?

 あ、ダメだわ。ちょっと心臓が激しく鼓動して、全身から汗が吹き出してきたわ……!! 私をこんな風にしてるのに……レオは平常通りなんて、ズルいわ!!

 ……平常通り? そうね、レオはいつも通りね。とても愛の告白をした後には見えないわね。
 え、嫌だわ! 私、また勘違いしてしまったの!? す、すぐに気づいてよかった……!!

 以上が、謁見の間から用意された客室に向かうまでに、シェリルの脳内を駆け巡っていた内容だ。
 レオは確実にいい仕事をしていた。



     ***



 案内係が言うには、王城の客室でも一番グレードの高い部屋に、シェリル様と俺は案内された。

 部屋に入ると高級感のある落ち着いた家具やソファーが並び、奥にある扉を開けるとそこがベッドルームになっている。
 浴室も完備されていて、快適に過ごせそうだ。

「シェリル様。いつものように俺がお傍から離れるときは、精霊王を置いていきます」

「ええ。それでいいわ、お願いね」

 シェリル様の護衛をするにあたって、お願いされたことがある。

 一、食事は一緒に取ること。
 二、俺もちゃんと休むこと。
 三、今まで通りに接すること。

 この三点だ。精霊王たちに協力してもらえば一と二は問題ない。無理をして身体を壊せば護衛どころではないので、ありがたい話だ。三についても、護衛としてわきまえて接したら悲しい顔をされてしまって、追加された項目だった。


「それよりも、レオ。貴方の話を聞きたいわ。……人間の国でどんな扱いを受けてきたの?」

「……黙っていてすみません。少し長くなりますがよろしいですか?」

「もちろんよ。詳しく聞かせてほしいわ」

 俺は魔法学園に入学してからの事を、簡単にまとめながらシェリル様に話した。

 魔法属性がないと言われ、魔法学園では独学で召喚魔法を取得したこと。召喚魔法をみせたら悪霊と呼ばれ、最終学年で退学になったこと。そして侯爵家からも身ひとつで追放されたこと。
 呪われた存在 カース・レイドだから雇ってもらえるところがなく、迷彩の森でひとりで過ごしていたこと。
 ……うん、なかなかの人生だ。そして今の俺は幸せすぎる。


「…………そう。そうだったのね。とても辛い思いをしてきたのね」

「今はシェリル様がいるから平気です」

「そうよ。私の専属護衛として雇ったのだから、レオも幸せになってもらわなくては困るわ。でも、こんなに無知な種族だなんて……これでは取引したところで、エルフの生薬を正しく扱えないわね」


 シェリル様は次期王女になるための試練で、様々な課題をこなさなくてはならなかった。今回の第一の試練は、人間と取引をしてエルフの国を豊かにするというものだった。

 人間はひ弱な種族であったけど、金を稼ぐのは他のどの種族よりも上手いので貨幣が潤沢だ。今後の他種族との交易のため、その貨幣を取り入れるのが目的だった。

 エルフの国にある薬草や生薬は別格で効果が高いので、少量でもいい価格で取引ができそうだ。今回は日持ちする生薬に絞って話を進める予定だった。

 ただ、扱いが悪いと効果が半減するので、ある程度の魔法や薬草に関する知識が必要になる。無知なままでは扱えないのだ。

「レオ、他の街も同じなの?」

「そうですね、概ね似たようなものかと。常識にとらわれず、学ぶ意欲のある者でないと難しいと思います」

「そう……しばらくは人材発掘ね」
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