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第一章 孤独な者たち
4、悪霊扱いされてしまったのだ
しおりを挟む結果、古書に書かれている召喚魔法は四年かけてすべて取得することができた。
今振り返っても、なかなか骨の折れる作業だったと思う。
そして先日、すべての召喚魔法を取得できた嬉しさから、教師に報告したのだ。召喚魔法をよくわかっていない教師は、まずは練習場で魔法を見せてくれと言った。
ようやく俺の努力が認められると、張り切ってヴァルハラ召喚を披露したのだが————
【ヴァルハラ召喚、炎獄王イグニス】
「ヒィッ!! 何なんだそれは!? 今炎から人型の何かが出て来たぞ!?」
「はい、これがヴァルハラ召喚で、今出したのは炎獄王イグニスです。なんなら会話もできますよ?」
「ヒャァァァァ!! 化け物……いや、悪霊だ!! コイツついに悪霊を呼び出しやがった!!」
————悪霊扱いされてしまったのだ。
俺は愕然としていた。
この魔法学園に入学してから九年間、認めてもらいたくて必死に努力してきたんだ。ずっとひとりで。
俺が死にそうになりながら身に付けた召喚魔法が、精霊王が悪霊だって?
俺は精霊王の魔力も感じ取れない、こんな低能のバカ共に認められたいと、あんなに努力してきたのか?
孤独に耐えて、涙も枯れ果て、笑うことも忘れて必死にやってきたのに。
俺の九年間の努力を、気高き精霊王を、悪霊という言葉で踏みにじるな!!
感情が爆発した。
イグニスから発せられる魔力も爆発的に増えて、紅蓮の炎があふれ出していた。俺の半径五メートル以内には近付けない状態だった。
そこを先ほどの教師に連れてこられた学園長と他の教師たちに、バッチリ目撃されたのだ。
これが、二日前の出来事だった。いつもは何事も決定されるまでに一週間はかかるのに、今回はヤケに早かった。
でも、もういい。
この九年間、ここの教師たちは俺の存在を無視してきたんだ。俺が何をやっても他の生徒たちと関わらなければいいと、興味も示さなかった。
魔法に関する書物はすでに全部読破して、理解している。ここで過ごす理由はない。
こうして俺は退学宣告の翌日に、九年間を過ごした魔法学園を出てきた。
このあと、さらに残酷な現実が待ち受けているとも知らずに————
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