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番外編 リリスの幸せを願う②
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「ねえ、それより本題からずれまくっているよ」
「ああ、そうだな。リリスの結婚式のドレスについてだったな」
「ユアンの商団で取り扱っている、世界で唯一の生地があると言っていたな」
「そうだ。金粉を練り込んだような生地が、ある地方で作られていて、村ごと買収したんだ」
そう、重要事項とはアマリリスの結婚式のドレスについてだった。花嫁の衣装は新郎が用意するのがフレデルト王国の慣習で、通常はドレスの用意に半年ほどかかる。
妖精の如きアマリリスに似合う世界最高のドレスを仕立てたい、とルシアンがテオドールに相談したのが始まりだ。
そこでリリスのためならばとテオドールが商団に身を置くユアンを頼ったのだ。
ユアンの事情もあったのでアマリリスには詳しく話せていないが、無事であることは伝えている。
「ドレス一着分を用意するのにどれくらいかかる?」
「そうだな、なにせ特殊な製法だから一反織るのに半年かかる。ドレスで使うなら二反は必要だ。それと費用はまけても五千万ダラーだな」
「五千万……はは、それだけで王都の一戸建てが買えるな」
「なんだよ侯爵家の当主のくせにテオはみみっちいな」
「うるさい、冒険者の時の金銭感覚が抜けないんだよ。ユアンこそ金銭感覚は大丈夫なのか?」
「別に~、欲しい分だけ稼げるから問題ないね」
「金額は糸目をつけないから安心して。アマリリスをより美しくするためのドレスなら、いくらでも僕のポケットマネーから出すよ」
双子の兄弟は見た目こそ瓜ふたつで、テオドールが短髪、ユアンが長髪をひとつにまとめているだけの違いだ。
しかし八年間の経験で随分と性格に違いができたようだった。テオドールは堅実で実直、ユアンは自由奔放で刹那的と正反対になっている。
(早くユアンをリリスに会わせたいな。今度はどんな風に喜んでくれるだろう)
アマリリスのことだから、変わってしまった兄を嘆いたりはしないのはわかっている。
テオドールの状況からユアンも似たような環境だったとアマリリスは推察するだろう。そうなったらなにも知らずに過ごしてきたと自分を責めるかもしれない。
ルシアンはアマリリスのことなら本人以上に深く理解している。だからこそ欲しい言葉と喜びを与えてきた。
(仕方ない、僕も手を貸した方がよさそうだな)
「ドレスの生地はユアンに頼んだ。それで、その組織から抜け出すためにはどうしたらいいの?」
「なんだよ、協力してくれるのか?」
「そうしたらリリスが喜ぶからね」
「そうだな、リリスのためにもユアンはさっさと組織を抜けるべきだ」
「へ~、オレのリリスは最高だな」
ユアンの何気ないひと言に、ルシアンとテオドールはキッと目じりを釣り上げる。
「僕のリリスだから!」
「俺のリリスだ!」
「はっ、それなら勝負しようじゃねえか」
ユアンはニヤリと笑みを浮かべてテオドールとルシアンを挑発しはじめた。
真っ先に乗ったのはテオドールだ。
「いいだろう。誰がリリスを一番喜ばせるのか勝負してやる」
「ルシアン、お前も勝負するだろ?」
ルシアンは即答しなかった。アマリリスを喜ばせることはいくらでもできるが、この面子で勝負となると慎重にならざるをえない。
なぜならルシアンはアマリリスに関することで、どんな些細なことでも誰かに負けたくないからだ。
「情けねえな。それでもリリスの婚約者かよ。その程度なら全力で潰すぞ?」
「は? その程度ってなに。悪いけどリリスに十年も片思いしてきた僕を舐めないでくれる?」
慎重に判断するはずだったのに、ユアンの安っぽい挑発にルシアンは思わず乗ってしまった。
「よし、じゃあ、今から結婚式までが勝負だな」
「どうやって判定するの?」
「この魔道具を使おう。これは相手の感情が昂ると色が変化するブレスレットなんだ。これをリリスに着けてもらって、喜びを表すピンクにする。感情が大きく動くほど濃い色になるから、それで判定しよう」
「では証拠の映像も必要だな。ユアン、映像記録の魔道具も用意してくれ」
「任せろ」
こうしてアマリリスの幸せを願ってやまない三人の男たちの戦いが、ひっそりと繰り広げられていた。
✢︎✢︎✢︎✢︎✢︎✢︎✢︎✢︎✢︎✢︎✢︎✢︎✢︎✢︎✢︎✢︎✢︎✢︎✢︎✢︎✢︎✢︎
これにて完結となります。
楽しんでいただけましたでしょうか?
ユアンとの再会はもう少しだけ先になりそうです…!
その辺りも含めて、この作品について近況ボードにてお知らせがございますので、そちらもご覧いただけたら嬉しいです!
どうぞよろしくお願いします<(_"_)>ペコッ
「ああ、そうだな。リリスの結婚式のドレスについてだったな」
「ユアンの商団で取り扱っている、世界で唯一の生地があると言っていたな」
「そうだ。金粉を練り込んだような生地が、ある地方で作られていて、村ごと買収したんだ」
そう、重要事項とはアマリリスの結婚式のドレスについてだった。花嫁の衣装は新郎が用意するのがフレデルト王国の慣習で、通常はドレスの用意に半年ほどかかる。
妖精の如きアマリリスに似合う世界最高のドレスを仕立てたい、とルシアンがテオドールに相談したのが始まりだ。
そこでリリスのためならばとテオドールが商団に身を置くユアンを頼ったのだ。
ユアンの事情もあったのでアマリリスには詳しく話せていないが、無事であることは伝えている。
「ドレス一着分を用意するのにどれくらいかかる?」
「そうだな、なにせ特殊な製法だから一反織るのに半年かかる。ドレスで使うなら二反は必要だ。それと費用はまけても五千万ダラーだな」
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「うるさい、冒険者の時の金銭感覚が抜けないんだよ。ユアンこそ金銭感覚は大丈夫なのか?」
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「金額は糸目をつけないから安心して。アマリリスをより美しくするためのドレスなら、いくらでも僕のポケットマネーから出すよ」
双子の兄弟は見た目こそ瓜ふたつで、テオドールが短髪、ユアンが長髪をひとつにまとめているだけの違いだ。
しかし八年間の経験で随分と性格に違いができたようだった。テオドールは堅実で実直、ユアンは自由奔放で刹那的と正反対になっている。
(早くユアンをリリスに会わせたいな。今度はどんな風に喜んでくれるだろう)
アマリリスのことだから、変わってしまった兄を嘆いたりはしないのはわかっている。
テオドールの状況からユアンも似たような環境だったとアマリリスは推察するだろう。そうなったらなにも知らずに過ごしてきたと自分を責めるかもしれない。
ルシアンはアマリリスのことなら本人以上に深く理解している。だからこそ欲しい言葉と喜びを与えてきた。
(仕方ない、僕も手を貸した方がよさそうだな)
「ドレスの生地はユアンに頼んだ。それで、その組織から抜け出すためにはどうしたらいいの?」
「なんだよ、協力してくれるのか?」
「そうしたらリリスが喜ぶからね」
「そうだな、リリスのためにもユアンはさっさと組織を抜けるべきだ」
「へ~、オレのリリスは最高だな」
ユアンの何気ないひと言に、ルシアンとテオドールはキッと目じりを釣り上げる。
「僕のリリスだから!」
「俺のリリスだ!」
「はっ、それなら勝負しようじゃねえか」
ユアンはニヤリと笑みを浮かべてテオドールとルシアンを挑発しはじめた。
真っ先に乗ったのはテオドールだ。
「いいだろう。誰がリリスを一番喜ばせるのか勝負してやる」
「ルシアン、お前も勝負するだろ?」
ルシアンは即答しなかった。アマリリスを喜ばせることはいくらでもできるが、この面子で勝負となると慎重にならざるをえない。
なぜならルシアンはアマリリスに関することで、どんな些細なことでも誰かに負けたくないからだ。
「情けねえな。それでもリリスの婚約者かよ。その程度なら全力で潰すぞ?」
「は? その程度ってなに。悪いけどリリスに十年も片思いしてきた僕を舐めないでくれる?」
慎重に判断するはずだったのに、ユアンの安っぽい挑発にルシアンは思わず乗ってしまった。
「よし、じゃあ、今から結婚式までが勝負だな」
「どうやって判定するの?」
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東堂さん、感想いただきありがとうございます!
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(続編でユアンとの再会シーンや結婚式まで書くつもりです)
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G.MaCoさん、感想いただきありがとうございます!
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