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54話 それぞれの思惑②
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ルシアンは至極真っ当な意見を言うが、ロベリアはそれで満足しない。
「ですが、もし招待状を受け取れなかったら、わたしは夜会に参加できませんわ! 今回の夜会は絶対に参加したいのです!」
「まあ、姉であるアマリリスの婚約者披露の夜会だしね。最悪、招待状がなくても参加できるように手配しておくよ」
「まあ! ありがとうございます、ルシアン殿下!」
確実に夜会に参加できることになったロベリアは、満面の笑みで喜んだ。
だがロベリアの目的はそれだけではなかった。
ロベリアはルシアンに近づくためにアマリリスの侍女になった。本当はアマリリスの顔も見たくなかったが、ルシアンを奪うためだと割り切り、適当に話を合わせてタイミングを狙っている。
午後からはルシアンが国議に参加するので、アマリリスの私室でゆったりとお茶を飲みながら過ごしていた。アマリリスはなにやら小難しい本を読んで、勉強しているようだ。
そんなアマリリスを横目に、ロベリアは頭の中でルシアンを奪う作戦を練っている。
(なんとか夜会の参加はできるようにしたけれど、お父様ったら招待状も送ってくれないなんて、なにを考えているのよ!?)
王城に来てからアマリリスの後をついて歩き、ルシアンとの接触を増やしてなんとか対等に会話できるまで近づいた。最近ではロベリアの方がルシアンのそばにいる時間が多いかもしれない。
(でもあくまで夜会に参加するだけなのよね……。アマリリスが婚約者として夜会に参加する前に、わたしがルシアン殿下に選ばれないと……どうしたらいいかしら?)
この夜会でアマリリスが婚約者だと周知されれば、それを覆すのはますます難しくなる。チャンスがあるとすれば夜会前夜までだ。
(ルシアン殿下の様子だと、わたしに気持ちが向いているのは間違いないのよね。きっと婚約者のアマリリスに悪いと思って遠慮してるんだわ)
真面目なルシアンのことだから婚約者に義理立てしているのだと、ロベリアは考える。そこでどうやってもロベリアを選ぶしかないように、既成事実を作るのはどうかと閃いた。
「そうよ、それしかないわ……!」
「ロベリア、なにか言った?」
「いいえ、なんでもないわ。うふふ、きっと夜会ではサプライズが待っているわよ」
「なんのこと?」
「ふふふ、サプライズだから内緒に決まっているじゃない。あんたはそんなこともわからないの?」
アマリリスはそこで口を閉ざした。再び本へ視線を落とし、分厚い本を読み進めていく。
ロベリアは夜会前夜に仕掛けるため、【アマリリスのことで相談がある】と書いたメモ紙を用意した。これをルシアンへさりげなく渡し、夜会前夜に私室を訪問するきっかけを作る。
あとは流れに身を任せて、ルシアンと一夜を過ごせば既成事実の出来上がりだ。
(初めてじゃないから、部屋を暗くしてもらって、朝までにシーツに血を垂らせば誤魔化せるわよね)
そうしてロベリアは、夜会の前日にルシアンへこっそりメモ紙を渡し夜を待った。
遅い時間の廊下は巡回する騎士しか通らない。薄暗い廊下を騎士に見つからないように進んで、ルシアンの部屋の扉を軽くノックした。
すぐに扉が開かれ、ラフな格好をしたルシアンが迎え入れてくれる。
「ああ、ルシアン殿下。ありがとうございます!」
「いや、むしろロベリアが来るのを待っていたよ」
そう言って笑みを浮かべたルシアンは、背筋が凍るほど冷たく美しかった。
「ですが、もし招待状を受け取れなかったら、わたしは夜会に参加できませんわ! 今回の夜会は絶対に参加したいのです!」
「まあ、姉であるアマリリスの婚約者披露の夜会だしね。最悪、招待状がなくても参加できるように手配しておくよ」
「まあ! ありがとうございます、ルシアン殿下!」
確実に夜会に参加できることになったロベリアは、満面の笑みで喜んだ。
だがロベリアの目的はそれだけではなかった。
ロベリアはルシアンに近づくためにアマリリスの侍女になった。本当はアマリリスの顔も見たくなかったが、ルシアンを奪うためだと割り切り、適当に話を合わせてタイミングを狙っている。
午後からはルシアンが国議に参加するので、アマリリスの私室でゆったりとお茶を飲みながら過ごしていた。アマリリスはなにやら小難しい本を読んで、勉強しているようだ。
そんなアマリリスを横目に、ロベリアは頭の中でルシアンを奪う作戦を練っている。
(なんとか夜会の参加はできるようにしたけれど、お父様ったら招待状も送ってくれないなんて、なにを考えているのよ!?)
王城に来てからアマリリスの後をついて歩き、ルシアンとの接触を増やしてなんとか対等に会話できるまで近づいた。最近ではロベリアの方がルシアンのそばにいる時間が多いかもしれない。
(でもあくまで夜会に参加するだけなのよね……。アマリリスが婚約者として夜会に参加する前に、わたしがルシアン殿下に選ばれないと……どうしたらいいかしら?)
この夜会でアマリリスが婚約者だと周知されれば、それを覆すのはますます難しくなる。チャンスがあるとすれば夜会前夜までだ。
(ルシアン殿下の様子だと、わたしに気持ちが向いているのは間違いないのよね。きっと婚約者のアマリリスに悪いと思って遠慮してるんだわ)
真面目なルシアンのことだから婚約者に義理立てしているのだと、ロベリアは考える。そこでどうやってもロベリアを選ぶしかないように、既成事実を作るのはどうかと閃いた。
「そうよ、それしかないわ……!」
「ロベリア、なにか言った?」
「いいえ、なんでもないわ。うふふ、きっと夜会ではサプライズが待っているわよ」
「なんのこと?」
「ふふふ、サプライズだから内緒に決まっているじゃない。あんたはそんなこともわからないの?」
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ロベリアは夜会前夜に仕掛けるため、【アマリリスのことで相談がある】と書いたメモ紙を用意した。これをルシアンへさりげなく渡し、夜会前夜に私室を訪問するきっかけを作る。
あとは流れに身を任せて、ルシアンと一夜を過ごせば既成事実の出来上がりだ。
(初めてじゃないから、部屋を暗くしてもらって、朝までにシーツに血を垂らせば誤魔化せるわよね)
そうしてロベリアは、夜会の前日にルシアンへこっそりメモ紙を渡し夜を待った。
遅い時間の廊下は巡回する騎士しか通らない。薄暗い廊下を騎士に見つからないように進んで、ルシアンの部屋の扉を軽くノックした。
すぐに扉が開かれ、ラフな格好をしたルシアンが迎え入れてくれる。
「ああ、ルシアン殿下。ありがとうございます!」
「いや、むしろロベリアが来るのを待っていたよ」
そう言って笑みを浮かべたルシアンは、背筋が凍るほど冷たく美しかった。
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