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41話 どんなに足掻いても①
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ロベリアはクレバリー侯爵家を自分のものにするため、計画を練っていた。
(——お兄様は女癖が悪かったわ……そうよ、前に言っていた女は、確かブロイル伯爵家の娘を婚約者から無理やり寝とったと自慢していたわよね? なんという名前の令嬢だったかしら……?)
エミリオの話にまったく興味のなかったロベリアはいつも聞き流していたが、ブロイル伯爵はバックマン公爵夫人の生家だったので覚えていた。だが、そこにエミリオを追い出すヒントが隠れているので、懸命に思い出そうとしていた。
しかし、どれだけ考えても名前が出てこなくて、メイドがいてもひとり言のようにブツブツと呟いている。
「うう~ん、ブロイル家の令嬢はアメリーじゃなくて、レスリー? 違うわね……ヒラリーでもないし……」
「もしかして、ナタリー様でしょうか?」
「そう! それだわ!」
口を挟んできたのは十年近く働いている古株のメイドだった。リネンの交換に来ていたが、思わずと言った様子で口を挟んできた。
「ああ~、スッキリしたわ。ところで、あんたはどうしてナタリーのことだとわかったの?」
「はい、私の生まれがブロイル伯爵領でしたので、もしかしたらと思ったのです」
「ふーん、そうなの。それじゃあ、今度は証拠を集めないといけないわね……」
ロベリアはそんな偶然があるのだなと思っただけで、すぐに次の問題へ思考を移す。
調査をさせてその証拠をダーレンの名前でバックマン公爵夫人に送りつければ、兄の非道を許せない妹として見直してもらえるかもしれない。
ダーレンにしても従妹の窮地を救ったとして、今後の援助が期待できる。
「ねえ、調査を依頼したいから、専門の業者を探してきてちょうだい」
「え? 調査ですか?」
「そうよ、なんでも調べてくれる業者よ! さっさとして!」
こうしてロベリアは調査の専門業者を使って、エミリオとナタリーのことを調べさせることにした。
それから二週間が経ち、ロベリアが依頼した調査内容が届けられた。書類や音声の記録を確認しロベリアとダーレンはニヤリと口角を上げる。
「うふふふ、これでお兄様をブロイル伯爵へ押し付けられるわ!」
「確かに……でもこれだけの会話内容や証拠を集めるなんて、いい仕事をするじゃないか」
「こんなに簡単に計画は進むなんて、きっとダーレン様がクレバリー侯爵家の当主になる運命だったのよ」
「まあ、私の手にかかれば領地経営で財を築くことくらいなんでもない」
しかもブロイル伯爵は社交シーズンが終わった今も王都のタウンハウスにいるらしく、計画を進めるのにはもってこいのタイミングだった。ロベリアはエミリオを追い込む証拠を手にしてほくそ笑む。
「これでクレバリー侯爵家はわたしたちのものになるわ……!」
(——お兄様は女癖が悪かったわ……そうよ、前に言っていた女は、確かブロイル伯爵家の娘を婚約者から無理やり寝とったと自慢していたわよね? なんという名前の令嬢だったかしら……?)
エミリオの話にまったく興味のなかったロベリアはいつも聞き流していたが、ブロイル伯爵はバックマン公爵夫人の生家だったので覚えていた。だが、そこにエミリオを追い出すヒントが隠れているので、懸命に思い出そうとしていた。
しかし、どれだけ考えても名前が出てこなくて、メイドがいてもひとり言のようにブツブツと呟いている。
「うう~ん、ブロイル家の令嬢はアメリーじゃなくて、レスリー? 違うわね……ヒラリーでもないし……」
「もしかして、ナタリー様でしょうか?」
「そう! それだわ!」
口を挟んできたのは十年近く働いている古株のメイドだった。リネンの交換に来ていたが、思わずと言った様子で口を挟んできた。
「ああ~、スッキリしたわ。ところで、あんたはどうしてナタリーのことだとわかったの?」
「はい、私の生まれがブロイル伯爵領でしたので、もしかしたらと思ったのです」
「ふーん、そうなの。それじゃあ、今度は証拠を集めないといけないわね……」
ロベリアはそんな偶然があるのだなと思っただけで、すぐに次の問題へ思考を移す。
調査をさせてその証拠をダーレンの名前でバックマン公爵夫人に送りつければ、兄の非道を許せない妹として見直してもらえるかもしれない。
ダーレンにしても従妹の窮地を救ったとして、今後の援助が期待できる。
「ねえ、調査を依頼したいから、専門の業者を探してきてちょうだい」
「え? 調査ですか?」
「そうよ、なんでも調べてくれる業者よ! さっさとして!」
こうしてロベリアは調査の専門業者を使って、エミリオとナタリーのことを調べさせることにした。
それから二週間が経ち、ロベリアが依頼した調査内容が届けられた。書類や音声の記録を確認しロベリアとダーレンはニヤリと口角を上げる。
「うふふふ、これでお兄様をブロイル伯爵へ押し付けられるわ!」
「確かに……でもこれだけの会話内容や証拠を集めるなんて、いい仕事をするじゃないか」
「こんなに簡単に計画は進むなんて、きっとダーレン様がクレバリー侯爵家の当主になる運命だったのよ」
「まあ、私の手にかかれば領地経営で財を築くことくらいなんでもない」
しかもブロイル伯爵は社交シーズンが終わった今も王都のタウンハウスにいるらしく、計画を進めるのにはもってこいのタイミングだった。ロベリアはエミリオを追い込む証拠を手にしてほくそ笑む。
「これでクレバリー侯爵家はわたしたちのものになるわ……!」
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