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27話 国王の提案①
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夜会の翌日、アマリリスは国王の執務室へ呼び出された。その理由は明白で、今後もルシアンに教育が必要かどうか国王が判断したということだ。
執務室へ続く廊下を一歩一歩進んでいく。
(ここで教育が必要ないとジャッジされれば、すぐにでもテオ兄様に会いにいこう)
東の国へ行くには王都を抜けて街道をひたすら進み、山を越えなければならない。幸い辺境伯の領地はフレデルト王国と南の国にまたがっており、山さえ越えればテオドールがいる辺境伯領となっている。
(移動に乗合馬車を使っても十日から二週間というところね。うーん、嫁ぎ先や就職先の斡旋を断って、成功報酬を金貨にしてほしいとお願いしてみようかしら)
テオドールと合流できたら次に次兄のユアンを探したいが、そうなると結婚や仕事は逆に足枷となる。ルシアンの教育が必要ないとなれば国王陛下の機嫌が悪いことはないだろう、とアマリリスは交渉することに決めた。
「失礼いたします。国王陛下、お呼びと伺いまいり——」
「リリス、待っていたよ」
「ルシアン様……! どうしてこちらに?」
てっきり国王陛下と話すものだと思っていたアマリリスは、ルシアンの姿もあることに面食らう。嫌な汗が背中を伝うが、ルシアンはいつも通り穏やかに微笑んでいた。
「うむ、今日の話はルシアンも同席させた方が良さそうだと判断した。そちらにかけてくれ」
国王陛下に促されるままビロードのソファーに腰かけてから、教育を終えるならそれもまた当然の判断だと思い直す。
王城に連行された時と同じように正面に国王陛下とルシアンが腰を下ろした。出されたお茶でカラカラになった喉を潤し、アマリリスは国王陛下の言葉を待った。
「昨夜の夜会でルシアンの行動を確認した。貴族たちと対等に渡り合い、さまざまな情報を引き出しておった。アマリリスの話題が多かったが、概ね満足のいく結果であった」
「それでは……!」
早速の国王陛下の嬉しい言葉に、アマリリスの期待は高まる。
「だけどね、僕としてはまだリリスから学びたいことがたくさんあるし、ずっとそばにいてほしい」
喜びも束の間、ルシアンの言葉でそう簡単には解放されないのだと思い知らされた。
しかもルシアンは国王陛下の前で、堂々とアマリリスを愛称呼びしている。さらにそばにいてほしいと明言され、逃げ道はあるのだろうかとアマリリスは考えた。
「ルシアンの教育もさることながら、なによりも大切な女性であると聞いておる」
どうやらルシアンが手を回したようで、すでに手遅れのようだ。
「ここまで強く女性を求めるルシアンは初めてでな。其方であれば王太子の正妃としても能力は十分だ。このまま正式な婚約を結んでもらいたい」
「…………」
アマリリスの心は絶望に染まる。
まさか今日、国王陛下からルシアンと婚約してほしいと言われるとは考えもしていなかった。拒絶を許さないような目に見えない圧力がかけられて、アマリリスは返事ができない。
(どうしてこうなるの……!? 王太子の婚約者なんて面倒なことしかないのよ! しかもあのサイコパス王太子の妃なんて荷が重すぎるわ!!)
執務室へ続く廊下を一歩一歩進んでいく。
(ここで教育が必要ないとジャッジされれば、すぐにでもテオ兄様に会いにいこう)
東の国へ行くには王都を抜けて街道をひたすら進み、山を越えなければならない。幸い辺境伯の領地はフレデルト王国と南の国にまたがっており、山さえ越えればテオドールがいる辺境伯領となっている。
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テオドールと合流できたら次に次兄のユアンを探したいが、そうなると結婚や仕事は逆に足枷となる。ルシアンの教育が必要ないとなれば国王陛下の機嫌が悪いことはないだろう、とアマリリスは交渉することに決めた。
「失礼いたします。国王陛下、お呼びと伺いまいり——」
「リリス、待っていたよ」
「ルシアン様……! どうしてこちらに?」
てっきり国王陛下と話すものだと思っていたアマリリスは、ルシアンの姿もあることに面食らう。嫌な汗が背中を伝うが、ルシアンはいつも通り穏やかに微笑んでいた。
「うむ、今日の話はルシアンも同席させた方が良さそうだと判断した。そちらにかけてくれ」
国王陛下に促されるままビロードのソファーに腰かけてから、教育を終えるならそれもまた当然の判断だと思い直す。
王城に連行された時と同じように正面に国王陛下とルシアンが腰を下ろした。出されたお茶でカラカラになった喉を潤し、アマリリスは国王陛下の言葉を待った。
「昨夜の夜会でルシアンの行動を確認した。貴族たちと対等に渡り合い、さまざまな情報を引き出しておった。アマリリスの話題が多かったが、概ね満足のいく結果であった」
「それでは……!」
早速の国王陛下の嬉しい言葉に、アマリリスの期待は高まる。
「だけどね、僕としてはまだリリスから学びたいことがたくさんあるし、ずっとそばにいてほしい」
喜びも束の間、ルシアンの言葉でそう簡単には解放されないのだと思い知らされた。
しかもルシアンは国王陛下の前で、堂々とアマリリスを愛称呼びしている。さらにそばにいてほしいと明言され、逃げ道はあるのだろうかとアマリリスは考えた。
「ルシアンの教育もさることながら、なによりも大切な女性であると聞いておる」
どうやらルシアンが手を回したようで、すでに手遅れのようだ。
「ここまで強く女性を求めるルシアンは初めてでな。其方であれば王太子の正妃としても能力は十分だ。このまま正式な婚約を結んでもらいたい」
「…………」
アマリリスの心は絶望に染まる。
まさか今日、国王陛下からルシアンと婚約してほしいと言われるとは考えもしていなかった。拒絶を許さないような目に見えない圧力がかけられて、アマリリスは返事ができない。
(どうしてこうなるの……!? 王太子の婚約者なんて面倒なことしかないのよ! しかもあのサイコパス王太子の妃なんて荷が重すぎるわ!!)
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