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60話 ライオネル様がいつもと違いますわ!!②
しおりを挟む「最近……ライル様の様子がいつもと違いましたので、他にお慕いする方ができたのだと思ったのですわ」
「なっ、そんな相手などいない! 僕が愛してるのはリアだけだ!」
「隠さなくても大丈夫です。わたくし常に覚悟してましたので、潔く身を引きますわ」
「どうしてそうなるんだ!? 僕はリア以外を愛することはない! どうして身を引くなんて——」
ライル様の言葉が途切れる。
堪えていた涙がポタポタと頬をつたってしまった。一度決壊したら、もう止められない。
屋敷に帰るまで堪えるつもりだったのに。
「だって……ライル様は、朝もランチも……わたくしと触れ合うのを避けていらっしゃったし、い、一度、膝に乗せていただいたら……ため息をつかれましたわ……」
「あ、あれは……」
「ですから、きっと……わたくしと婚約解消したいのだと……」
ライル様が固まったまま動かなくなってしまった。
わたくしは相変わらずボタボタと大粒の涙をこぼしている。
「リア、僕を見て」
ライル様の温かい大きな手が優しくわたくしの頬を包み込む。
「リア、他のことは考えないで僕だけを見て」
やっとライル様の瞳を見れば、そこには今まで感じたことがないような熱がこもっていた。
「僕が愛しているのはリアだけだ。僕の女神」
そしてライル様のアイスブルーの瞳が近づいてきて、ライル様の柔らかい唇が額に、頬に、瞼に、そして唇に落とされる。
そのまま啄むように、何度も角度を変えて口づけされてついにわたくしの涙は止まった。
ライル様は額を合わせて、劣情を秘めたアイスブルーの瞳でわたくしを見つめた。
「はあ、ごめん、リア。ずっとリアに口づけをしたくて、おかしな態度になっていたみたいだ」
「そう……なんですの?」
「うん、僕は不器用だからうまくリアを誘導できなくて、いろいろと試していたんだ。誤解させてごめん」
「……かった。……よかった、ライル様が、わたくしをまだ好きでいてくれて……!」
頬を染めて言い訳をするライル様はかわいらしくて、その理由に安堵する。
どうやらわたくしの勘違いだったようだ。ライル様のことになると、どうもうまくいかないものだ。
「リア。僕はリアしか愛せないから、覚悟して」
そうして降ってきた口づけは、今までのお遊びのような口づけではなく、わたくしを深くまで貪るようなものだった。
ライル様の熱が伝染して、わたくしも夢見心地で応える。だんだんと力が入らなくなって、背中からソファーに倒れてしまった。
そんなわたくしを逃さないと言わんばかりに、ライル様の艶めく唇が追いかけてくる。
ライル様がわたくしに覆いかぶさるように抱きしめてきて、頬が上気し赤くなっているのが自分でもわかった。
ライル様はわたくしの唇から離れたかと思ったら、今度は耳に舌を這わせる。
「ひゃぁっ!」
ゾクリとなにかが背中をかけあがり、奇妙な感覚に身体が震えた。
「ああ、リア。かわいい。こんなに僕を誘うような顔をされたら、もう止まれない」
掠れる声で耳元で囁かれ、わたくしはどうしていいのかわからない。
それなのにライル様は耳だけでなく、首の方へとリップ音を鳴らしながら下りていく。
「ラ、ライル様っ! 待って、あのっ……!」
「僕のリア、愛してる。かわいい。僕だけのリア」
ダメだ、ライル様が正気をなくしたようで暴走していた。
このまま流れに身を任せたら、まずいことはなんとなくわかる。
「ライル様っ!! これ以上はダメですわっ!」
わたくしの大声で、ライル様がハッと我に返り身体を起こして、慌ててわたくしの手を引いてくれた。
「すっ、すまない! リアがあまりにも愛しくて、こう抑えがきかず……すまない、もう触れないから捨てないでくれ!」
「お待ちください、捨てたりしませんし、嫌ではないのです!」
いつかのようにライル様が半泣きでわたくしに縋ってくる。
「え? 僕がこんな風に強引にしたから嫌だったのではないのか?」
「ライル様に触れられるのは嫌ではありません。ですがこれ以上は恥ずかしくて無理ですわっ!!」
「そう、か……すまない。そうか、触れるのは嫌ではないのか」
ホッとしたように眉尻を下げるライル様の様子から、もしかしてずっと不安を感じていたのかもしれない。そんな風に悩ませていたなら申し訳なく思う。
だって、わたくしもライル様にたくさん触れたい。
「はい、ですから……」
わたくしからライル様に触れるだけの口づけを落とす。
「これくらいの触れ合いなら、いつでも大歓迎ですわ」
みるみる赤くなるライル様がかわいらしくて、たまにはわたくしから口づけをしてみようと思った。
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