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57話 僕は思い悩む①
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僕のリアが可憐すぎて、害虫ばかりが寄ってくる。
迷子で声をかけた男児は「お姉ちゃんをお嫁さんにしたい」と言い出したので、リアは僕のものだから絶対に譲れないと理解させた。まだ子供だからと思っていたが油断ならない。
戻ってきたら偉そうなどこかの貴族に絡まれていた。
あいつらのリアを見る目には下心しかなかったから、二度と近づかないように追い払った。
祭壇にたどり着くまでも僕のリアに見惚れる男が多くてどうしたものかと思ったのだ。しかもリアがそのことにまったく気付いていない。
さっさと婚姻して、すべて僕のものにすれば安心できるのだろうか。
こんなに不安になるのは、僕が自分に自信を持てないからだ。
だって愛しいリアを前にしたら、本当に役に立たないダメ男になってしまう。
もしリアに拒絶されたら、みっともなく泣いて縋るのは間違いない。
マジックエンペラーになっても、そういうところは変わっていないんだ。
だから、今だけでも僕に独り占めさせてほしい。
嫉妬にまみれた醜い欲望は押し込めるから、僕にだけリアの笑顔を向けて。
僕だけをリアの瞳に映して。
そんな気持ちで転移魔法を使った。
「まあ! ここはキャンピングスクールで来た海岸ですわね!」
「うん、リアと一緒にこの海辺を散歩したかった」
「ふふ、わたくしもですわ。来年まで来られないかと思ったのですが、ライル様のお陰でこんなに早く夢が叶いましたわ!」
収穫祭が行われる頃には、海辺は冷たい風が吹き付けて観光客もいなくなる。シーズンオフは寂しい景色となっていた。
でも目の前の海は僕の悩みなんてちっぽけなんだと感じるくらい広くて、青い空を映して輝いていた。
黒髪に染めたリアは新鮮で、花が咲くような笑顔を浮かべてどんなものよりも眩しい。
張りがあり透き通る声で名前を呼ばれただけで、心が沸き立つ。
どれだけ愛情を示しても足りない。愛してるなんて言葉だけでは、この気持ちをあらわせない。
だけど愛しすぎて、いつかリアが僕から離れていくのではないかと、不安でしかたないのだ。
「リア」
「はい、ライル様」
「ずっと僕のそばにいてくれる?」
そんな陳腐な質問しか出てこない。
こんな情けない僕を晒し出すのが怖くて、少しでもリアによく見せたくて、短い言葉に隠して伝える。
「もちろんですわ。ライル様が嫌だと言ってもそばにいますわ!」
そんな風に僕の不安を包み込むリアには、きっとこれからも敵わない。
僕のリア。僕の女神。
「リア、愛してる」
愛してる以上の言葉があるなら今すぐ知りたい。
こんな僕でもいいと受け入れてくれるリアがいる奇跡に、心の中で感謝する。
「わたくしも、ライル様を愛してますわ」
柔らかな身体を抱き寄せて、僕のマントで包み込んだ。リアの花のような甘い香りと背中に回された手が温かくて、それだけで幸せだった。
あの後、ジュリアス様たちと大広場の外で合流して、帰りの馬車に乗り込んだ。
ジュリアス様たちも楽しんだようで馬車の中は平和でほんのり甘い空気が流れていた。
リアをマルグレン伯爵邸に送り、屋敷に戻ってきた僕はジークを呼びつける。
「ジーク、問題が発生した」
「問題? どうなさいました? 詳しく聞かせてください」
僕は今日リアと過ごした時間を簡潔に伝えた。
そして僕の密かな目標を知るジークは、話を聞き終わると思いっ切り呆れ返った様子でため息をついた。
「はあ!? そんなシチュエーションでキスができなかった!?」
「うん……いや、もう感極まってしまい、それだけで胸いっぱいで……」
「ええー……その空気でキスできなかったらいつするんですか?」
それでもいつものように「まあ、ライオネル様だからしかたないですね」と言いながらも僕の力になってくれるのだ。
僕の恋愛指南書である【恋人の心を繋ぎ止める99の方法】も、今は中級編を実践している。
初級編はすべてクリアして日々実践しているが、中級編はなかなかハードルが高い。
ここからはスキンシップが増えてくるので、情けない僕には勇気が必要なものばかりだ。
迷子で声をかけた男児は「お姉ちゃんをお嫁さんにしたい」と言い出したので、リアは僕のものだから絶対に譲れないと理解させた。まだ子供だからと思っていたが油断ならない。
戻ってきたら偉そうなどこかの貴族に絡まれていた。
あいつらのリアを見る目には下心しかなかったから、二度と近づかないように追い払った。
祭壇にたどり着くまでも僕のリアに見惚れる男が多くてどうしたものかと思ったのだ。しかもリアがそのことにまったく気付いていない。
さっさと婚姻して、すべて僕のものにすれば安心できるのだろうか。
こんなに不安になるのは、僕が自分に自信を持てないからだ。
だって愛しいリアを前にしたら、本当に役に立たないダメ男になってしまう。
もしリアに拒絶されたら、みっともなく泣いて縋るのは間違いない。
マジックエンペラーになっても、そういうところは変わっていないんだ。
だから、今だけでも僕に独り占めさせてほしい。
嫉妬にまみれた醜い欲望は押し込めるから、僕にだけリアの笑顔を向けて。
僕だけをリアの瞳に映して。
そんな気持ちで転移魔法を使った。
「まあ! ここはキャンピングスクールで来た海岸ですわね!」
「うん、リアと一緒にこの海辺を散歩したかった」
「ふふ、わたくしもですわ。来年まで来られないかと思ったのですが、ライル様のお陰でこんなに早く夢が叶いましたわ!」
収穫祭が行われる頃には、海辺は冷たい風が吹き付けて観光客もいなくなる。シーズンオフは寂しい景色となっていた。
でも目の前の海は僕の悩みなんてちっぽけなんだと感じるくらい広くて、青い空を映して輝いていた。
黒髪に染めたリアは新鮮で、花が咲くような笑顔を浮かべてどんなものよりも眩しい。
張りがあり透き通る声で名前を呼ばれただけで、心が沸き立つ。
どれだけ愛情を示しても足りない。愛してるなんて言葉だけでは、この気持ちをあらわせない。
だけど愛しすぎて、いつかリアが僕から離れていくのではないかと、不安でしかたないのだ。
「リア」
「はい、ライル様」
「ずっと僕のそばにいてくれる?」
そんな陳腐な質問しか出てこない。
こんな情けない僕を晒し出すのが怖くて、少しでもリアによく見せたくて、短い言葉に隠して伝える。
「もちろんですわ。ライル様が嫌だと言ってもそばにいますわ!」
そんな風に僕の不安を包み込むリアには、きっとこれからも敵わない。
僕のリア。僕の女神。
「リア、愛してる」
愛してる以上の言葉があるなら今すぐ知りたい。
こんな僕でもいいと受け入れてくれるリアがいる奇跡に、心の中で感謝する。
「わたくしも、ライル様を愛してますわ」
柔らかな身体を抱き寄せて、僕のマントで包み込んだ。リアの花のような甘い香りと背中に回された手が温かくて、それだけで幸せだった。
あの後、ジュリアス様たちと大広場の外で合流して、帰りの馬車に乗り込んだ。
ジュリアス様たちも楽しんだようで馬車の中は平和でほんのり甘い空気が流れていた。
リアをマルグレン伯爵邸に送り、屋敷に戻ってきた僕はジークを呼びつける。
「ジーク、問題が発生した」
「問題? どうなさいました? 詳しく聞かせてください」
僕は今日リアと過ごした時間を簡潔に伝えた。
そして僕の密かな目標を知るジークは、話を聞き終わると思いっ切り呆れ返った様子でため息をついた。
「はあ!? そんなシチュエーションでキスができなかった!?」
「うん……いや、もう感極まってしまい、それだけで胸いっぱいで……」
「ええー……その空気でキスできなかったらいつするんですか?」
それでもいつものように「まあ、ライオネル様だからしかたないですね」と言いながらも僕の力になってくれるのだ。
僕の恋愛指南書である【恋人の心を繋ぎ止める99の方法】も、今は中級編を実践している。
初級編はすべてクリアして日々実践しているが、中級編はなかなかハードルが高い。
ここからはスキンシップが増えてくるので、情けない僕には勇気が必要なものばかりだ。
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