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52話 わたくしは間違いなく幸せですわ
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ライル様の転移魔法でひと足先にタウンハウスへ戻ってきたわたくしは、お父様とお母様の帰りを待った。
幸いあの後すぐに帰路についたようで、一時間もせずに戻ってきた。
「ハーミリア! やはり先に戻ってきていたのか!」
「どれだけ心配かけるの、ハーミリア!」
「お父様! お母様! ごめんなさい……」
わたくしのために立ち向かってくれたお父様、仕方ないこととはいえ悲しい思いをさせたお母様。ふたり涙を浮かべて優しく抱擁してくれる。
「勝手なことばかりして……」
耳元で聞こえるお父様の掠れた声が震えていた。
「お父様、ごめんなさい。でも助けようとしてくれてありがとう。間違いなく、世界一のお父様だわ」
その言葉でやっとお父様は笑顔を見せてくれた。
「お母様も、突然縁を切ると言ってごめんなさい……」
「ハーミリアがなにを考えていたかは、わかっているわ。でもね、それでも私は貴女の母なのよ。ともに沈んだってかまわないの」
「お母様……ありがとう。本当に大好きですわ」
こんな愛情深い両親の娘で本当によかった。わたくしからあふれる愛情は、きっと両親が惜しみなく注いでくれたからなのだろう。
両親の温もりを感じながら、涙がひと筋落ちていった。
そしていつもの日常が戻ってきた。
タックス侯爵家の家紋が飾られた馬車は、いつもの時間にわたくしを迎えにやってくる。
そこから降り立つのは、陽の光を浴びてキラキラと輝く青みがかった銀髪に、アイスブルーの瞳を柔らかく細めたライル様だ。
「リア、おはよう。迎えにきたよ」
「ライル様、おはようございます。ふふ、今日も麗しくて素敵ですわ」
「リアの可憐さには敵わないよ。それに今日のリボンはとてもよく似合ってる」
わたくしの髪に飾られているのは、光沢のあるシルバーの生地に小粒のアクアマリンが装飾されたリボンだ。ライル様をイメージして特別にあつらえたものだった。
「ありがとうございます。ライル様をイメージして作りましたの」
「うん、いいね。次は僕がプレゼントしよう」
「まあ! では一緒に選ばせてほしいですわ! 今度はアイスブルーの生地のリボンを考えてましたの!」
「では馬車の中で予定を立てよう」
「はい!」
ライル様とピッタリと寄り添いながら、登校中の馬車の中でデートの予定を立てていく。
こんな当たり前のような日常が、とても大切なものだったのだと実感したのだった。
「ああ、そうだ。リアのクラスだけど、僕と同じクラスに戻したから」
「えっ! でもわたくしだけころころとクラスを変えたら、よろしくないと思うのですが……?」
「そもそも、あの王女が勝手なことをしただけだから問題ない」
マリアン様は現在、王城の外れにある西棟で、嫁ぐ準備ができるのを待っていた。厳しい処分が降ってしまったけど、大人しくその時を待っているそうだ。
「そ、そうですか。それならいいのです。あ、そうだわ。今日は殿下とシルビア様と四人でランチの日なので、焼き菓子を作ってきたのです」
「……っ!!」
いつの間にか週に二回ほど、王太子殿下とシルビア様と四人でランチタイムを過ごすのが定番となっていた。
最初は王太子殿下を含めた三人だったが、ライル様に提案されてシルビア様にも声をかけたのがきっかけだ。
そこで気づいたのだが、どうやら王太子殿下はシルビア様のことが好きらしい。シルビア様に向ける視線が、他の人に向けるものと明らかに違う。
ただシルビア様は王太子殿下の婚約者候補という態度から変わりがないので、王太子殿下の恋が叶うかはわからない。卒業式のその日まで、後一年半ある。
わたくしはシルビア様が幸せになる未来を願っていた。
「リアの手作りか……?」
「ええ、そうですわ。もしかして殿下にお出しするのに、やはり手作りではダメだったかしら? それなら、お出ししない方がよろしいですわね」
「いや、違うんだ! リアの手作りの焼き菓子を他人の口に入るのが許せないだけだ!」
「そういうことでしたの……?」
こんな些細なことでもヤキモチを焼いてくれるライル様と、どんなに冷たくされてもあきらめなかったわたくしと、どちらの愛が重いのか。
その結論は出ないけど、わたくしは間違いなく幸せだ。
幸いあの後すぐに帰路についたようで、一時間もせずに戻ってきた。
「ハーミリア! やはり先に戻ってきていたのか!」
「どれだけ心配かけるの、ハーミリア!」
「お父様! お母様! ごめんなさい……」
わたくしのために立ち向かってくれたお父様、仕方ないこととはいえ悲しい思いをさせたお母様。ふたり涙を浮かべて優しく抱擁してくれる。
「勝手なことばかりして……」
耳元で聞こえるお父様の掠れた声が震えていた。
「お父様、ごめんなさい。でも助けようとしてくれてありがとう。間違いなく、世界一のお父様だわ」
その言葉でやっとお父様は笑顔を見せてくれた。
「お母様も、突然縁を切ると言ってごめんなさい……」
「ハーミリアがなにを考えていたかは、わかっているわ。でもね、それでも私は貴女の母なのよ。ともに沈んだってかまわないの」
「お母様……ありがとう。本当に大好きですわ」
こんな愛情深い両親の娘で本当によかった。わたくしからあふれる愛情は、きっと両親が惜しみなく注いでくれたからなのだろう。
両親の温もりを感じながら、涙がひと筋落ちていった。
そしていつもの日常が戻ってきた。
タックス侯爵家の家紋が飾られた馬車は、いつもの時間にわたくしを迎えにやってくる。
そこから降り立つのは、陽の光を浴びてキラキラと輝く青みがかった銀髪に、アイスブルーの瞳を柔らかく細めたライル様だ。
「リア、おはよう。迎えにきたよ」
「ライル様、おはようございます。ふふ、今日も麗しくて素敵ですわ」
「リアの可憐さには敵わないよ。それに今日のリボンはとてもよく似合ってる」
わたくしの髪に飾られているのは、光沢のあるシルバーの生地に小粒のアクアマリンが装飾されたリボンだ。ライル様をイメージして特別にあつらえたものだった。
「ありがとうございます。ライル様をイメージして作りましたの」
「うん、いいね。次は僕がプレゼントしよう」
「まあ! では一緒に選ばせてほしいですわ! 今度はアイスブルーの生地のリボンを考えてましたの!」
「では馬車の中で予定を立てよう」
「はい!」
ライル様とピッタリと寄り添いながら、登校中の馬車の中でデートの予定を立てていく。
こんな当たり前のような日常が、とても大切なものだったのだと実感したのだった。
「ああ、そうだ。リアのクラスだけど、僕と同じクラスに戻したから」
「えっ! でもわたくしだけころころとクラスを変えたら、よろしくないと思うのですが……?」
「そもそも、あの王女が勝手なことをしただけだから問題ない」
マリアン様は現在、王城の外れにある西棟で、嫁ぐ準備ができるのを待っていた。厳しい処分が降ってしまったけど、大人しくその時を待っているそうだ。
「そ、そうですか。それならいいのです。あ、そうだわ。今日は殿下とシルビア様と四人でランチの日なので、焼き菓子を作ってきたのです」
「……っ!!」
いつの間にか週に二回ほど、王太子殿下とシルビア様と四人でランチタイムを過ごすのが定番となっていた。
最初は王太子殿下を含めた三人だったが、ライル様に提案されてシルビア様にも声をかけたのがきっかけだ。
そこで気づいたのだが、どうやら王太子殿下はシルビア様のことが好きらしい。シルビア様に向ける視線が、他の人に向けるものと明らかに違う。
ただシルビア様は王太子殿下の婚約者候補という態度から変わりがないので、王太子殿下の恋が叶うかはわからない。卒業式のその日まで、後一年半ある。
わたくしはシルビア様が幸せになる未来を願っていた。
「リアの手作りか……?」
「ええ、そうですわ。もしかして殿下にお出しするのに、やはり手作りではダメだったかしら? それなら、お出ししない方がよろしいですわね」
「いや、違うんだ! リアの手作りの焼き菓子を他人の口に入るのが許せないだけだ!」
「そういうことでしたの……?」
こんな些細なことでもヤキモチを焼いてくれるライル様と、どんなに冷たくされてもあきらめなかったわたくしと、どちらの愛が重いのか。
その結論は出ないけど、わたくしは間違いなく幸せだ。
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