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44話 僕のハーミリアを守るために②
しおりを挟む一分でも早くリアのもとに帰るため、最短でマジックエンペラーを目指したいので余計なことをしている暇はないのだ。
「ええ、条件などはありますか?」
「あ……いえ、ここまで自力で来られた方なら大丈夫ですが、マジックエンペラーの試験は特殊で事前にこちらの書類に署名をいただくことになっています」
受け取った書類には、試験中になにが起きても自己責任で、万が一死んだとしても魔法連盟は責任を負わないと書かれていた。そんなことなら問題ないと、サラサラと署名する。
「では、これでお願いします。今すぐ試験を受けさせてほしい」
「は、はい……少々お待ちください」
受付の女性が案内してくれたのは、王城の地下にある試験専用の部屋だ。少し待っていると、転移魔法でひとりの魔道士が現れた。濃紫のローブを羽織り、不機嫌そうに口元を曲げている。フードの下からは真紅の瞳が覗いている。
「マジックエンペラーの試験を受けたいのはお前か?」
「はい、ライオネル・タックスと申します」
「ったく、オレの安眠の邪魔しやがって。タイミング選べよ!」
「それは申し訳ありません。ですが僕も急いでますので」
「ああ? んなこと知るか! とにかく、これから特殊な結界の中に送ってやるから、そこから自力で出てこい! 転移魔法使わないと出てこれないからな! いいな!?」
「はい、お願いします」
試験を受けさせてくれるなら問題ないと同意した次の瞬間、真っ白な光に包まれ思わず目をつぶる。
光が収まったようなので恐る恐る目を開けると、鬱蒼と木が生い茂る森の中にいた。
「ここは魔境の森だ。魔物がわんさか湧いて、超強力な結界の中だから物理的な方法で外に出られない。ここから出る方法はひとつ転移魔法を使うことだ」
「なるほど、では転移魔法を使えれば合格ということですね」
「あ、ああ……わかってると思うけど、転移魔法は全属性を鍛え上げて尚且つ鍛錬しないと使えない。使えなければいつか魔物の餌になる。死ぬかもしれない危険な試験だ」
さっきまで機嫌の悪そうだった試験官は、慌てた様子で注意事項を説明してくれた。意外と心配性な人なのかもしれない。
「問題ありません、では早速鍛錬を始めます」
「おい、お前……ライオネルと言ったか。なんでいきなりこんな危ねえ試験受けた?」
「……この世の誰よりも愛しい人を守るためです」
「はっ、女のためか! そんな奴は初めてだ、面白え。ライオネル、必ず生きて戻ってこいよ」
「もちろんです。彼女のそばにいたいですから」
そうして試験官が転移魔法で姿を消した後、名前を聞き忘れたと思った。
「まあ、戻れば合格だと言っていたし、なんとかなるか」
それから僕はひたすら襲いかかる魔物を倒して、食料は自給自足で魔物を倒しては火魔法で炙って食し、木の実や果実を採取して餓えを凌いだ。
こうして不得手な火属性を徹底的に鍛え上げてまずは上級の炎属性の魔法を使えるようにした。
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