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22話 ライオネル様の本気がハンパないですわ!!②
しおりを挟む「……お待ちください、それではお見舞いの時はどなたとお話しされてましたの?」
「いや、それは——」
途端に口ごもるライオネル様に、わたくしは詰め寄る。つい先ほどライオネル様はヤキモチを焼いてほしいと希望したばかりだ。
「ライオネル様、わたくし今かつてないほどヤキモチを焼いておりますわ。お相手はどなたですの?」
「うっ、だから、別にやましいことはないんだが……」
「それでしたら、はっきりとおっしゃってくださいませ!」
グッと詰まったライオネル様は、小さくため息をついて観念したとばかりに口を開いた。
「……ジ、ジークだ……」
「乳母兄弟のジークですか?」
「うん、僕がハーミリアの前だと気持ちが昂ってなにも話せなくなるから、ジークに通信機でこっそり助けてもらっていたんだ」
「…………」
なるほど、ライオネル様がスラスラとお話ししていたバックにはジークがいたのなら納得だ。するとライオネル様が、あの時を思い出したのか瞳を潤ませて縋ってきた。
「すまないっ! どうしてもハーミリアに捨てられたくなくて、あの時は必死だったんだ!」
「もう、そんなことしなくてもわたくしの気持ちは変わりませんのよ。でも……ふふっ、嬉しいですわ」
「ああ、ハーミリアはなんて心が広いんだ! さすが僕の女神だっ!!」
こうして平和にランチの時間が終わった。周りの視線が生温かったのはきっと気のせいだと思う。
そして帰りの馬車の中もライオネル様はラブラブバカップルを目指すべく、努力を惜しまなかった。
「ライオネル様、帰りの馬車の中はもうよろしいのではないかしら?」
「なにがだ?」
「その、ラブラブバカップルに向けての努力は、学院の中だけで十分ではございませんか?」
わたくしは今、ライオネル様の膝の上に横向きで座らされている。ガッチリと腰を掴まれて、身動きが取れない。
「……足りない」
「え?」
「今まで我慢しすぎたから、これでも足りない」
「ええっ!?」
ライオネル様はわたくしをきつく抱きしめて、その熱い想いをこぼした。
「本当は侯爵家の屋敷に連れ込んで、朝から晩まで、いや、もう二十四時間ずっと一緒にいたいんだ。そして他の奴らなんて瞳に入らないように、僕だけ見ていてほしい」
「わたくしはライオネル様しか見てませんわ」
そんなにわたくしを想っていてくれたのかと、歓喜に包まれた。
* * *
その頃、学院にある王族しか使えない貴賓室で、王太子と側近たちが全校生徒が参加するキャンピングスクールの準備を進めていた。
王太子の眉間には深いシワが刻まれ、なにかに必死に耐えているようだった。
《ハーミリア、僕には君だけだ》
《わたくしもですわ、ライオネル様》
ライオネルから渡されたイヤーカフ型の通信機から流れてくるのは、聞いていてこっちが恥ずかしくなるような言葉のやり取りだ。婚約者の命が狙われたから、しばらくは王太子のそばを離れると用意してきたのだ。
そういうことならと、王太子は通信機を受け取り、この一週間は学院にいる間ずっとつけていた。
「……なあ、しばらくライオネルに側近としての休みをやってもいいか?」
「殿下、突然どうされたのですか?」
「先日の事件から私のそばにいれなくなると、ライオネルから通信機を渡されたんだが、胸焼けしそうなんだ」
「はあ、胸焼けですか?」
朝から下校まで、ずっとライオネルが婚約者に囁く甘い言葉を有無を言わさず聞かされてきて、限界だった。
ライオネルが幸せになるのはいいのだ。王太子として臣下を祝福する気持ちはある。
しかしあれ程クールだったライオネルが想い人に向ける甘い様子を、ずっと聞かされ続けるのは無理だ。
「まさかこんな風に変わるとは思わなかった……」
「ああ、ハーミリア嬢に対しては相当拗らせてましたからね。やっと素直になってよかったじゃないですか」
「それが、素直すぎてつらいんだ……」
「……わかりました。ではその間はみんなでフォローしましょう」
「頼む、私のためだと思ってくれ」
そっと通信機を外して、しばらく側近としての休暇を与えると書いた手紙をつけ、タックス侯爵家へ送った。
ハーミリアとライオネルは、ラブラブバカップル認定に向けて努力を惜しまなかった。最初の犠牲者が王太子ではあったが、順調に成果を積んでいた。
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