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20話 思い通りにできない王女②
しおりを挟むその後もライオネル様に声はかけるけれど、どこか上の空でふたりきりのランチの時間を作れない。そうこうしているうちに一週間が過ぎた。
「なんですって! それは本当なの!?」
「はい、明日にはハーミリアさんが登校するとライオネル様から聞きました」
「まったくしぶといんだから、どこまでも邪魔な存在ね、伯爵令嬢の分際で……!!」
あまりの悔しさに、手に持っていたサンドイッチを思わず握りつぶしてしまった。
やはりあの生意気な女を排除しないとダメらしい。さまざまな方法を考えていく。
あの女を排除するついでに、私の評判も上げられるよう手を回そう。そうだわ、最後にもう一度だけあの男爵令嬢にチャンスをあげましょう。
「ローザ、テオフィル、いいことを思いついたわ。これからモロン男爵家に行くわよ」
「モロン男爵家ですか?」
「ええ、テオフィルは面識があるわね? あの役に立たなかった女に会えるように話を通してちょうだい。ハーミリアにけしかけて排除できれば、私が王族としてその場を収めて男爵令嬢に慈悲を与えるわ」
賭けの要素があるけれど、もし失敗しても私に害はないから問題ない。
「ですが、ライオネル様が黙っておられないのでは?」
「それなら私が気を逸らして引き止めるわ」
この学院で王族である私や王太子から声をかけられて、無視できる貴族の人間などいない。必ず立ち止まり真摯に対応するのだ。
そう思っていたのに、翌朝、ライオネル様の変貌ぶりに私は激しく混乱した。
「ハーミリア、さあ、僕が教室まで送っていこう。ほら、余所見してはダメだろう? 僕だけ見つめていて」
「はっ、はい……!」
目の前にいるのは、本当にあのライオネル様だろうか?
いつも怜悧で隙のない笑顔を浮かべて、ハーミリアには視線すら向けなかったのに。
目の前にいるライオネル様は、今まで見たこともないようなとろける笑顔を浮かべてハーミリアしか瞳に映していない。
「ライオネル様、学院では今までと同じようになさってもかまいませんわよ?」
「それは無理だ。逆にもう抑えがきかない」
しかも続いた言葉にどういう意味かと頭をかしげる。
もう抑えがきかない? それでは今まで我慢していたというの?
ハーミリアには、まるで宝物のように優しく触れて、他の者には決して見せない表情を?
こんな切望するように熱く求める気持ちを?
——どういうことなの!?
私が動けないでいると、地獄のような痛みで半ば正気を失いかけている男爵令嬢がふたりの前に姿を現した。
呆然としている間にライオネル様が男爵令嬢を氷漬けにして、あっという間に事件を解決してしまう。私の出番はなくなり、その場に取り残されても動くことができなかった。
どうして、どうしてこうなるの! 私の計画は完璧だったはずなのに!!
どうしてうまくいかないの!? ライオネル様は私の夫になるのよっ!!
やってきたローザとテオフィルを無視して、私は策を巡らすために生徒会室に向かった。
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