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17話 ライオネル様が溺愛モード全開ですわ!!①

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 ライオネル様と想いが通じた二日後、わたくしはいつものように迎えにやってくるライオネル様の馬車に乗り込んだ。

「ライオネル様、おはようございます」
「ハーミリア、おはよう。ああ、今日も麗しいな」
「っ! ラ、ライオネル様には敵いませんわ」
「なにを言っている? 君ほど可愛らしくて美しくて天使のような女性はいない」
「そ、そうですか! は、は、早く行きませんと、遅れてしまいますわ!!」

 ライオネル様が溺愛モード全開で朝から攻めてくる。

 今までが嘘みたいに、甘く柔らかく愛しくてたまらないと言わんばかりに見つめられて、神々しいほどの笑顔を浮かべている。

 ただでさえ早鐘を打つように動く心臓は、壊れそうなほど激しく鼓動していた。

「それよりも、魔道士を手配してくださって本当にありがとうございました。お陰様ですっかり元通りですわ」
「本当に元気になってよかった……」

 そう言って切なそうにアイスブルーの瞳を細める。

 ライオネル様が贈ってくださったブレスレットが、わたくしの身代わりとなって砕けたのは残念だけれどその愛の深さを知ることができた。
 本当に出会った時から大切にされていたのだと、魔道士が帰った後ひとりで嬉し泣きしてしまった。

 その後もライオネル様の行動を振り返ってみて、その愛の深さにベッドでのたうち回っていた。
 やっと眠れたのは空が白み始めてからだ。

「でもいったい誰がこんなことをしたのかしら?」
「それは僕がちゃんと処分しておいたから、ハーミリアは気にしなくていい」
「え? 昨日の今日ですわよ?」
「ふっ、ハーミリアに敵意を向ける存在を放置などできるわけないだろう?」

 どういうことかと聞こうとしたタイミングで、馬車は学院に着いてしまった。


 ライオネル様にエスコートされて馬車から降りると、生徒たちの注目が集まる。
 ライオネル様はもともと人気のあるお方だし、普段休むことのないわたくしが一週間にわたって学院を休んでいたからだろう。

「ハーミリア、さあ、僕が教室まで送っていこう。ほら、余所見してはダメだろう? 僕だけ見つめていて」
「はっ、はい……!」

 ライオネル様の見たことがないようなとろけきった表情に、登校中の学生たちがざわめいた。
 だが、なにより一番衝撃を受けているのは、このわたくしだ。

「ライオネル様、学院では今までと同じようになさってもかまいませんわよ?」
「それは無理だ。逆にもう抑えが利かない」

 ええええええ! それはちょっと極端すぎませんか? いえ、嬉しいのだけれども!!

 ざわめきは校舎まで広がっていて、いたたまれなくて教室へと急ごうとした。

「ああ、そうだ。今日からハーミリアは僕と同じクラスにしてもらった。今後はずっとそばにいて守るから」
「へ? そ、そんなことできますの?」

 怜悧な微笑みを浮かべたライオネル様に背中がゾクリとするけれど、それがまたたまらない。ライオネル様の新たな一面を見られたわ! と喜んでいるわたくしも大概なので、もしかしたら似た者カップルなのではないか。

「ハーミリアは僕の隣の席と決まっているから、そのつもりでいて」 
「まあ、それでは授業に身が入りませんわ」
「どうして?」
「だってライオネル様ばかり見てしまいますもの」
「ハーミリア……それなら放課後は一緒に復習しよう。僕はもう学業を修めているから教えてあげるよ」
「さすがライオネル様です! わたくしにはすぎた婚約者ですわ」

 周囲の空気が若干おかしい気がしたけれど、そんなことは気にならない。ざわつきはどんどん大きくなり、やがて数人の生徒たちが短い悲鳴をあげる。
 ライオネル様の甘い魅力に浮かれていたわたくしは、ある女生徒が近づいてきているのに気が付かなかった。



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