17 / 62
17話 ライオネル様が溺愛モード全開ですわ!!①
しおりを挟むライオネル様と想いが通じた二日後、わたくしはいつものように迎えにやってくるライオネル様の馬車に乗り込んだ。
「ライオネル様、おはようございます」
「ハーミリア、おはよう。ああ、今日も麗しいな」
「っ! ラ、ライオネル様には敵いませんわ」
「なにを言っている? 君ほど可愛らしくて美しくて天使のような女性はいない」
「そ、そうですか! は、は、早く行きませんと、遅れてしまいますわ!!」
ライオネル様が溺愛モード全開で朝から攻めてくる。
今までが嘘みたいに、甘く柔らかく愛しくてたまらないと言わんばかりに見つめられて、神々しいほどの笑顔を浮かべている。
ただでさえ早鐘を打つように動く心臓は、壊れそうなほど激しく鼓動していた。
「それよりも、魔道士を手配してくださって本当にありがとうございました。お陰様ですっかり元通りですわ」
「本当に元気になってよかった……」
そう言って切なそうにアイスブルーの瞳を細める。
ライオネル様が贈ってくださったブレスレットが、わたくしの身代わりとなって砕けたのは残念だけれどその愛の深さを知ることができた。
本当に出会った時から大切にされていたのだと、魔道士が帰った後ひとりで嬉し泣きしてしまった。
その後もライオネル様の行動を振り返ってみて、その愛の深さにベッドでのたうち回っていた。
やっと眠れたのは空が白み始めてからだ。
「でもいったい誰がこんなことをしたのかしら?」
「それは僕がちゃんと処分しておいたから、ハーミリアは気にしなくていい」
「え? 昨日の今日ですわよ?」
「ふっ、ハーミリアに敵意を向ける存在を放置などできるわけないだろう?」
どういうことかと聞こうとしたタイミングで、馬車は学院に着いてしまった。
ライオネル様にエスコートされて馬車から降りると、生徒たちの注目が集まる。
ライオネル様はもともと人気のあるお方だし、普段休むことのないわたくしが一週間にわたって学院を休んでいたからだろう。
「ハーミリア、さあ、僕が教室まで送っていこう。ほら、余所見してはダメだろう? 僕だけ見つめていて」
「はっ、はい……!」
ライオネル様の見たことがないようなとろけきった表情に、登校中の学生たちがざわめいた。
だが、なにより一番衝撃を受けているのは、このわたくしだ。
「ライオネル様、学院では今までと同じようになさってもかまいませんわよ?」
「それは無理だ。逆にもう抑えが利かない」
ええええええ! それはちょっと極端すぎませんか? いえ、嬉しいのだけれども!!
ざわめきは校舎まで広がっていて、いたたまれなくて教室へと急ごうとした。
「ああ、そうだ。今日からハーミリアは僕と同じクラスにしてもらった。今後はずっとそばにいて守るから」
「へ? そ、そんなことできますの?」
怜悧な微笑みを浮かべたライオネル様に背中がゾクリとするけれど、それがまたたまらない。ライオネル様の新たな一面を見られたわ! と喜んでいるわたくしも大概なので、もしかしたら似た者カップルなのではないか。
「ハーミリアは僕の隣の席と決まっているから、そのつもりでいて」
「まあ、それでは授業に身が入りませんわ」
「どうして?」
「だってライオネル様ばかり見てしまいますもの」
「ハーミリア……それなら放課後は一緒に復習しよう。僕はもう学業を修めているから教えてあげるよ」
「さすがライオネル様です! わたくしにはすぎた婚約者ですわ」
周囲の空気が若干おかしい気がしたけれど、そんなことは気にならない。ざわつきはどんどん大きくなり、やがて数人の生徒たちが短い悲鳴をあげる。
ライオネル様の甘い魅力に浮かれていたわたくしは、ある女生徒が近づいてきているのに気が付かなかった。
18
お気に入りに追加
2,748
あなたにおすすめの小説
変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!
utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑)
妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?!
※適宜内容を修正する場合があります
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【完結】引きこもりが異世界でお飾りの妻になったら「愛する事はない」と言った夫が溺愛してきて鬱陶しい。
千紫万紅
恋愛
男爵令嬢アイリスは15歳の若さで冷徹公爵と噂される男のお飾りの妻になり公爵家の領地に軟禁同然の生活を強いられる事になった。
だがその3年後、冷徹公爵ラファエルに突然王都に呼び出されたアイリスは「女性として愛するつもりは無いと」言っていた冷徹公爵に、「君とはこれから愛し合う夫婦になりたいと」宣言されて。
いやでも、貴方……美人な平民の恋人いませんでしたっけ……?
と、お飾りの妻生活を謳歌していた 引きこもり はとても嫌そうな顔をした。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
私の頑張りは、とんだ無駄骨だったようです
風見ゆうみ
恋愛
私、リディア・トゥーラル男爵令嬢にはジッシー・アンダーソンという婚約者がいた。ある日、学園の中庭で彼が女子生徒に告白され、その生徒と抱き合っているシーンを大勢の生徒と一緒に見てしまった上に、その場で婚約破棄を要求されてしまう。
婚約破棄を要求されてすぐに、ミラン・ミーグス公爵令息から求婚され、ひそかに彼に思いを寄せていた私は、彼の申し出を受けるか迷ったけれど、彼の両親から身を引く様にお願いされ、ミランを諦める事に決める。
そんな私は、学園を辞めて遠くの街に引っ越し、平民として新しい生活を始めてみたんだけど、ん? 誰かからストーカーされてる? それだけじゃなく、ミランが私を見つけ出してしまい…!?
え、これじゃあ、私、何のために引っ越したの!?
※恋愛メインで書くつもりですが、ざまぁ必要のご意見があれば、微々たるものになりますが、ざまぁを入れるつもりです。
※ざまぁ希望をいただきましたので、タグを「ざまぁ」に変更いたしました。
※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法も存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。
【完結】悪女を押し付けられていた第一王女は、愛する公爵に処刑されて幸せを得る
甘海そら
恋愛
第一王女、メアリ・ブラントは悪女だった。
家族から、あらゆる悪事の責任を押し付けられればそうなった。
国王の政務の怠慢。
母と妹の浪費。
兄の女癖の悪さによる乱行。
王家の汚点の全てを押し付けられてきた。
そんな彼女はついに望むのだった。
「どうか死なせて」
応える者は確かにあった。
「メアリ・ブラント。貴様の罪、もはや死をもって以外あがなうことは出来んぞ」
幼年からの想い人であるキシオン・シュラネス。
公爵にして法務卿である彼に死を請われればメアリは笑みを浮かべる。
そして、3日後。
彼女は処刑された。
【1/21取り下げ予定】悲しみは続いても、また明日会えるから
gacchi
恋愛
愛人が身ごもったからと伯爵家を追い出されたお母様と私マリエル。お母様が幼馴染の辺境伯と再婚することになり、同じ年の弟ギルバードができた。それなりに仲良く暮らしていたけれど、倒れたお母様のために薬草を取りに行き、魔狼に襲われて死んでしまった。目を開けたら、なぜか五歳の侯爵令嬢リディアーヌになっていた。あの時、ギルバードは無事だったのだろうか。心配しながら連絡することもできず、時は流れ十五歳になったリディアーヌは学園に入学することに。そこには変わってしまったギルバードがいた。電子書籍化のため1/21取り下げ予定です。
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる