15 / 62
15話 男爵令嬢の誤算①
しおりを挟む痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!
わたしは気が狂いそうな痛みに耐えるしかできなかった。
やっと眠れたと思っても、すぐに痛みで目が覚める。
ベッドで横になってジッとしていても痛みが引くことはない。終わることのない痛みに正気を保っていられなかった。
どうして、私がこんな目にあわなければいけないの?
わたしがなにをしたっていうの?
全部あの方のいう通りにしたのに、ちっともうまくいかなかった。
あの女に呪いをかければ、私はライオネル様に選ばれるはずだった。
どうして、どうして、どうして——!!
あの方に声をかけられたのは、ほんの一週間前のことだ。
いつものようにハーミリアはライオネル様の隣にふさわしくないとわからせるために、黒板に書いたり机の上からバケツの水をかけてやった。
それなのに、なんでもない顔で「まあ、ちょうどよかったわ。机が汚れてきたから綺麗にしたかったの! どなたかしら? お礼を言いたいわ」なんてわけのわからないことを言った。
その言葉で馬鹿にされているのだと理解した。
一気に頭に血が昇ってすぐさま怒鳴りつけたかったけど、相手は伯爵令嬢だ。いくら学院の中とはいっても身分の問題はゼロにはならない。
わたしが名乗り出たところで、処罰を受けるのは目に見えていた。だから悔しくて悔しくて、ギリギリと奥歯を噛みしめた。
「貴女、モロン男爵家のドリカさんね」
「……えっ? はっ、失礼いたしました。マリアン王女様!」
意外な人物から声をかけられて、慌てて慣れないカーテシーを返す。
男爵令嬢の私に声をかけてもらえるなんて思ってもみなかった。第三王女のマリアン様は国王陛下と王妃殿下から深い寵愛を受けている末王女だ。そんな雲の上の方がいったいなんの用で声をかけてきたのか。
マリアン王女の後ろには、トライデン公爵家の令嬢ローザ様と、シュミレイ辺境伯の次男テオフィル様が控えている。
しかも、わたしの名前までご存じだなんて……なにか失敗してしまったのかしら?
「頭を上げてちょうだい。同じ学院の生徒なのだから、そんなにかしこまらないでほしいわ」
「はい、ありがとうございます……」
そろそろと顔を上げれば、輝く金色の波打つ髪は腰で揺れ、翡翠のような澄んだ瞳は吸い込まれそうだ。気品に満ちた佇まいに、自分との格の違いを見せつけられる。
「ねえ、貴女。ライオネル様をお慕いしているの?」
「えっ、いえ、そんなわたしがライオネル様をお慕いするなんて、とんでもないです」
「そう? 残念ね。とてもお似合いのふたりだと思ったのに」
「……えっ?」
マリアン王女がなにを言いたいのかよくわからない。わたしとライオネル様がお似合いだと、確かに言ったけど本当に認めてくれたのか?
「だって、黒板の落書きや、お水を校舎の中で運ぶのは大変だったでしょう? そんな頑張り屋さんですもの、ライオネル様にピッタリのご令嬢だわ」
確かにライオネル様への想いは隠していたなかったけど、ハーミリアへの嫌がらせは誰にも見られていないはずだった。もしかしたら、王族だからなにか伝でも使って調べたのだろうか。これは、答えを間違えたら処罰を受けてしまうかもしれない。
目の前のマリアン様は優雅に微笑んでいるけれど、背中を冷たい汗がつたっていく。
「貴女、ライオネル様を自分のものにしたくないの?」
「それは……」
そんなの、当然自分の婚約者になってほしいに決まってる。でも男爵令嬢のわたしでは侯爵令息のライオネル様とは身分が違いすぎる。そんな簡単に頷けるものでもない。
「貴女が本気でライオネル様を自分のものにしたいなら、私が協力してあげるわ」
「ほ……本当ですか?」
「もちろんよ。でも、失敗する可能性もあるから、無理強いできないの」
「や、やります! ライオネル様の婚約者になれるなら、わたしなんでもします!」
21
お気に入りに追加
2,750
あなたにおすすめの小説
私、女王にならなくてもいいの?
gacchi
恋愛
他国との戦争が続く中、女王になるために頑張っていたシルヴィア。16歳になる直前に父親である国王に告げられます。「お前の結婚相手が決まったよ。」「王配を決めたのですか?」「お前は女王にならないよ。」え?じゃあ、停戦のための政略結婚?え?どうしてあなたが結婚相手なの?5/9完結しました。ありがとうございました。
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
【完】ええ!?わたし当て馬じゃ無いんですか!?
112
恋愛
ショーデ侯爵家の令嬢ルイーズは、王太子殿下の婚約者候補として、王宮に上がった。
目的は王太子の婚約者となること──でなく、父からの命で、リンドゲール侯爵家のシャルロット嬢を婚約者となるように手助けする。
助けが功を奏してか、最終候補にシャルロットが選ばれるが、特に何もしていないルイーズも何故か選ばれる。
あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
初恋の兄嫁を優先する私の旦那様へ。惨めな思いをあとどのくらい我慢したらいいですか。
梅雨の人
恋愛
ハーゲンシュタイン公爵の娘ローズは王命で第二王子サミュエルの婚約者となった。
王命でなければ誰もサミュエルの婚約者になろうとする高位貴族の令嬢が現れなかったからだ。
第一王子ウィリアムの婚約者となったブリアナに一目ぼれしてしまったサミュエルは、駄目だと分かっていても次第に互いの距離を近くしていったためだった。
常識のある周囲の冷ややかな視線にも気が付かない愚鈍なサミュエルと義姉ブリアナ。
ローズへの必要最低限の役目はかろうじて行っていたサミュエルだったが、常にその視線の先にはブリアナがいた。
みじめな婚約者時代を経てサミュエルと結婚し、さらに思いがけず王妃になってしまったローズはただひたすらその不遇の境遇を耐えた。
そんな中でもサミュエルが時折見せる優しさに、ローズは胸を高鳴らせてしまうのだった。
しかし、サミュエルとブリアナの愚かな言動がローズを深く傷つけ続け、遂にサミュエルは己の行動を深く後悔することになる―――。
酒の席での戯言ですのよ。
ぽんぽこ狸
恋愛
成人前の令嬢であるリディアは、婚約者であるオーウェンの部屋から聞こえてくる自分の悪口にただ耳を澄ませていた。
何度もやめてほしいと言っていて、両親にも訴えているのに彼らは総じて酒の席での戯言だから流せばいいと口にする。
そんな彼らに、リディアは成人を迎えた日の晩餐会で、仕返しをするのだった。
性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~
黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※
すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる