【完結】呪いのせいで無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになりました。

里海慧

文字の大きさ
上 下
14 / 62

14話 まさかの相思相愛でしたわ!!!!②

しおりを挟む

 その翌朝、早速ライオネル様が手配した女性魔道士がやってきた。

 魔道士とは魔法を生業とする人たちで、魔法連盟が認定しているプロの魔法使いだ。身分は関係なく実力のみを問われるので、数は少ないが腕に間違いはない。その最高峰とも言われる『マジックエンペラー』の認定を受ければ、国王でも頭を下げるほどの存在になる。
 その代わり依頼するとなると高額な料金が発生するから、滅多なことでは頼まない。

 ああ、費用なんて気にせず、すぐに治せというのね。こんなところでもライオネル様の愛を感じますわっ!

 自分に都合よく捉えて魔道士に言われた通り、ソファーに腰かけてリラックスする。魔道士は簡単に挨拶だけ済ませると、すぐにわたくしの痛みの原因を探った。

「うわっ、よくこんな呪いをかけられて無事でしたね!? どんな恨みを買ったんですか?」

 呪い? わたくしのこの症状は呪いでしたの!?

 わたくしが驚いていると、呪いを解きながら魔道士が説明してくれる。

「呪いには治癒魔法が効かないから、今までつらかったでしょう。幸い守護の魔法が働いてるからすぐに解呪できますよ」

 そう言って、わたくしに手をかざしてたったひと言呪文を唱える。

解呪ディスペル

 それだけで、わたくしの歯の痛みは綺麗さっぱりなくなった。

「えっ! もう痛くないですわ!」
「うん、よかった。もう大丈夫ですよ。ああ、呪いについては本人にちゃんと返しておいたので心配いりません」
「まあ、本当にありがとうございます! あの、よかったらお茶に付き合っていただけませんか? 少し聞きたいこともございますの」

 女性魔道士はひと仕事終えて、反対側のソファーに腰を下ろした。メイドが用意したお茶に口をつけて微笑む。

「あの、呪いですとか守護の魔法ですとか……どういうことですの?」
「そうですね。私がわかるのは強烈な恨みをもとに、放置すれば死に至る呪いがかけられていました。やり方が古臭かったので、おそらく古代魔道具を使ったものでしょう」
「そうでしたの……恨みというか、嫉妬や妬みなら心当たりがありますわ」

 わたくしがライオネル様の婚約者だと気に入らない人たちならたくさんいるのだ。お陰でライオネル様本心が聞けてラッキーでしたけれど。

「では、守護の魔法というのはどういうことですの?」
「そのブレスレットについているのは魔石です。緊急時に何者からも守る守護の魔法……マジックバリアみたいなものが発動する仕組みになっています。少なくとも二度は呪いをかけられていますね」
「そういうことでしたの」

 ライオネル様の慧眼と優しさに、心がぽかぽかと温かくなる。どうしましょう、わたくしはこんなに幸せでいいのかしら?

「ふふっ、婚約者様に深く愛されてるのですね。羨ましいです」
「い、いえ、そんな愛されてるだなんて……」

 そんな風に言葉にされると、急に恥ずかしくなってしまう。なにせ自覚したのは昨日のことだ。

「今回の依頼も女性の魔道士でご指定されてたし、なによりそのブレスレット守護の魔法はハンパなく強力ですよ」
「え? ライオネル様は女性で指定されたのですか? それにそんなに強い魔法が込められてますの?」
「ええ、なんでも愛しの婚約者様に他の男が触れるのは許せないって、倍額払うから女性にしろと言ってたんですよ。それにそのブレスレットに国宝レベルの守護の魔法が込められています」

 思ってもいない情報に頭がついていかない。
 そんな嫉妬をするくらいライオネル様は思ってくれていましたの!? しかもこのブレスレットの守護の魔法は国宝級でしたの!?

「よほど大切な方でなければ、ここまでできませんよ」
「そ、そうでしたの……」

 つまりだ。ライオネル様はこのプレゼントを用意してくれた時から、大切にしてくれていたのだ。
 このプレゼントは七歳の誕生日にもらったものだ。ということは、本当に昔からわたくしを想ってくれていた?

 わたくしの頭の中を、過去の記憶が走り抜けていく。
 確かに態度はそっけないけれど、その行動はまるでわたくしが宝物だと言わんばかりでしたわね?

 どんな遅くても馬車で送ってくれたし、茶会や夜会のために贈ってくれたドレスは必ずアクアマリン宝石が飾られていたり薄いブルーやシルバーのお色でしたわ。
 ほかの男子生徒と話していると、いつの間にか後ろにいていつもより機嫌が悪そうでしたわ。

 なんてことっ! なんてもったいない勘違いをしていたのかしら!!
 一生の不覚ですわ——!!!!

 その後もライオネル様の言動を思い返し、喜んでは後悔して全然眠れなかった。


しおりを挟む
感想 56

あなたにおすすめの小説

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた

菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…? ※他サイトでも掲載中しております。

妹の身代わり人生です。愛してくれた辺境伯の腕の中さえ妹のものになるようです。

桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。 ※※※※※※※※※※※※※ 双子として生まれたエレナとエレン。 かつては忌み子とされていた双子も何代か前の王によって、そういった扱いは禁止されたはずだった。 だけどいつの時代でも古い因習に囚われてしまう人達がいる。 エレナにとって不幸だったのはそれが実の両親だったということだった。 両親は妹のエレンだけを我が子(長女)として溺愛し、エレナは家族とさえ認められない日々を過ごしていた。 そんな中でエレンのミスによって辺境伯カナトス卿の令息リオネルがケガを負ってしまう。 療養期間の1年間、娘を差し出すよう求めてくるカナトス卿へ両親が差し出したのは、エレンではなくエレナだった。 エレンのフリをして初恋の相手のリオネルの元に向かうエレナは、そんな中でリオネルから優しさをむけてもらえる。 だが、その優しささえも本当はエレンへ向けられたものなのだ。 自分がニセモノだと知っている。 だから、この1年限りの恋をしよう。 そう心に決めてエレナは1年を過ごし始める。 ※※※※※※※※※※※※※ 異世界として、その世界特有の法や産物、鉱物、身分制度がある前提で書いています。 現実と違うな、という場面も多いと思います(すみません💦) ファンタジーという事でゆるくとらえて頂けると助かります💦

人の顔色ばかり気にしていた私はもういません

風見ゆうみ
恋愛
伯爵家の次女であるリネ・ティファスには眉目秀麗な婚約者がいる。 私の婚約者である侯爵令息のデイリ・シンス様は、未亡人になって実家に帰ってきた私の姉をいつだって優先する。 彼の姉でなく、私の姉なのにだ。 両親も姉を溺愛して、姉を優先させる。 そんなある日、デイリ様は彼の友人が主催する個人的なパーティーで私に婚約破棄を申し出てきた。 寄り添うデイリ様とお姉様。 幸せそうな二人を見た私は、涙をこらえて笑顔で婚約破棄を受け入れた。 その日から、学園では馬鹿にされ悪口を言われるようになる。 そんな私を助けてくれたのは、ティファス家やシンス家の商売上の得意先でもあるニーソン公爵家の嫡男、エディ様だった。 ※マイナス思考のヒロインが周りの優しさに触れて少しずつ強くなっていくお話です。 ※相変わらず設定ゆるゆるのご都合主義です。 ※誤字脱字、気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません!

「平民との恋愛を選んだ王子、後悔するが遅すぎる」

ゆる
恋愛
平民との恋愛を選んだ王子、後悔するが遅すぎる 婚約者を平民との恋のために捨てた王子が見た、輝く未来。 それは、自分を裏切ったはずの侯爵令嬢の背中だった――。 グランシェル侯爵令嬢マイラは、次期国王の弟であるラウル王子の婚約者。 将来を約束された華やかな日々が待っている――はずだった。 しかしある日、ラウルは「愛する平民の女性」と結婚するため、婚約破棄を一方的に宣言する。 婚約破棄の衝撃、社交界での嘲笑、周囲からの冷たい視線……。 一時は心が折れそうになったマイラだが、父である侯爵や信頼できる仲間たちとともに、自らの人生を切り拓いていく決意をする。 一方、ラウルは平民女性リリアとの恋を選ぶものの、周囲からの反発や王家からの追放に直面。 「息苦しい」と捨てた婚約者が、王都で輝かしい成功を収めていく様子を知り、彼が抱えるのは後悔と挫折だった。

逆行令嬢の反撃~これから妹達に陥れられると知っているので、安全な自分の部屋に籠りつつ逆行前のお返しを行います~

柚木ゆず
恋愛
 妹ソフィ―、継母アンナ、婚約者シリルの3人に陥れられ、極刑を宣告されてしまった子爵家令嬢・セリア。  そんな彼女は執行前夜泣き疲れて眠り、次の日起きると――そこは、牢屋ではなく自分の部屋。セリアは3人の罠にはまってしまうその日に、戻っていたのでした。  こんな人達の思い通りにはさせないし、許せない。  逆行して3人の本心と企みを知っているセリアは、反撃を決意。そうとは知らない妹たち3人は、セリアに翻弄されてゆくことになるのでした――。 ※体調不良の影響で現在感想欄は閉じさせていただいております。 ※こちらは3年前に投稿させていただいたお話の改稿版(文章をすべて書き直し、ストーリーの一部を変更したもの)となっております。  1月29日追加。後日ざまぁの部分にストーリーを追加させていただきます。

双子の妹を選んだ婚約者様、貴方に選ばれなかった事に感謝の言葉を送ります

すもも
恋愛
学園の卒業パーティ 人々の中心にいる婚約者ユーリは私を見つけて微笑んだ。 傍らに、私とよく似た顔、背丈、スタイルをした双子の妹エリスを抱き寄せながら。 「セレナ、お前の婚約者と言う立場は今、この瞬間、終わりを迎える」 私セレナが、ユーリの婚約者として過ごした7年間が否定された瞬間だった。

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。

やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。 落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。 毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。 様子がおかしい青年に気づく。 ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。 ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ 最終話まで予約投稿済です。 次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。 ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。 楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。

処理中です...