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29話 ミリオンパーティーの行く末は 7
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ミリオンたちは新しく受けた魔獣討伐のために、プロキオンの街よりほど近い、カラカンの森まで来ていた。
「っはぁ! はぁ、はぁ、もう……追ってきてないな?」
「はぁ、はぁ、もう大丈夫みたいよ……はぁ」
ミリオンとティーンは後ろを振り返り、なんの気配もないことを確認した。
今回は、無駄な体力を使わないように、逃げられる魔獣は戦わないようにして進んできたのだ。
そろそろ討伐対象の、Aランクでも弱めの魔獣グレートホーンがいるはずだ。
「チッ……体力が……おい、誰か回復薬くれよ」
「はぁー、ほら、これでも飲んどけ」
一番体の大きいサウザンが、体力の消耗がはげしい。トレットが出発前に買った回復薬をわたした。
サウザンはいきおいよく飲み干してゆく。空き瓶をポイっと投げ捨て、長いため息を吐いた。
「チッ、この前から思ってたけど、最近の回復薬は効き目が悪くないか?」
「サウザンもそう思ってたか? 実は俺もなんだ。前のヤツは、半日くらい回復効果があったのになぁ……」
ミリオンも不思議に思っていた。最近は一度飲んで、すぐにまた飲まないと、体力が回復しないのだ。
「おかしいわね。いつも通り道具屋で買ってるのにね」
「まぁ、多めに持って来るしかないだろ。これしか売ってないんだから」
トレットがどうでもよさそうに答える。無い物ねだりしても仕方ない。
カイトが用意していた、リジェネ効果のある回復薬の存在に、ミリオンたちが気づくのは、もう少し先のことになる。
「おい、いたぞ! グレートホーンだ!」
ミリオンが討伐対象の魔獣に気がついた。グレートホーンは大きな渦巻き状の角をもつ鹿の魔獣だ。俊敏性がたかく、角による攻撃は一撃でハンターを葬る。
「いつもの連携で行くぞ。ティーン!」
「ファイアストーム!!」
前回は威力が弱かったかもしれないと、ティーンは自身が使える最大魔法を放つ。
続いてトレットが魔力を込めて両手剣を振り下ろす。
「おらぁ!!」
「チッ! くたばれ!!」
間髪入れずにサウザンも槍に魔力をまとわせて、攻撃を叩き込んだ。最後にミリオンが魔法剣でとどめを刺す。
「これでとどめだ!!」
だが、グレートホーンは倒れなかった。
攻撃は効いているが、決定打には欠けるようだった。フラついているグレートホーンが、体勢をたてなおす。
目の前のミリオンに狙いを定めたグレートホーンは、頭から突っ込んできた。
「クソッ! まただ! なぜこれで倒れないんだ!?」
ギリギリで攻撃を避けたミリオンは、魔法剣で応戦する。
ジリジリとグレートホーンの体力を削っているが、倒すまでは至らない。
当然、ミリオンたちの体力も限界を迎える。
「トレット! 回復薬は!?」
「さっきミリオンに渡したので最後だよ! お前らは持ってねぇのか!?」
「チッ! もう、体力が……はぁ、はぁ、持たない」
「ウソ!? これじゃぁ、下手したら全滅しちゃうわ!」
2時間に及ぶ戦いで、回復薬が切れた。メンバーを見れば、みんな満身創痍だ。
ミリオンはギリギリと奥歯を食いしばる。
「クソッ!! 撤退だ!!!!」
またしても、ミリオンパーティーの討伐は失敗に終わった。
「っはぁ! はぁ、はぁ、もう……追ってきてないな?」
「はぁ、はぁ、もう大丈夫みたいよ……はぁ」
ミリオンとティーンは後ろを振り返り、なんの気配もないことを確認した。
今回は、無駄な体力を使わないように、逃げられる魔獣は戦わないようにして進んできたのだ。
そろそろ討伐対象の、Aランクでも弱めの魔獣グレートホーンがいるはずだ。
「チッ……体力が……おい、誰か回復薬くれよ」
「はぁー、ほら、これでも飲んどけ」
一番体の大きいサウザンが、体力の消耗がはげしい。トレットが出発前に買った回復薬をわたした。
サウザンはいきおいよく飲み干してゆく。空き瓶をポイっと投げ捨て、長いため息を吐いた。
「チッ、この前から思ってたけど、最近の回復薬は効き目が悪くないか?」
「サウザンもそう思ってたか? 実は俺もなんだ。前のヤツは、半日くらい回復効果があったのになぁ……」
ミリオンも不思議に思っていた。最近は一度飲んで、すぐにまた飲まないと、体力が回復しないのだ。
「おかしいわね。いつも通り道具屋で買ってるのにね」
「まぁ、多めに持って来るしかないだろ。これしか売ってないんだから」
トレットがどうでもよさそうに答える。無い物ねだりしても仕方ない。
カイトが用意していた、リジェネ効果のある回復薬の存在に、ミリオンたちが気づくのは、もう少し先のことになる。
「おい、いたぞ! グレートホーンだ!」
ミリオンが討伐対象の魔獣に気がついた。グレートホーンは大きな渦巻き状の角をもつ鹿の魔獣だ。俊敏性がたかく、角による攻撃は一撃でハンターを葬る。
「いつもの連携で行くぞ。ティーン!」
「ファイアストーム!!」
前回は威力が弱かったかもしれないと、ティーンは自身が使える最大魔法を放つ。
続いてトレットが魔力を込めて両手剣を振り下ろす。
「おらぁ!!」
「チッ! くたばれ!!」
間髪入れずにサウザンも槍に魔力をまとわせて、攻撃を叩き込んだ。最後にミリオンが魔法剣でとどめを刺す。
「これでとどめだ!!」
だが、グレートホーンは倒れなかった。
攻撃は効いているが、決定打には欠けるようだった。フラついているグレートホーンが、体勢をたてなおす。
目の前のミリオンに狙いを定めたグレートホーンは、頭から突っ込んできた。
「クソッ! まただ! なぜこれで倒れないんだ!?」
ギリギリで攻撃を避けたミリオンは、魔法剣で応戦する。
ジリジリとグレートホーンの体力を削っているが、倒すまでは至らない。
当然、ミリオンたちの体力も限界を迎える。
「トレット! 回復薬は!?」
「さっきミリオンに渡したので最後だよ! お前らは持ってねぇのか!?」
「チッ! もう、体力が……はぁ、はぁ、持たない」
「ウソ!? これじゃぁ、下手したら全滅しちゃうわ!」
2時間に及ぶ戦いで、回復薬が切れた。メンバーを見れば、みんな満身創痍だ。
ミリオンはギリギリと奥歯を食いしばる。
「クソッ!! 撤退だ!!!!」
またしても、ミリオンパーティーの討伐は失敗に終わった。
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