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23話 追放現場に遭遇しました

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「リュカオン、ベヒーモスって知ってるか?」

『あぁ、脳ミソの小さい筋肉バカだ。だが、炎の息吹がウザいな』

 要するに、知力はないから魔法攻撃はしてこない。力はあるから、素早い動きや一撃のダメージが大きいのか。あとは火を吐くから、火傷に注意だな。

 リュカオンの魔獣に関する情報は、いつもこんな感じだ。他のことは割と丁寧なんだけど、魔獣に関しては雑すぎる。それでも、すごく助かってるので文句はないけど。

 オレが受けた依頼は、ベヒーモスの討伐だった。
 プロキオンの南西の森にある、アリエス遺跡で確認されている。近隣の魔獣のランクは高くてBランクだから、明らかに突然変異かどこかから迷い込んだみたいだ。


 その時、2キロ先から男の怒鳴り声が聞こえてきた。

「いい加減にしてくれよ!!」
「ご、ごめんなさい……ハンセンさん、あの、本当にごめんなさい」

 続いて聞こえてくる声は、怯えて震えている。若い女の子の声だ。

「あんたの特殊能力のせいで、私たちも魔法使えないじゃない!」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
「しかも吸い取った魔力を、なんでいつも暴発させるんだよ! 危うく死にかけただろ!」
「ごめ……んなさい。本当に……ごめん、なさい」

「もうお前なんていらねぇ!! このパーティーから出て行け!!」
「っ!! そんな…………ま、待って……」

 数人の足音が、遠ざかっていった。

 ……イヤなものを聞いてしまった。女の子は……シクシク泣いているみたいだな。うわぁ、これ、どうすりゃいい!?
 追放された女の子は放っておけないけど、泣いてるのはどうしていいか、さっぱりわからん。

「リュカオン……どうしよう」

『我に聞くな。我には、人間の気持ちなどわからん』

 そりゃ、そうだよな! はぁ、魔獣王に聞いたオレがバカだった。
 どっちにしても、ここからひとりで外に出るのは難しいだろうな。魔獣がウヨウヨいるしなぁ。仕方ない、出口までは連れていってやるか。



     ***



(また……追放されちゃった……)

 こぼれる涙を拭いながら、私は絶望感に包まれていた。

 もう、これで何十回目だろう? このマジックイーターという特殊能力のせいで、ハンターランクはAなのに役立たずと言われてばかりだ。

 今まではAランクハンターだからと、パーティーに入れてもらえてたけど、この街でも次々と追放されまくった。多分、もうどこにも入れてもらえない。

 もういっそ、ひとりで戦おう。もう嫌われたくない。本当にこんな特殊体質いらない————



「あの……君、出口はわかる?」

 突然かけられた声に驚いて振り返る。そこには、ひとりの青年がいた。艶のある黒髪に黒目のごく普通の見た目なのに、なぜか目を奪われる。



 この瞬間、私は運命の人に出会えたことにまだ気づいていなかった。


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