GENERATION☆DESTRUCTION!!

Yuki乃

文字の大きさ
上 下
3 / 8
EP01 Remember

Remember(2)

しおりを挟む
 今俺たちが目指している場所は、駅から数分歩いた距離にある三階建てくらいのショッピングモールである。ここは、映画館、飲食店、雑貨店、専門店等様々な店舗が集まっているため、時間を潰すのにはもってこいの場所だ。
 アイリスとそのショッピングモールに入ってすぐに、彼女が雑貨店らしき店を見つけた。
「宗助、あのお店に入ってみない?」
「雑貨店か? まあ良いけど、何か買うものがあるのか?」
「最近、日用雑貨にハマっててね」
「だったら入ってみるか」
「うん!!」
 その雑貨店に入ってみると、日用雑貨が多く並んでいたがそれ以外にもちょっとしたアクセサリーも商品として並んでいた。
「ネックレスとかブレスレットみたいなものも置いてあるんだな」
「雑貨店としてはそんなに珍しくないと思うよ」
「あっ、これ!! この腕輪とかどうかな?」
 アイリスがシルバーの腕輪を取り、目を輝かせながらそう言った。
その腕輪は、シルバーを基調としたデザインであり、高級感が漂わせている。
特に模様などはなく、シンプルで落ち着きのある品物となっている。
「そうだな、似合うと思うよ」
 俺がそう言うと、アイリスは恥ずかしそうに下を向いた。
「えへへ、ありがとう。でも、どうせならペアで買わない?」
「何か共通のものがあるとより仲が良くなると思うし……なんてね」
「そうだな、今日の記念にもなるしな」
「そうだね。じゃあ、私これ買ってくるね!!」
 少ししてレジから戻ってきたアイリスは、俺にシルバーの腕輪を渡してくれた。
「いくらだった?」
「宗助は気にしなくていいよ」
「いや、そういわれても困る」
 いや、俺は気にする。さすがに買ってもらうのは申し訳ない。
「今回は私から誘ったことだし、これはそのお礼ということで」
 確かにそれはそうだが、お礼を受けるものではない。それを言うなら俺からも、誘ってくれたアイリスにお礼をしたいくらいだ。
「それなら、俺がアイリスの腕輪を買う。俺の腕輪はアイリスが買う。そういうことにしないか?」
 これなら、お互い気にせず買うことができるだろう。
「そういうことなら……宗助考えたね」
 そう答えたアイリスは、一瞬何か考えるような仕草をしていた。
「せっかくだし、今腕輪はめない?」
 少し恥ずかしそうなその言葉に俺も少し恥ずかしくなった。
 一瞬悩んだが、アイリスも勇気を出して言ってくれたその言葉に俺は肯定することにした。
 お互いペアの腕輪をはめた後もアイリスの買い物に付き合っていると「もうそろそろだね」と彼女が言ったので腕時計を見ると映画上映時間の三十分前だった。
「映画館ってどこだっけ?」
「ああ、確か三階だったはずだな」
「よし、それじゃ行こうか」
 映画館に入ると、横にいたアイリスは俺の前に出た。
「今から映画のチケット買ってくるから待ってて」
「いや、俺が買ってくるぞ。何の映画見るんだ?」
「宗助は待ってていいよ。それじゃあサプライズにならないから」
「まあ、そういうならいいが」
「じゃあ、宗助はポップコーンと飲み物買ってきて!!」
「わかった」
 そう言うと、アイリスは小走りで受付へと向かった。
 いったいどんな映画を見せるのか。アイリスのことだからラブストーリーか。
 いや、それともこのかわ良いアニメ系か。ホラーは苦手そうだから、これは違うよな。
 今はいろんな映画が放映しているから、なかなか絞り込めないな。
 そうこうしているうちに、アイリスがチケットを持ってきた。俺も買うものは買った。
「で、どこに入ればいい?」
「私が案内するから、目を瞑ってて」
「ああ」
 アイリスは俺の手を握り、引っ張って誘導する。
 俺はこういう形だが、手をつないだことにばかり意識がいってしまっていた。
 アイリスには目を開けるなと言われていたが、俺は少しだけ目を開けてしまった。
 しかし何の映画かは特に気にならなかった。それよりもアイリスの顔が少し赤くなっていたことが気になって仕方なかった。
 アイリスに連れられて、席に座る。
「……」
「……」
 お互い手をつないでいたことが、何か気まずくて、何を話せば良いかわからなかった。
 お互い、沈黙していると、映画の予告が始まった。
 この映画はまさか……。
「アイリス」
「――――はい!!」
 俺が急に話しかけたので、アイリスは少しびっくりしたのか、声は少し裏返っていた。
「この映画、ホラーだぞ」
「えっ?」
 アイリスは一瞬何を言われたかわからない顔をしていた。
「映画?ホラー?」
 そう言い、はっと我に返ったアイリスは俺に質問する。
「何言ってるの宗助。こんな可愛いのに、ホラーだなんて」
「いや、これは可愛い映画だと思わせて、ホラーだって話題になってたぞ」
「うそ……冗談だよね?」
「……」
「なんで何も言わないの?」
「……」
「そう…すけ?」
「……」
「……私帰ろうかな」
「諦めろ。案外平気かも知れないぞ」
「……そうだよね。せっかく来たんだし」
 アイリスはそう言ってはいるが、顔は全然そんなこと思っていないことは明確だった。
 映画の後のアイリスは言うまでもなかった。
「アイリス、何か買ってくるか?」
「うん」
 アイリスのことが少し不安だったが、すぐ戻ることを伝え、俺は飲み物を買いに行った。
 その間アイリスは椅子に腰かけた。
 売店で飲み物を買った後、アイリスの元に戻った。
「調子はどうだ?」
「うん、少しは良くなったかな」
 しばらくした後、俺とアイリスはフードコートに向かうことにした。
 フードコートはちょうどこの階にあるため、そのまま歩いて向かうことにした。
 歩いていると、何か違和感があった。
 それは、人の気配のなさだ。
 アイリスとの会話やしぐさに気を取られ、気付くまでに時間がかかってしまった。
「アイリス、なんか様子がおかしくないか?」
「そうだね。静かだね」
「戻るか……」
「うん……」
 その時だった。
「あの~すみません。あなたはアンジェ・アトランティカさんですかね?」
 後ろを振り向くと、金髪のセミロングがきっちり整えられており、スーツを全身にまとい、いかにも落ち着いた印象の女性がそこにいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

「婚約を破棄したい」と私に何度も言うのなら、皆にも知ってもらいましょう

天宮有
恋愛
「お前との婚約を破棄したい」それが伯爵令嬢ルナの婚約者モグルド王子の口癖だ。 侯爵令嬢ヒリスが好きなモグルドは、ルナを蔑み暴言を吐いていた。 その暴言によって、モグルドはルナとの婚約を破棄することとなる。 ヒリスを新しい婚約者にした後にモグルドはルナの力を知るも、全てが遅かった。

私のことを愛していなかった貴方へ

矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。 でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。 でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。 だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。 夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。 *設定はゆるいです。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

【1/23取り下げ予定】あなたたちに捨てられた私はようやく幸せになれそうです

gacchi
恋愛
伯爵家の長女として生まれたアリアンヌは妹マーガレットが生まれたことで育児放棄され、伯父の公爵家の屋敷で暮らしていた。一緒に育った公爵令息リオネルと婚約の約束をしたが、父親にむりやり伯爵家に連れて帰られてしまう。しかも第二王子との婚約が決まったという。貴族令嬢として政略結婚を受け入れようと覚悟を決めるが、伯爵家にはアリアンヌの居場所はなく、婚約者の第二王子にもなぜか嫌われている。学園の二年目、婚約者や妹に虐げられながらも耐えていたが、ある日呼び出されて婚約破棄と伯爵家の籍から外されたことが告げられる。修道院に向かう前にリオ兄様にお別れするために公爵家を訪ねると…… 書籍化のため1/23に取り下げ予定です。

「あなたの好きなひとを盗るつもりなんてなかった。どうか許して」と親友に謝られたけど、その男性は私の好きなひとではありません。まあいっか。

石河 翠
恋愛
真面目が取り柄のハリエットには、同い年の従姉妹エミリーがいる。母親同士の仲が悪く、二人は何かにつけ比較されてきた。 ある日招待されたお茶会にて、ハリエットは突然エミリーから謝られる。なんとエミリーは、ハリエットの好きなひとを盗ってしまったのだという。エミリーの母親は、ハリエットを出し抜けてご機嫌の様子。 ところが、紹介された男性はハリエットの好きなひととは全くの別人。しかもエミリーは勘違いしているわけではないらしい。そこでハリエットは伯母の誤解を解かないまま、エミリーの結婚式への出席を希望し……。 母親の束縛から逃れて初恋を叶えるしたたかなヒロインと恋人を溺愛する腹黒ヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:23852097)をお借りしております。

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

処理中です...