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「おい」
サンドラの父親が話しかける

びく!
「な……なに?」

「お前 何が出来るんだ」

「え?」

「字とか 読めんのか」

「読めない……」

「使えねぇ やっぱ体売るしかねぇな」

「い!いやよ!」

「頭悪いんだから仕方ねえだろ
それに体売らなきゃ おまんま食えねぇし 娼館と体売るのとどっちがいいんだ」

なんで シャルは貴族に呼ばれて
アタシは娼婦なの?

「自分で稼ぐ……わ……」

「それなら少しは服をどうにかしなきゃな
服屋にいくぞ」

「うん…」

なんで…なんで…なんで…なんで…なんで…
悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい


ザワ……
影が動いた様に見えたが
そんな訳ないから 直に忘れた


父親に連れられて 薄汚い建物
小屋に近い状態の所に入った

「おい!いねぇのか!」
父親は 入口に入るなり 叫んだ

「あいよ~ おや あんたか」
店の持ち主だろう 卑屈な面相の
薄ぎたない年寄の男が奥から出てきた

「適当に2枚見繕ってくれ 安くな」
父親がお金を投げる

「へへへ 毎度
そこの子は 拾ってきたのかい?」

気持ち悪い視線が 体を舐め回してくる

「あぁ 孤児院に投げといたんだ
さっき 引き取ってきたんだ
16になるからな 働いてもらわねぇとな」

「ひっひっひっ あんたも親だろうに
可哀想に うちに来るかい 可愛がってやるけどな ひっひっひっ」

気味が悪い………
なんであたしが こんなやつの相手してやらなきゃいけないの!
シャルは…シャルは…シャルは!
こんな親父も要らない
こんなクソジジイもイラナイ
コンナヤツライナクナッテシマエバイイ
コンナヤツライナクナッテシマエバイイ!

その時 黒い影が間違いなく動き
『ソノネガイキキトゲタ!』
何処からか声が聞こえた
聞こえたのか 頭に響いてきたのかは
分からない
「ヒィ!」
怖くなって思わず目を瞑ってしゃがみ込んだサンドラ


二人の男を影が飲み込む

「ヒィィィ……」
「誰か……たす…け……」

ガタガタ震えて目を開けることが
出来なかった
耳も塞いだ強く 何もきこえないように
断末魔の叫びが聞こえないように

暫くして 何も聞こえなくなり
震えながら目を開けて 周りを見回した

そこには 骨格が分かる皮だけの死体が
二つ

「こ…これ……な……に…」
しゃがんだ格好からぺたりと尻を床につけて 足で後ろに下がって 死体からズリズリと離れていく
目は離したいのに 離れない………

『オマエガ ノゾンダ カナエテヤッタ
デモ マダタリナイ ホシイホシイ』

「キャー!」

何処からか聞こえた声が 恐ろしくて
思わず 日の下に飛び出した


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